05-08 女神アルマリアがくれた力なんだ。

 アンブリーの突然の告白にぎょっと目をむいたのはオリーとバラハだけではない。言った張本人であるアンブリーと、それから――。


「お、おい! 何、言ってるんだよ、アンブリー!」


「その話は墓場まで持っていくって約そ……ふぐっ!」


「ゴードルフまで! 本当に村に火をつけたのは領主様だなんて言ったらダメ……だ……んんんーーー!!?」


 ゲイブリー、ゴードルフ、モーリップの三人もだ。四人全員が口を両手でふさいで青ざめる。


「こりゃあ、一体……」


「どういうことでしょうか」


 アンブリーとゲイブリー、ゴードルフとモーリップ――。

 十五年前に村を襲った魔族の姿を見たとされる四人を見つめるオリーとバラハの表情はみるみるうちに険しくなった。


 オリーとバラハよりも早くから眉間にしわを寄せていたラレンは険しい表情のまま、白い目を向けた。


「……勇者様」


 神剣の柄をなでなでなでなでしながら勇者スマイルを浮かべているリカに、だ。


「先ほど、小さな声で〝女神の懺悔〟とつぶやいてましたよね」


「つぶやいてたね」


「村人たちから話を聞いたときにも〝女神の懺悔〟とつぶやいてましたよね」


「つぶやいてたね」


「つぶやいたあと神剣が白い光を放ってましたよね」


「放ってたね」


「女神アルマリアから授けられた神剣の力の一つを使ったんですよね」


「使ったね」


 ラレンに尋ねられてことごとく肯定するリカにオリーとバラハ、ついでにジーもふむふむとうなずく。

 かと思うと――。


「どんな力だ、その〝女神の懺悔〟ってのは!」


「せめて力を使う前に私たちには説明しておいてもらえませんか!? 使ったあとじゃなく! アンブリーたち四人に使う前でもなく! 村で使う前に説明しておいてもらえませんか!?」


 オリーとバラハの二人はクワッ! と目を見開いて怒鳴った。

 ジーはといえば――。


「それで、リカ。〝女神の懺悔〟とはどんな力なんだ」


 あいかわらずの淡々とした表情で首をかしげた。ジーに尋ねられてリカは目をキラッキラさせながら答える。


「この力はつい昨日――なんなら昨夜、寝てるときに女神アルマリアがくれた力なんだ」


「与えられたの、ものすごい直近ちょっきんじゃないですか」


 ラレンのあきれ顔なんて物ともせず、リカはキラッキラの笑顔のままグイッ! とジーに顔を寄せた。


「人族と争っている魔族や町や村を襲った魔族について知りたい、話を聞きに行くってジー君が言うからスムーズに正しい情報が集められるようにアルマリアに頼んだんだ」


「わりと軽々しく女神様に頼み事しますよね、勇者様」


「過去に犯した罪悪を告白できずにいる人々を女神アルマリアの慈愛によって救い出す力……というのが建前で。本音はうそなんてついてジー君の時間を無駄に浪費させてなるものか的な力だよ!」


「ものっすごいイイ笑顔で建前とか本音とか言わないでください、勇者様! 魔王のために神剣の力を一つ、覚醒させたという事実も突き付けないでください、勇者様!」


 リカの力というか、女神アルマリアの力というか――によって明らかにされた十五年前の真実にオリーとバラハはポカンと口を開けてかたまっている。十五年前の真実を明らかにした相手が女神アルマリアに神剣を授けられた勇者だと気が付いたアンブリーたち四人は青ざめている。

 そんな面々を前にジーは淡々とした表情のまま、手を伸ばしたり、引っ込めたり、また伸ばしたりをくり返しておろおろしている。

 そして――。


「ジー君のために覚醒した力が一つだとは言ってないよ、ラレン!」


「一でも二でも十でも百でも突き付けないでください! 魔王のために勇者が神剣の力を覚醒させたという事実を突き付けないでください、勇者様ぁぁぁあああーーー!」


 にっこにこの勇者スマイルで胸を張るリカを前にラレンは木でできたテーブルをバシンバシンと叩いたのだった。

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