遺品整理で出てきた箱の中身がおかしい件
ナトリウム
先祖代々伝わる箱の中身は何だろな
俺の祖父母の家には、奇妙な箱がある。ずっと昔から代々受け継がれているようで、少なくとも祖父が生まれた頃には既にあったそうだ。当時のことは覚えていないが、物心がつく前に俺がこの箱を見た時、尋常じゃない泣き方をしたらしい。
俺の大学が祖父母の家に近かったため在学中は居候をさせてもらっているが、その箱は普段は物置にしまい込まれているので、久しくその箱を見ていない。見た目はかなりうろ覚えで、実物を見てもそれだと気づけないかもしれない。
先日祖父が亡くなり、遺品の片付けを手伝うことになった。
祖父は蒐集癖があり、祖母だけで片付けるには物が多すぎたからだ。
手始めに祖父の部屋にあるものを、取っておくものと捨てるものとリサイクルショップに売るものに仕分けていく。
そうして祖父の部屋の片付けが一段落付き、次は物置の片づけに取り掛かる。
物置にあるものは嵩張るものが多いが、物の数は部屋に比べると随分少なかった。手前の方から順に粛々と物を片付けていった。
作業の終わりが見えてきた頃、物置の奥にで明らかに異質な雰囲気を放つ箱を見つけた。最初は何なのか分からなかったが、もしかしたら「あの箱」かもしれないと思い至った。
箱には厳重に封がされていた形跡があるが、今はその封が破られている。祖父か祖母が開けたのだろうか?「開けるな」と言わんばかりの見た目をしているが、既に開封済みだし大丈夫だろう。早く片付けを終わらせてしまいたいという一心で、中身を見てみることにした。
箱の中には「デスすごろく」なるものが入っていた。
いや、おかしいだろう。何とも頭の悪そうなネーミングである。この箱は祖父が生まれるより前からあるんじゃなかったか?もしかしてこれは人違いならぬ箱違いか?
色々ツッコミどころはあったが、とりあえず「デスすごろく」の内容を見てみる。
見たところ普通のすごろくのようだ。コマとして使う人形とサイコロ、すごろくのマップが入っている。
ちょっとした怖いもの見たさで、そのすごろくで遊んでみることにした。
俺一人なので順番決めは省略。早速サイコロを振ると、四が出た。止まったマスの内容は「アクセルとブレーキを踏み間違えた車が突っ込んできたがギリギリ避けた。事情聴取のため一回休み」。初手からハードすぎるだろ。
二回目の出目は六。マスには「山奥で祠を壊して呪われる。遭難したため一回休み」と書かれていた。一回休みが多すぎるんじゃないか?
三回目は四マス進み、止まったマスは「第一志望の大学に合格する。三マス進む」だった。なんだ、普通の内容のマスもあるのか。
そして指示通り三マス進むと、「全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れに遭遇。重傷を負い一回休み」。このすごろくの制作者は何を考えているんだ。
——その後ダイスロールを繰り返すこと数回。どのマスもツッコミどころが多すぎるが、残り四分の一ぐらいのところまで来た。こんなに変なゲームなのに結局完走してしまいそうだ。
次に止まったマスは「背後から刃物を持った男に刺される。ゲームオーバー」。
は?一回休みではなくゲームオーバー?
…いや、途中でゲームオーバーになるすごろくって何だよ。
あまりにも理不尽な終わり方をして急に冷めてしまったので、さっさとこれを片付けることにした。なんて無駄な時間の使い方をしてしまったんだろう。早く片付けを終わらせないと。
デスすごろくを片付ける時、コマの底面に見覚えのある名前が書かれている事に気づいた。これは中学時代に同じクラスになったことがある女子の名前だ。中学時代のクラスメイトの名前なんてほとんど忘れてしまったが、俺は少しだけこの女子に好意を抱いていたのですぐに思い出せた。まぁ、告白とかそういう甘酸っぱい青春イベントは何もなかったのだが。
どうしてこんなところに彼女の名前が?訳が分からなかった。
唐突に知っている人の名前が出てきたことに底知れない怖さを感じたが、分からないことを考えても仕方ないと半ば現実逃避をするようにデスすごろくを箱に押し込み、捨てるものの山に加えた。
「XX日未明、〇〇市の路上で背中に刃物が刺さった女性が倒れているのが見つかり、搬送先の病院で死亡しました。警察は女性の身元の確認を急ぐとともに捜査を進めています。」
遺品整理で出てきた箱の中身がおかしい件 ナトリウム @oganesson0409
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