あの日 桜吹雪

佐倉明人

第1話

 ひらひらと舞う、ピンク色の花びら。ゆらゆらと舞い落ちる光景が、まるで雪のように見えなくもない。


 ひらひら ひらひら

 ゆらゆら ゆらゆら


 桜が舞う穏やかな春の季節。僕は登り坂の途中にいる。眼前から上に向かって桜並木。いいシャッタースポットだ。そう僕は、この美しい光景を携帯電話のカメラに収めよと、この場所に来た。目の前には登り坂と桜並木。ひらひらと舞うピンク色の花びら美しき。

 暖かで陽気な季節。冬の寒さは、どこへやら。もう、あの寒さは記憶の片隅に追いやられ、忘れ去られ、暖かで穏やかな日々が続いている。のどかだ。なんだか眠気に誘われる陽気。春の陽気。いつまでも浸っていたい暖かな陽気。


 のどかだ。


 あの大雪は、一体何だったのだろう。今ではもう、こんなに暖かくなっている。

 あの大雪とは、住人の皆さまなら、よくご存じであろう。あの大雪について少し語りたくなった。ここは是が非でも語らせていただこう。

 あの大雪とは、忘れもしない人工雪。僕は人工雪アートに没頭していた、あの日の冬。被害の全容を知るには時間がかかった。まさか、数日間にもわたって停電していた地域があったとは。あの時は思いも及ばなかった。

 なのに、僕は不謹慎にも人工雪アートに没頭していたのだ。だが、停電していたからといって僕が出来る事というのは、何もなかったのだけれど。ある日、募金箱を見かけた僕は、ささやかながら、お釣りの小銭を投入した。

 そんな程度だ。その程度、そのくらいの事しか出来なかった。被害に遇った方々には、お見舞い申し上げたい。

 しかし、人工雪で狙ってくるとは、酷い世の中になったものだ。昔からあるのだけれど、このところ、やたらめったら狙っているんじゃないかと思ってしまうほど、手口が酷いというか、奴らの行いには目を見張るものがある。なんという事だ。異常事態が起きているのに、誰もその事に気づかない。気づけない。


 「目覚めろ、皆」


と、僕は叫びたい。叫んでやりたい。そんな気分だ。


 南の海上では、すでに台風1号が発生しているらしい。なぜ今この時期に台風が。もう答えはお分かりだろう。


 気象操作だ。


 分かる者には、分かるのだ。


 この時期に台風が発生する訳がない。訳がないのだ。あり得ない。あり得ないのだ。おかしい。おかしいのだ。あり得ない事、おかしい事が起こっているのだ。何故、その点に気づかないのか。何故、その点に気づけないのか。

 皆も、もっと目覚めるべきだ。もっと目覚めるべきだと、僕はつくづく感じてしまう。この国は一体どうなってしまうのか。この世界は一体どうなってしまうのか。皆、のん気に生きているだけでいいのか。いや、実際は、のん気ではない。せわしなく働いているのだが、その働き方も間違っていると僕は思う。

 マネーが人の心を繋いでいる。なんて物悲しい世界だ。世界には嘘があふれている。世界には嘘であふれかえっているのだ。嘘が事実と入れ替わってしまっている。なんて酷い世界なんだろうか。

 だが、しかし。ちっぽけな僕一人では、何も動かせない。世界を動かせるほどの力など、今の僕には持ち合わせていないのだ。いや、これからの僕も持ち合わせていないに違いない。僕の将来なんて、ごく普通のサラリーマンだ。

 そんな程度だろう。だが、そんな程度でも十分なのだ。十分なのだが、社会適応性があるか、ないかといえば、ない方に部類してしまうかもしれない僕だ。将来がサラリーマンなんて夢がないといえば、ないのかもしれないのだが。

 しかし、今の僕には自分が何に向いているのかすら分からない。分からないのだ。自分で自分の事が分からない。自分が何に向いているかなんてやってみなくては分からない。

 とりあえず僕は、サラリーマンを選ぶ。サラリーマンでも職業までは決めていない。きっと僕を受け入れてくれた会社で働くのだろう。僕を受け入れてくれる会社はあるのだろうか。

 そして、その会社は、どんな会社なのだろうか。将来は未知数だ。不安だらけの将来に、もはや希望など抱ける訳がない。

 と、今頃から、そんな夢もへったくれもない事を言ってみる。

 しかし、凡人な僕には、将来に対して、それくらいの思いしか抱けない。前述した通りだ。何か、目に見えない、闇みたいなものが襲ってくるような気がして、将来に対して不安しかない。

 高校を卒業したら、どうするのか。もし大学に行ったとして、卒業したとしたら、どうするのか。特に何も、これといった才能を持ち合わせていない僕に、将来は闇に近い。迫りくる闇に近いのだ。

 そして、本物の闇の者たちは、今日もせっせと人工台風などを作っている。そんな事をして何になるのか。気象操作も、はなはだしい。と、思いながら、僕は坂を登っていた。この美しい光景とは裏腹に。


 僕が住んでいる世界は、そんな世界だ。気象操作や人工地震、なんでもござれと言わんばかりに影の者たちが狙ってくる。そう、この世界はそんな世界なのだ。それが、この世界での常套手段であり、一部の者にとっては日常茶飯の常識である。皆様は、信じられるだろうか。おそらく信じがたい事実だ。


 こういった事を全く知らない皆様には、僕が奇妙な戯言を言っているだけのように聞こえるかもしれない。ただの絵空事を言ってるだけのようにも、受け取られるかもしれない。

 しかし、知らなかっただけでは済まされない。済まされない日が、いつか訪れるはずだ。

 皆が事実を目の当たりにした時、一体何が起こるのだろうか。もしかすると、大混乱が起きるかもしれない。いや、起きるに違いない。なんて労しい事実なのだろうか。

 それでも、事実は巧妙に隠される。事実は巧妙に隠されるのだ。真実と現実の狭間で。

 ただ一部の者しか、この事実に気づいていないのが、この世界での住人意識だ。住人意識が低いのかどうかは、さておき、洗脳された脳にはフィルターがかかり事実が見えなくなってしまう。


 事実と真実が入れ替わる。


 そう情報操作も、お手の物。この世界では、ごく一部の者によって、全てが操作されているのだ。信じがたい。信じがたいが、これが事実であり、これが現実だ。

 知らない、知らせない、隠される。が、この世界では、ごく当たり前に行われている。そう、ごく当たり前に行われているのだ。

 日常茶飯的に、だ。

 そんな世界に住んでいるのが、この僕だ。僕は、いろんなところから情報を集め、この事実に気がついた。もちろん僕以外にも気づいている者たちは数多くいる。そう、この国にも。この国が一番まだまだなのだが。世界的に見れば多くの者たちが目覚めつつある。

 そう今は道半ばだ。道半ばな世の中だ。なんという事なのだろうか。酷い世の中だ。

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