03-13 なぜ、滅ぼそうとしていると思っているんだ。
「ジーからもらったコイツのおかげでずいぶん楽になった!」
「……と言いながら早速、スクワットを始めるのもどうなんでしょう。あなたは筋肉バカなんですか、オリー。……あ、筋肉バカでしたね。
「ほら、ラレンも早く塗れ! 楽になるぞ! やりたくてもやれなかったスクワットがやりまくれるくらいに元気になるぞ!」
「僕がスクワットをやりたがってたみたいな言い方、やめてくれる? やりたくてやりたくて、でも、瘴気のせいでやれなくて涙をこらえてやるのを我慢していたみたいな言い方、やめてくれる……?」
フン! フン! と暑苦しい声をあげながらスクワットするオリーにバラハとラレンは冷ややかな目を向ける。
でも――。
「とは言え、本当に薬を塗った方がいいですよ、ラレン。ツッコミにいつもの元気がありません」
「元気のあるなしをツッコミの声で判断するのもやめてくれる?」
ラレンの青白い顔を見てバラハは心配そうに言った。
そして――。
「それと、オリー。スクワットをするよりも先に目的を果たしてください。私たちがこの魔王城にもう一度、来た目的を」
オリーに向き直ると真剣な表情で言った。バラハの目をオリーはじっと見つめ返す。
「……そうだな」
いつもの明るくて快活な笑顔を引っこめたオリーはジーに向き直った。
「バラハの言う通りだ。いいかげん本題に入らなくちゃな」
「と言いながらスクワットはやめないんですね」
「一つ目の目的はすでに達成されたと言っていい!」
「……やめないんですね」
フン! フン! と暑苦しい声をあげながらスクワットをしつつ本題に入るオリーをバラハはジトリと見つめる。しかし、スクワットをやりたくてやりたくて、でも、瘴気のせいでやれなくて涙をこらえてやるのを我慢していたオリーはバラハの白い目なんて気にもしないどころか気付きもしないでスクワットをしつつ、本題を進める。
「一つ目の目的はジーがいいやつか悪いやつかを見極めることだったんだが、文句なしにいいやつだ!」
「魔王相手に迷わずいいやつ認定するってバカでお人好しが過ぎない?」
「いいや、ジーは文句なしにいいやつだ! ジーキルさんも文句なしにいい人……いや、いい魔族だ!」
「ちゃんと見極めたの? ねえ、本当にちゃんと見極めたの!?」
「薬を塗ったらちょっと良くなりましたね、ラレン。顔色も、ツッコミの声も」
「だから、元気のあるなしをツッコミの声で判断するの、やめてくれる!? ていうか人の顔に勝手に薬を塗るのもやめてよ! 雑に薬を塗るのはもっとやめてよ!」
フン! フン! と暑苦しい声をあげながらスクワットするオリーと、話し中なことも拒否していることもお構いなしで薬を塗りたくるバラハにラレンは地団駄を踏んだ。
ただ、薬の効果はテキメン。
「元気になったようで何よりだね」
「元気になったようで何よりだな」
「勇者様はともかく魔王! お前はムカつく! あいかわらず表情には出ないけど心の中ではめっちゃ人の
元気いっぱいに地団駄を踏むラレンをリカとジーは温かな眼差しで見守る。
と――。
「ジーはいいやつだ。だからこそ、そんなジーに……魔族の長である魔王に聞きたいことがある」
オリーの表情が変わるのを見てジーは反射的に背筋を伸ばす。オリーの表情も声も怖いほどに真剣だった。
「お前たち魔族はどうして人族を襲うんだ。どうして人族を滅ぼそうとしているんだ」
「オリー、それにバラハも。実は私がキミたちに聞きたかったこともそれなんだ」
オリーの言葉と、自分の目を真っ直ぐに見据えるバラハの視線を真っ直ぐに受け止めてジーは尋ねた。
「なぜ、キミたちは魔族が人族を滅ぼそうとしていると思っているんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます