第26話 超カワイイ!

 登場人物

 七海 中性的な顔立ちの少年

 和泉 見た目は俺様系イケメン

 氏家 和泉に告白した美少女



 目を丸くして息を呑んだ氏家さんの頬が徐々に紅潮していく。


「男子はキミみたいなかわいい子にカワイイなんて当たり前のこと言わない。むしろ逆のことを言う。それはなぜ? 好きな子にかまってほしいからだよね。それに、クラスの女子も君がカワイイなんて当たり前のことは言わない。それを前提に話してるからわざわざ言ったりしないよ」

 キミみたいな勝ち気な子には特にね――、という言葉は呑み込んで。


 氏家さんの顔は真っ赤に染まっていた。

 オレは追撃の手を緩めない。 


「断言するよ、キミはカワイイ、超カワイイ! ア、アタシが男だったら即効で付き合いたいと思うくらいだよ!」

 

 男子の姿だったらこんな恥ずかしいセリフを面と向かって言えなかっただろう。良くも悪くも女装の効果ってことだ。

 オレは微笑みかけて彼女の背中に手を置いた。


「……っ!」


 氏家さんはオレの視線から逃げるようにうつむいてしまった。耳まで真っ赤にした彼女の頭から湯気が立っている。


「か……カワイイカワイイってうるさいのよ!」

 急に立ち上がった彼女はオレに背中を向けた。


「え……」

「和泉くんとどうぞお幸せにッ!!」

 そして、逃げるように去っていってしまった。


「ええ……」


◇◇◇


 駅の改札、和泉は落ち着かない様子でオレを待っていた。


「彼女は?」


 オレは後頭部を掻きながら、

「それが……怒って帰っちゃった。ごめん」


「いや、嫌な役を押し付けちゃってすまなかった」


「とりあえずあきらめてくれったぽい」


 安心したのか、「そうか」と和泉は息を付いて頬を緩めた。


「ああ、腹減った」

 時計を見てみればもうすぐ昼飯の時間だ。


「おごるよ。何食べたい?」


「……ギョーザ」


「ずいぶん安上がりだな」


「彼氏の懐事情を察して気を利かせる良い彼女だろ?」


 ふふん、とオレは鼻を鳴らして笑う。


「ああ、お前は最高の彼女だよ」

 

 そう言って和泉も笑った。


 それからオレは、和泉と一緒に玉将でギョーザを食べた。

 女装したままで。



____________________


 ここで第二章は完結となります。

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 よろしくお願いします。


 

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