チャリパイEp9~時をかける森永探偵事務所~
夏目 漱一郎
第1話未来からのメール
「最近、変なメールがよく来るんだよな……」
困惑した表情で、シチローが呟いた。
ここはいつもの『森永探偵事務所』……そして、またいつものようにシチロー、てぃーだ、子豚、ひろきの4人で談笑をしている時の事だ。
「えっ? 変なメールって、例えば?」
「どれどれ……あたし達に見せてよ」
そんな話題にはたちまち興味を持つ子豚とひろきは、すぐさまシチローのスマートフォンめがけて近寄って来た。
シチローのスマートフォンを皆で覗いてみると。そこには大手の出会い系サイトの名前のスペルを1文字だけ変えてある、怪しげな出会い系サイトの宣伝広告……架空請求のお手本のような、電話番号付きの収納代行と称する会社からの請求メール……『高額アルバイト紹介します』といった胡散臭い案内等……様々な怪しいメールの着信履歴が並んでいた。
「まったく……昨日なんて、こんなのばっかり30通も来たよ!
……しかしなぁ~アドレス変えるのも面倒だし……」
そんな話題でシチローがうんざりした表情で溜め息をついている時、ちょうどタイミング良くシチローのスマートフォンからメールの着信音が森永探偵事務所に響き渡った。
♪ピロロロ~
「ほらっ、また来た! これも絶対迷惑メールだよっ!」
携帯を開き、今来たメールのタイトルだけを見たシチローは、ほら見てくれと言わんばかりに、その画面を他の3人に見せ付けた。
「これなんか見てよ! 日付が『2100年』になってやがる! 絶対怪しい!」
その画面上のメールの送信日付は、確かに2100年と表示されていた。
「いちいち削除するのが面倒なんだよな……」
昨日から度重なる迷惑メールでイラつくシチローがそのメールを削除しようとすると、てぃーだが思い出したようにそれを制止した。
「ちょっと待ってシチロー、2100年って……それ『凪』からじゃないの?」
「えっ、凪……?」
読者諸君は、この『凪』という名前を覚えているだろうか?
『チャリパイEp4~未来からの刺客~』https://kakuyomu.jp/works/16818023213488898385を読んだ事のある諸君は覚えているであろう。
意志を持つコンピューター『mother』が西暦2100年の未来から、シチロー達を抹殺する為に送り込んだアンドロイド『T8000』……
その『T8000』からシチロー達を護る為、時空を超えて現代にやって来た
『ネオ・チャーリーズエンゼルパイ』そのメンバーのひとりが凪であった!
えっ? ……そんなの読んで無いから知らない?
あの……面白いと思うんで、是非読んで下さいね……
「あれ、本当だ。凪からだったよ……」
危なく読まずに削除するところだったメールを開いて内容を読んでみると、そこには凪からのシチロー達に助けを求める文面が書かれていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
チャーリーズの皆さん、お久しぶりです。
突然こんなメールをお送りして、驚かれている事と思います。
あの時は、シチロー達が『T8000』を撃退してくれたおかげで、私達組織は消滅の危機から逃れる事が出来ました。
しかし今、motherは新たにあのT8000を改良した『T9000』を開発し、戦力を増強した『機械軍団』との戦いに再び私達人類は、かつて無い危機に瀕しています。
チャーリーズの皆さん! こんな危険な事をお願いするのは大変忍びないのですが、未来へ来て私達に力を貸して頂けないでしょうか!
ネオ・チャーリーズエンゼルパイ『凪』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「大変な事になってるみたいだな……未来は」
メールを読み終わって、一同は深い溜め息をついた。
一度は命懸けで共にアンドロイド相手に戦った凪が、こうして助けを求めているのである。しかも、未来の事とはいえ人類の危機となっては、黙って見過ごす訳にはいかない。
「どうする? シチロー……」
てぃーだが不安そうな表情で尋ねた。
時空を超えて未来へ来いというのだ。しかも、命の危険さえ伴う戦場に……皆が不安になるのも無理はない……てぃーだは、この決断をシチローに委ねた。
「…………」
シチローは判断に悩んだ。今度の地は戦場である。果たして大事な仲間達をこんな危険な任務に就かせる事が、許されるものなのだろうか?
シチローは、皆の顔を見渡す為に頭を上げた。
「あれ、コブちゃんとひろきは?」
さっきまで一緒にメールを覗いていた、子豚とひろきの姿が消えていた。
二人共、あまりの恐怖にこの場にとどまっている事が出来なかったのだろうか?
「そうか……やっぱり、今回ばかりはあの2人も冗談言える状況じゃあ無いか……」
だが……あの二人に限ってそんな心配は不要であった。
「シチロー~ビールどの位持って行けばいいかな~」
奥のキッチンからは、まるで慰安旅行にでも行くようなひろきの楽しそうな声が聞こえた。
そして、子豚は……
「ジャ~~ン『未来戦隊エンゼルス』!」
奥のキッチンから、体中にアルミホイルを巻き付けて登場する、子豚。
「何、その格好……?」
「や~ねぇ『未来コス』じゃないの。カッコイイでしょ~」
どうやら、調理用のアルミホイルは映画などに出てくる未来のメタリック調のボディスーツをイメージした物らしい。
シチローは、一瞬でもこの2人の心配をした事を深く後悔した。
「なるほどコブちゃん……それなら、まるごと火にくべられても大丈夫だな」
「『子豚の丸焼き』じゃね~よっ!」
さて……凪の依頼を受けて、西暦2100年へと向かう事を決断した森永探偵事務所だが、タイムマシンも存在しない現代でどうやって未来へ行くのだろう。
シチローは凪から来たメールに添付されていた、『未来へ行く方法』の説明を始めた。
「未来へ行く方法はひとつ。今夜の午前2時に、凪が未来から現在へと続く『タイムトンネル』をこの付近のある場所に30秒間だけ作ってくれる……
オイラ達は、その時間までにその場所へ到着し、タイムトンネルが現れるのを待って30秒以内にそこに飛び込めば良い訳だ!」
それを聞いたひろきが、感心したように呟いた。
「へえ~、意外と簡単なんだね。ドラえもんの『どこでもドア』みたい」
しかし、シチローはこうつけ加えた。
「それが……ひとつだけ、問題があるんだよね……」
少し困った様な顔でシチローが答えると、子豚がその理由を尋ねた。
「問題って何よ?シチロー……」
「その『ある場所』ってのが問題なんだ……2100年では、そこは何も無い広場らしいんだけど、現代のその場所は眠らない街、新宿歌舞伎町のど真ん中なんだよ……」
「それはまた、賑やかな所を選んだものね……」
てぃーだが苦笑いをして呟いた。
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