第24話 女同士

登場人物

 七海 中性的な顔立ちの少年

 和泉 見た目は俺様系イケメン

 氏家 和泉に告白した少女 





 オレは氏家さんの綺麗な琥珀色の瞳を見つめて言う。


「だから和泉は顔じゃなくて中身を見てほしいって思ってるんだよ。氏家さんもさ、もう少し時間を掛けてみたらどうかな? 和泉の良いところも悪いところもちゃんと見て、知って、それを受け入れた上でそれでも好きなら、もう一度告白してみたら? それなら和泉もちゃんと考えると思うんだ」


 ぶっちゃけ、こんなこと彼女の言うセリフではない。氏家さんに付いた嘘がバレてしまうかもしれない。

 それでもオレは二人の関係が少しでも良い方向に進んでくれたらいいなと思ったんだ。


 氏家さんは大きな目をぱちくりさせている。

 その彼女の瞳から、ボロボロと涙が溢れはじめた。


「なんでそんなこと言うのよ……」

 彼女は声を震わせながらうつむいてしまう。


「えッ!?」


 ――なんでそうなるの?? こっちが聞きたいよ!


「だってそうでしょ? あなた、まるで私のことなんて眼中にないみたいじゃない!」

 まるで俺の心の声を見透かしたように彼女は、涙で濡れた瞳でオレを上目遣いに睨む。


「そ、そんなことは……ないよ」

「彼女ならもっと張り合いなさいよ!」

「う……」

(ごもっともです……)


 彼女は嗚咽で呼吸を詰まらせながら次々とこぼれ落ちる涙を手の甲で拭う。


「氏家さん……、俺はその……君の好意は素直に嬉しい。だけど、俺は彼女が好きなんだ……ごめん、何度も言うけどあきらめてくれ」和泉は頭を下げる。


 氏家さんは手の甲で目を抑えながら首を振った。


「和泉、ここは一応女同士で話してみるから少し外してくれ」

 オレは和泉に小声で耳打ちする。

「でも……」

「いいから改札で待っていてくれ」


 和泉はうなずき、その場を離れていった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る