第10話 円卓会議

登場人物


 和泉いずみ 七海のクラスメイト、見た目は俺様系イケメンだけど常識人、1班の班長

 七海ななみ 見た目は中性的な少年

 委員長 七海のクラスの委員長、メガネ

 山田 6班の班長、クズ

 小島 2班の班長、アニメ好き




 俺の名前はイズミ、和泉と書いてイズミと読む。

 俺が所属する2年2組は仲が良い。

 でも最近はちょっと嫌な流れになってきている。


 発端は罰ゲームとして6班がやっている女装だ。


 最初はみんなで面白くおかしく楽しんでいる雰囲気だったけど、最近は七海一人に集中してしまっている。

 個人に狙いを定めて女装させようとするのは正直、見ていて気持ちのいいもんじゃない。


 今のうちに悪い流れを断ち切っておかないと良くないことが起きそうな気がするんだ。

 


「これより第十三次円卓会議をはじめる」委員長は言った。

「ただの班長会議だけどな」

「それに机くっつけただけで円卓でもないしな」

「円卓会議っていかにも中二だな」小島が言う。


 俺は今、月に一度開催される班長会議に出席している。


「なあ、七海のことだけどさ、本人も嫌がっているんだからもう止めようぜ」

 俺は委員長と他の班長に向けて言った。


「だからみんなで女装しようって提案したんじゃないか」

「そんなことするより普通に彼女をつくる努力をした方が有意義だろ?」

 俺がそう提案するも、

「へ、お前はイケメンだからいいよな。苦労しないもんな」

 6班班長の山田が茶化してきた。


「まあ、和泉の言うことももっともだ」

 腕を組んだ委員長は、

「だが、お前はまるで解ってないな」と俺に視線だけを向けた。

 メガネの奥の眼がギラリと光る。


「いいか、よく考えろ。七海は俺たちと同じ中学二年生だ、つまり成長期にある」


「だからなんだよ?」


「喉仏が出てきてこれから声変わりするし、背が伸びて体格だってもっと男らしくなる。つまり、今の七海はいましか見れないんだ……。もってあと一年、早くてあと半年で七海は男になってしまう。これがどれだけ貴重なことかお前には解らないのか?」


 委員長はアホみたいなことを言っているが、その言葉には妙な説得力があった。

 期間限定だと知ると途端に惜しくなる。


「そうかもしれないけど、俺はやっぱり……」


「案ずるな和泉、どうせ七海にテストで敵うヤツはうちのクラスにはいない。盛り上がってはいたが、もう見納めだとみんな理解しているはずだ」


「……そんなこと言ってお前らコソコソ勉強してんだろ?」


 委員長と班長たちは視線を泳がせた。


 


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