第25話 成功か? 失敗か? どっちでチュウ?
こうした無愛想な素振りに対して、
「じゃあ聞くけどな、小動物の脳を人間に近づける話。結局のところ、ネズミは人の言葉を理解出来ているのか?」
「ちゅぅ……研究結果の結論を申せば、感受性が高まることだけは分かっています。けれど、未来の技術を持ってしても、実現には至っていません」
「実現していない?」
「ちゅぅ、そうです。なぜなら、人間の精神を転送でもしない限り、ネズミが何を考えているのか検証出来ないからです」
「つまり最終的な判断は、ネズミの体に意識を移さなければ確証は得られない。だが実験を行うには、データーや技術不足。また、少なからず危険も伴うゆえの断念。要は、こういうことだろ」
「ちゅぅ、おっしゃる通りです。だから、研究の結果が成功なのか失敗なのかは、分から…………いや、待てよ。今まで気付かなかったけど、これって……成功してるんじゃないのか?」
「んっ?」
(だとしたら……誰が遺伝子操作を行ったというんだ? この世界に、高度なゲノム編集ができる研究者はいないはず。唯一考えられる人物といえば、
ふと何かを思い出した
こうした疑問に苛まれている中――、
「おい、何をごちゃごちゃ言ってんだ!」
「ちゅぅ、何でもありません。僕のひとり言なので気にしないでください」
「ってことは、これから研究が進んだとしても、未来の状況は何一つ変わっていないってことだよな?」
「ちゅぅ、結論を述べればそうですね」
「ほらみろ、だから俺が言ったじゃねーか。どんな風に未来が見えているか知らねえけど、そんな馬鹿馬鹿しい話は夢物語。確証でもなけりゃ、信じるなんて出来やしないだろ」
(ちゅぅ、確かに父さんの言う通り……でも実際のところ、実験は成功してるというのになぁ……。まあ、まともに話をしても理解してくれそうにないだろうけどね。……ということは、やっぱりキューピッドとして説明した方が正解だったってことだよな)
返された言葉に対して、自信満々な面持ちで勝ち誇る
「どうした、さっきから黙り込んで? 俺に論破でもされて、落ち込んでいるのか?」
「ちゅぅ、そうではありません。そのことについては、希望も見えましたし納得もしています。なので、僕の中では既に解決しました。ただ……どうしても1つだけ気になることがあるんです」
「気になること?」
「ちゅぅ、先ほど父さんは『一人に話すも二人に話すも結果は同じこと』こう言いましたよね」
「ああ。そう言ったが、なにか問題でも?」
「ちゅぅ、じつは……あの時に沈黙していたのは、迷っていたからなんです」
「迷っていた?」
「ちゅぅ、そうです。ある制約のことについて、話すべきか話さないべきか…………」
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