その12.長い話を『起承転結』で構成する方法
前回まで、テーマからアイデアを展開しそれを『起承転結』構成で大筋に落とし込むところまでを解説しました。今回からはその次のステップ、大きな物語を構築する方法を語りたいと思います。
ちなみに全百科では、ここまでで主人公は4コマ漫画を描けるようになるのですが、長い話のまんがを描く方法について悩みます。そこで作内講師は主人公に「短い話をつなげていって長い漫画にする」手法を紹介。
その手法を大雑把に説明すると、以下のようになります。
1、話の展開の大筋を起承転結で書いてみる
2、その起承転結の各パーツ一つ一つをさらに細かい起承転結のパーツに分け、計16パーツの各内容を考える
3、その各パーツをさらに起承転結に分けて書く内容を考え……という作業を具体的な話をイメージできるようになるまで繰り返す。
これを、例えば拙作「劣等スキル持ち~」での実際の制作過程で説明させていただきますと以下のようになります。ちなみに物語の全体量はのべ単行本4~5冊分に相当。
まず初めの時点でポンコツパーティーが魔王を倒すという結末とラストシーンはほぼ決まっていました。そこで、その展開を
起 …… 主人公が仲間と姫に出会う
承 …… 姫が魔王にさらわれる
転 …… 魔王を倒すための策を巡らす
結 …… 魔王を倒す
としてそれぞれを1~4章に割り振り。
当然、これだけだと漠然としすぎているわけで。そこで起承転結の展開一つ一つそれぞれをさらに『起承転結』で細かくし、16分割にします。
■1章(起:主人公が仲間と姫に出会う)
起の起 …… 主人公が学園から追い出され、そのあと姫に出会う。
起の承 …… 仲間のいざこざに巻き込まれ御前試合に参加せざるをえなくなり、その予選を大方の予想を裏切って突破する
起の転 …… 予選での必勝パターンが使えなくなったので本戦に備えて新しい仲間や技を得る
起の結 …… 本戦は敗退したが、周りを見返し、危機を脱することはできた。試合には負けたが勝負には勝った。
■2章(承:姫が魔王にさらわれる)
承の起 …… 仕事の依頼があり、前線近くの古城へ行くことになる
承の承 …… 勇者が前線から逃亡し、その尻拭いで魔王軍幹部と戦うことになり、勝利する
承の転 …… 自分達が前線にいる間に王都が魔物に落される。姫が人質となる
承の結 …… 死力を尽くして仲間と共に魔王と戦うが敗れ去り、姫はさらわれる
■3章(転:魔王を倒すための策を巡らす)
転の起 …… (以下略)
こんな感じで16分割。やはり話を書き始めるにはもう少し細かくしたいところです。
なので16分割されたパーツをさらに『起承転結』で再度4つに分解。その1つ1つのパーツの内容を考えます。
■1章の1話(起の起:主人公が学園から追い出され、その先で仲間と姫に出会う)
起の起の起 …… 勇者によって鑑定士の主人公が学園から近々追い出されることになる。そこで商人である学級委員長の伝手を頼り、雑貨屋を手伝うことに。
起の起の承 …… 雑貨屋に、姫の指輪を盗んだスリと姫が訪れ、姫の指輪を奪還する。
起の起の転 …… 姫がお礼にきたところで、誤解した同じクラスの農民少女と喧嘩
起の起の結 …… 誤解を解き、ほんの少し農民少女の信頼を得る
■1章の2話(起の承:仲間のいざこざに巻き込まれ御前試合に参加せざるをえなくなり、その予選を大方の予想を裏切って突破する)
起の承の起 …… 姫が御前試合に参加することになり断りに行こうとするが、農民少女の暴挙で主人公含めパーティーを組んでみんな参加。勝ち進まないと処刑される流れになってしまう。
起の承の承 …… 主人公は作戦を練りながら、攻略に必要なアイテムをそろえていく。
起の承の転 …… 予選が近づくにつれ他の選手の実力が露わになり皆が不安がるが、主人公は『だからこそ勝てる』と勝利宣言
起の承の結 …… 宣言通り勝ち予選を突破するが、そのあと御前試合自体を揺るがしかねない事件に巻き込まれる。
■1章の3話(起の転)
起の転の起 …… (以下略)
このように『起の起の起 ~ 結の結の結』まで64分割します。自分はこの段階で話を書き始めますが、もし64分割でも物語を具体的に書けるイメージが湧かないようなら、さらに『結の結の結の結』まで256、それでもダメなら1024と分割を進めてもOK。
それと長い話を書く場合64分割全ての内容を全部キッチリ考える必要はありません。数話(8~12話)分までキチンと考えたら、あとはざっくりした感じで大雑把に書いてしまってかまわないと思います。
というのもこの手法の場合、実際に作品本文の『起』や『承』などを書き進めるうちに、もっと良い『転』や『結』の展開を思いつく場合が少なくないのです。また、連載中に途中で読者の反応をみて変えたくなる場合も出てきたりも。その場合、最悪そこからの大筋を丸々変えることになるわけで。そうなると、キッチリ考えた内容がムダになってしまうのです。
それに前にも話したとおり、大筋だけで話の魅力が決まってしまうわけではありません。キャラの描写などによっても十分挽回できる場合があります。ですので、大筋を考えている段階で詰まるくらいなら、少しでも早く実際の執筆作業に入ったほうがよいということもあります。
ちなみに拙作の場合、下書きを1章分書き殴ったあとに投稿を開始しているのですが、50話中8話のあたりで流れの細かいところ(ざまあ描写をどの辺りでおこなうか)を変更するかしないかの判断がありました。そして最終的に下書き1/3くらいの文章を破棄し、話のながれを変える形で新たに書き直しています。第1章の勇者のざまあ展開は(幕間も含めて)全てそのときに書き下ろしました。
説明は以上となりますが、ここまで話したのはあくまでも基本の考え方。実践する場合は自分に合うようアレンジを加えるのもありかと。というか拙作でも実際、理由があって転と結を一つにして3章目としていたり、一つの章の中身は三幕構成で考えてたりと、厳密に64分割しているわけではないです。
次回は、大元になるストーリーの考え方と、ストーリー構成の作戦についてまとめます。
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