第6話 他の人にはしないでください


「今日もありがとうございました。お先に失礼します」


 ライブ後、メンバーと今日の反省をし解散となった。定期ライブなので打ち上げはない。反省会後は帰りの支度をして準備が整ったメンバーから退散していく。まだ知名度も低いため帰りにタクシーを用意されることはなく徒歩や電車での帰宅だ。

 スタッフさんに挨拶をしてライブハウスを退出した。


『予定なかったら、最寄り駅のコンビニ前で待っててくれない?』


 ライブが始まる前に白沢へメッセージを送った。スマホを確認するが、ライブが終わった今も返信はない。


「……忙しかったのかな」


 白沢はメッセージを無視するタイプではない。初めてメッセージを送ったときであっても返信してくれた。

 大学で遊んだ後も返信をくれたし、それ以降も無視されたことはない。

 何か返信できない状況なのだろうか。


「…………」


 外は寒い。なんだかあんまんが食べたくなってきた。


「別に白沢がいるか確認するわけではないし」


 そう、私はあんまんが食べたくてコンビニに行くんだ。駅までの通り道だし、ついでに寄るだけだ。

 決して白沢の在否を確認するわけではない。いつもより少し速足で、コンビニに向かった。


 10分ほど歩き指定したコンビニに到着した。自動ドアをくぐり入店する。店内は客も少なく、聞こえるのはレジで商品をスキャンする音と、有線から流れる今流行りの曲だけだ。

 とりあえず、端から探し……いやいや。私はコンビニに軽食を買いに来たのだ。……他に買うべきものがなかったか店内を見て確認しよう。そう考えて、入口右手に体を向ける。

 一番端の棚にはインスタント商品、そして窓側にはイートインスペースがありーー


「いたーー‼」


 見覚えのある後ろ姿を捉えて、つい大きなが出てしまった。

 店内にいた店員さんやお客さんから怪訝な顔を向けられ、慌ててぺこりと頭を下げた。


「叶野さん。ライブお疲れ様です」


 白沢は普段と変わらず、何もなかったかのように話しかけられた。


「何でいんの」

「叶野さんに言われたんで」

「でも、返事……」

「すみません、返信する前に充電切れてしまって」

「……なんだ」


 原因が分かり、胸をなでおろす。

 ペンライトの電池といい、いつも電源を切らしている気がする。


「どこかに行くんですか?」


 ライブ終わりの予定を聞いただけで、何をするかは伝えていない。

 白沢へはあるお願いがあり呼び出したのだが、躊躇しなかなか言い出せない。


「もしかして、ねむりちゃんに会わせてくれるんですか?」


 そういえばそんな約束をした。しかし、何と言ってねむりと引き合わせれば良いんだろう。ねむりは私が熱愛記事を取られるために動いていることを知らない。知り合いだからと言って急に会わせるのも不自然だろう。

 手段を考えているうち、約束を忘れてしまっていた。私であろうことかうっかりしていた。

 反応がないため、そうではないと察した白沢は


「特に行きたいところがないなら帰りますけど」


 と言い、躊躇なく背中を見せる。

 そのまま普通に歩き出しそうだったので、焦って白沢の上着の袖を掴んだ。


「待って」


 顔だけ振り返り、私に視線を送る。


「……家、来てほしい」

「…………」


 白沢が固まってしまった。


「まさか二度目がおうちデートになるとは。意外と手が早いタイプなんですね」

「変なこと言わないで!」

「それにライブ後の密会って……週刊誌でありそうな出来事」

「そういうんじゃないの!」


 そういうのじゃなくて、と言い改める。

 私もできることなら知り合ってすぐの人を家に泊めるようなことはしたくない。

 だけどこれには理由がある。くだらないわけではあるが私の中で克服できないものだ。

 深呼吸をして一旦落ち着き、理由を述べる。


「一人の夜が苦手で……。できたら白沢と一緒にいたい」


 床を見ながら小さな声で呟く。子供っぽいし、白沢を都合よく使っているみたいになるのが嫌だった。だけど正直に話さないと帰ってしまいそうだったから。

 白沢から返事はない。もしかして不快に感じたのかもしれない。

 顔を上げて、白沢の顔を見た。白沢の顔は少し不機嫌そうだ。


「便利に使われてるとか感じたらごめん。いや実際そうなのかもしれないんだけど、えと」

「そういうの他の人にやらない方がいいですよ」


 再び背中を見せて歩き出す。袖を掴んでいた手は簡単に離れて虚しく私の元へと帰ってきた。

 今日も一人何もない静かな部屋で、外の音に怯えながら浅い眠りにつくことになるのか。

 呆然とそんなことを考えた。白沢に断られたのなら、もうコンビニにいる理由はない。何も買わずにいるのは迷惑だし早く退店しなければ。でも心がぽっかりとして動き出せない。

 それから数分したのだろうか。

 叶野さん、と声を掛けられる。

 顔を上げると目の前にはコンビニの袋を持った白沢がいる。中身はよく見えないが飲み物とかご飯が入っていそうな形になっている。


「行きましょう。連れて行ってください」

「え? 帰ったんじゃ……」

「何言ってるんですか? 夜ご飯や宿泊用品を買ってきたんですが」

 


 待ち合わせのコンビニから駅を向かい、電車を経由して家へと向かった。

 実家が少し遠い私のために事務所が借りた家のため、定期公演をするライブハウスや事務所から距離が近い。

 オートロックを解除し、エレベーターで3階まで上がる。廊下を一番奥まで進んだ角部屋が私に与えられた部屋だった。

 施錠した扉を開け、白沢を中に通す。殆ど使っていない部屋なため、いつ帰っても入居したての匂いがする。


「何もありませんね」


 部屋に入り、周囲を見回した白沢が感想を呟く。


「ここは事務所が用意してくれた家だからね。普段は実家に帰ってる」


 部屋には白のローテーブルにギリギリ寝られる大きさのローソファー、数個のクッションが散らばっているくらいで他に家具はない。普段は実家に住んでいるためこの家は必要なときにしか寝泊まりしない。なので必要最小限の家具しか置いていない。

 ……と言ってもまだ売り出し中のアイドルにはそこまで仕事はない。つまりこの家は殆ど使っていない状態だ。

 家賃は事務所持ちなので私に痛手はないが、良くしてくれている事務所に少し申し訳ない気持ちはある。


「家族と仲が良いんですね」

「まぁね」


 母親が病気で入院しており、家には私と弟と妹2人の4人で暮らしている。年齢が一番近い妹が中学2年生だ。家を任せられる年齢ではあるが妹一人に小学生の妹と弟の面倒、家事などをさせるのはあまりに酷であるため私が実家に帰り作業分担をするようにしている。妹にも将来があるし、勉強や遊びなど中学生である今を思い切り楽しんでもらいたい。私は好きなことをしている分、家に貢献したいのだ。父親の所在は知らない。きっとクズだ。

 そんな家庭の事情をわざわざ伝える必要もないのでとりあえずの返事をした。


「家が遠いから次の日が早いときだけここに泊まってるんだ」

「明日何時に出るんですか?」

「8時には出たいと思ってる」


 白沢は液晶に映る時間を見る。コンビニでバッテリーを購入していたため、スマホを復活していた。


「本当に寝に来るための家って感じですね」


 現在の時刻は22時。ここからお風呂に入り、寝る前のストレッチ・マッサージなどをしているとあっという間に24時になるだろう。睡眠時間は削りたくないので時間との勝負となる。

 帰って大したもてなしもしていないところ申し訳ないがお風呂に入ると断りを入れ、ささっと浴室へと向かった。



 お風呂からスキンケア、ドライヤー、歯磨きを終わらせ部屋へと戻る。白沢はローソファーに座り、真顔でスマホを見つめていた。

 すっぴん、パジャマという無防備な姿を見せるの躊躇したが、お風呂後も化粧をして寝る前に落とすのは肌へのダメージを与えることになりそうだったため辞めた。それに白沢も私がすっぴんかどうかなんて気にしないだろう。


「あがったよ~」

「え? あ、はい。……お疲れ様です」


 つい実家のノリで声を掛けてしまった。白沢の家はそういう文化がないのか、もしくは他人に言われたときにどう対処すればいいのか分からなかったのか適当な返事で返される。


「白沢はお風呂入る?」

「はい。後で貸してください」

「うん」


 遠慮しないでくれて良かった。

 白沢の座るローソファーの近くへ腰を下ろした。近くに置いてあるクリームを自身の脚に塗り、右脚からマッサージを始める。ネットで調べたところマッサージの後にストレッチをした方が良いとあったのでそうすることにしている。

 何も言わずにマッサージを始めたが、白沢は気にすることなくスマホを眺め続けている。


「何してたの?」

「ねむりちゃんが呟いていたのでコメントしていました」


 そういいスマホのいくつか操作したあと、画面を見せてくれる。

 ねむりの『今日もライブありがとう。白のペンライト見つけたよ』との呟きの下に『しろさわ』と言うアカウントが『今日も可愛かったです』と簡単なコメントをしていた。ネットでも現実でも変わらない白沢の口調が少し面白い。


「今日も可愛かったです」


 ねむりへのコメントと同じことを言う。いろいろ思うところがあるが可愛くはあるので肯定する。


「私は? 可愛かった?」


 マッサージをする手を止め、すっぴんではあるが両方の人差し指を顎に当て可愛く質問する。


「……あまり見ていませんでした。すみません」


 しかし可愛さも虚しくアイドルがファン(……じゃないか)から塩対応をくらうこととなった。


「叶野さんは」


 白沢は見ていたスマホをソファーへおき、私への言葉は続けた。


「ライブ中に私のこと見ましたか?」

「へ!?」

「視線を感じた気がして」

「…………」


 嬉しい。だけどこの気持ちに気づかれたくなくて、目を逸らして嘘を吐いた。 


「ううん。見てない」

「そうですか」


 否定しても残念がったりはしない。それでもいい。私の視線に気づいてくれたのが嬉しかった。


「白沢の近くにいたファンへレス送ったのかも。だから白沢が見たって勘違いしちゃったのかも」


 疑われているわけでもないのに、同様で余計なことを口走る。疑われることもなく、すんなり納得していた。


「確かに、隣の人がファンサもらったって喜んでましたね」

「白沢は? ねむりに見つけてもらえた?」

「いえ」

「ねむりのファンサはレアだよね」

「はい。でも私はねむりちゃんを見に行ってるのでそれでいいです」

「白沢ってねむりのどこが好きなの?」


 ライブに来てくれる全て人がファンサを目的として来ているわけではないことは理解している。しかしそうではない人が、何を目的として会場に足を運んでくれるのか知る機会がなかった。

 なので純粋な疑問の1つの答えを知りたかったのだ。


「顔ですかね。同じ時代を生きれて幸せです」

「ほう」

 意外と熱い愛にびっくりして語彙を失う。

「それと、人間性も好きです」

「人間性……?」


 ねむりの人間性。

 そこで頭に浮かんだのはファンのことを「キモ」と言ってるねむりの姿だった。

 これは裏の姿ではない。ファン本人に、面向かって言っているのだ。


「毒舌なのは肯定しづらいですが、マイナス面も気にせず見せているところが好きです」

「ほう」

「大学での身の振り方を悩んでいた時期があって」


 恐らくこれは友達から避けられるようになったときのことだろう。

 自分の嗜好を偽るか考えていたこともあったそうだ。


「ですが、ねむりちゃんの振る舞いを見てからは、自分のしたいようにすればいいんだって思えました。万人に受け入れてもらえなくても、1人や2人はそのままの自分を受け入れてくれるんだって」


 まぁ今のところ、大学では一人ですけど。と真顔で自虐を入れる。白沢の自虐ネタはどう処理していいか分からないので黙っておいた。


「やっとその1人を見つけられた気がします」


 ねむりの毒舌さでこんなポジティブになれる人がいるとは思ってもいなかった。こうやって悩んでいる人を勇気づけることができるなんてアイドルはすごい。


「ねむりと会える機会、作れるように頑張るね」

「? ……はい。ありがとうございます」


 ここで話は一旦終わった。

 白沢が同じ部屋にいる。最初は気まずい思い夜になるかと思った。

 だけど想像よりもたくさん話ができ楽しい時間が過ごせている。予定よりも寝るのが遅くなりそうだ。まぁでも、ちょっとくらい遅れてもいいか。


「…………」


 寝るのが遅くなりそう? 寝るのが……寝る……寝るところ……。


「はっ!」

「?」

「やばい。この部屋一人しか寝れない」


 白沢の座っているソファに目を配る。どう見積もっても一人しか寝られない広さだ。しかも白沢は背が高いから脚もはみ出しそうだ。

 床に置かれているクッションを見る。小さいが並べれば身体の半分の長さくらいにはなる気がする。布団は1つしかないがコートを掛けてば寒さはしのげるだろう。

 シミュレーションした解決策を伝える前に白沢が口を開いた。


「大丈夫ですよ。帰ったら寝るので」

「いや、そういうわけには」

「ちょうど終わっていない大学の課題があって。提出が明日の朝までなのでそれをします」


 なのでどうぞ、と白沢はクッションの元へと移動しソファを空ける。


「さすがに悪いよ。私が呼んだわけだし」

「じゃあ、寝るときになったら交代してください。それまではソファで寝ててください」

「約束だよ? 寝るときになったらちゃんと起こしてね」

「はい」


 それより、と白沢はスマホの画面を見せる。

 示された時刻は0時23分。いつの間にか日付が変わっていた。

 やばいと思い、ソファへと寝転がり白沢の方を向いた。


「ありがとう、白沢」


 いえ、とあっさり返事をした後、テーブル借りますね、と言いリュックから取り出したPCを置く。

 今日は大学帰りにライブに来てくれたのだろうか?

 PCを開いて暫くするとキーボードを見ずに慣れた様子で何かを打ち込みはじめた。じっと白沢に視線を向けていたためか、私の方に顔を向けて質問してきた。


「タイピング音、うるさいですか?」

「ううん。気持ちいい音」

「なんですか、それ」

「やっぱり、誰かいるって安心するなって」

「まだ知り合ったばかりですよ」

「知り合ったばっかりだけど白沢は悪い人じゃないの知ってるから」


 近くでカタカタと一定のリズムで心地よいタイピング音が聞こえる。

 目を閉じたらすぐに眠りにつけそうだ。


「白沢、おやすみなさい」

「おやすみなさい、叶野さん」

 

◇ ◇ ◇


 叶野さんの家に泊まった夜。叶野さんの寝顔を見ながら、最初に会った夜のことを思い出す。


 叶野さんとの関係が始まったのは数週間前、リリュのライブ終わりの帰り道だった。


「あの」


 ねむりちゃんへの思いが高まっているところで後ろから可愛らしい高い声が聞こえた。

 周りに私以外の人はいない。私に話しかけたのだろうか。振り返って話を自分か確認すべきかと思い、歩く速度を落とす。

 ……いや、そんなことはない。そう勝手に判断し再び元の速さで歩き出す。


「あの!」


 さっきよりも大きい声を出しながら私の上着の裾を握る。あぁ、やっぱり私だったのか。

 経験上、知らない人から声を掛けられて良かったことはない。

 面倒ごとが起こらないように祈りながら後ろを振り返った。


「急に呼び止めてしまってすみません」


 そこにいたのはツインテールをした華奢な女の子だった。目はぱっちりとしておりまつ毛も盛り過ぎず薄すぎずと洗礼された化粧をしている。 うるうると薄ピンクに潤いがある唇で頬は桜のように綺麗な色だ。

 まるで誰もが想像する理想のアイドルのような容姿だった。


「今日はライブに来てくれてありがとうございました」


 ライブ? リリュの関係者だろうか。


「……あ。叶野さん」


 本当にアイドルだった。

 叶野さん……叶野凜々架さんは推しであるねむりちゃんが所属するアイドルグループ『リリュ』のセンターであり、リーダー的存在(まだ公式からの公表はされていない)、リリュの顔と言っても良いようなメンバーだ。

 まさかアイドルから引き留められてお礼を言われることがあるなんて。まだファン歴は浅いが、貴重な経験をしてしまった(欲を言えばねむりちゃんに声を掛けられたかった)。

 ライブ後で疲れているだろうにわざわざファンの背中を追いかけて声を掛けるなんて、何か動画の企画だろうか。


「わざわざありがとうございます。今日も最高のライブでした」


 ぺこりと頭を下げる。こういうのは得意ではない。


「どうしたんですか? わざわざお礼を言うためだけに追いかけて来たんですか?」

「いえ。あの、お願いがありまして」


 言いにくいお願いなのだろうか。両手をグーにして胸元に置き、誰もいないかと辺りをきょろきょろと確認している。

 ここは閑静な住宅地で人通りも車の通りもない。人がいたら足音で気づくだろう。それくらい静かな道だった。

 誰もいないことが確認できると、緊張したように口を開いた。


「こ、こい……恋人の振りを、してもらえませんか!?」

「は?」


 イラッときた。

 恐らく普通の女であればここまでイラッとくることはなかったと思う。

 しかしこれまで同性を好きになっては気持ち悪がられてきた私にとって、この人の提案が逆鱗に触れた。


「からかってるんですか」

「からかってないです。冗談じゃありません、これは大真面目なお願いでして」

「とても真面目なお願いには聞こえないんですが」

「本気です。大本気です。今後のリリュの活動に関わってくるんです」


 にやついた表情をしていない。声色も真剣味があって嘘を吐いているとは思えない。リリュで一番頑張っているのは他担から見ても叶野さんだ。これには何か事情があるのだろう。

 そうだとしてもイラつきは収まらない。


「ごめんない。そういうの興味ないんで」

「貴方しか頼める人がいないんです。私、友達も、男性で頼めそうな人もいなくて」


 必死に理由を述べる。しかし、受け入れる気にはさらさらならなかった。

 きっと恋人の振りが終わった後に「やっぱり女同士とかないよね」とか言うのだろう。


「お願いします。お礼はなんだってしますので」


 お金は少ししかないけど……と小さな声で補足をしていた。

 俯く彼女の姿を見て、最適な断り方を思いた。

 きっと普通の人はこの条件を飲まないだろう。そう、そう考えたのが間違いだった。


「じゃあ、キスしてください」

「……は?」

「恋人の振りをしてほしいんですよね。恋人がすることができないんであれば、恋人の振りなんてできないんじゃないですか」


 自分で言っていて最低な気分になる。なんてクズな台詞なんだろう。

 相手が望まぬスキンシップは男女問わず最低だ。

 だけど諦めてもらうにはこれくらい言わないといけない。そう思っていた。


「先払いでお願いします。してくれたら本気だって信じます」

「……わかった」


 意を決したように少し歩みを進め、距離を縮めた。

 そう、彼女は本気だったのだ。



「ごめんなさい」


 叶野さんの綺麗な髪の毛を撫でながら、謝罪の言葉を口にする。

 いくらイラッと来たからと言って、謝って済むことではない。

 同意のない接触は犯罪だ。叶野さんが自分で選択したと思っていたとしても彼女は精神的に焦りを感じていた。強要したと言っても過言ではないだろう。

 訴えられてもおかしくないことをしたのに、彼女は私を信頼できる人だと信じて一緒にいてくれる。優しい人だ。

 私も、きちんと彼女に向き合おうと思う。何があっても最後まできちんと付き合おう。そして守ってあげよう。


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