イオとクロエ

クロエはイオに連れられ、イオの屋敷に到着した。


イオの屋敷は、クロエやアリオンの屋敷に比べ、敷地が広くて豪華、というわけではなかったが、庭園の草花に手入れが行き届いており、非常に美しかった。


また、あちこちでセンスの良いオーナメントが飾られており、子どもが遊べる立派な手作りブランコも設置されていた。


「小さいお子さんがいるの?」


とクロエが尋ねると、


「ああ、弟がいて、、、」


とイオが言いかけたその時、


「にぃにーーー!!!!」


2、3歳くらいの男の子が、イオの足元めがけてタックルしてきた。


「こらテオ!母さんのとこ行ってろ!にぃに今お友達来てるだろ。」


イオがたしなめると、テオは


「やだ!遊ぼ!一生のお願い!」


と駄々をこねた。手には木で作った動物のおもちゃが握られており、どうやら動物遊びがしたいようだった。


「初めまして。イオお兄さんのお友達のクロエです。おいくつなの?」


クロエがしゃがんでテオの顔を覗き込むと、

テオは恥ずかしいのか、イオの後ろに隠れ、黙ったまま指で『3』を示した。人見知りしているのか、口がへの字になっている。


「テオくん3歳なのね。それにしてもイオにそっくり。イオとテオ。名前もそっくり。。。」


「双子でもないのにおかしいだろ?うちの親も呼び間違えるしな。それに、年も離れすぎてるし。弟3歳って。。。」


イオはぶつぶつ文句を言った。


テオがイオから離れなかったので、一緒に連れていって作品を見せてもらうことにした。


部屋に入ると、ミニチュアサイズの建築物が所狭しと並べられていた。


洋風の建物、教会や、東方に伝わる家屋のような建築物もあった。色も塗られており、細かな建物の汚れや錆、陰影の部分も表現されている。細部までこだわって作られており、まるで別の世界を旅しているような錯覚に陥った。



「わぁ、、、本当にすごいわイオ。細部までこだわって作ってるのね。特にこのお家とお庭が素敵。私もこの家に住んでみたいわ。」


クロエは、小さくてかわいらしいウッドデッキ付きの家が特に気に入った。家の外に海が表現されており、本当に住むなら気持ちが良さそうだと思ったからである。


「クロエは意外に控えめなのが好きなんだな。もっと豪邸とか、お城とかが好きかと思った。」


とイオは笑って言った。


「おねーちゃん!これみて!動物さんのお家だよ!」


テオは、ミニチュアの動物小屋を持ってきて、そのなかに木のおもちゃを入れて遊び始めた。


テオの為にイオが作ってあげたのだろう。


「イオは優しいのね。おもちゃもブランコも、小さな弟の為に作ってあげたんだ。テオは誰よりも幸せ者ね。」


イオが照れたのを隠すようにテオを抱っこした。


「にいにはいつも僕におもちゃ作ってくれるんだ!!いいでしょ!」


テオは兄が誇らしいのだろう。自慢しているのが可愛らしくて、クロエは和やかな気持ちになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る