第22話 タイルカーペットの話

 タイルカーペットは今や普通に使用する材料となった。以前は長尺シートやPタイルが主流であり、掃除のしやすさという点では扱いが簡単だった。しかし、現在では少なくとも新築において長尺シートの類を使用するのは水回り、つまり給湯室やトイレに限ることが多い。

 まずはタイルカーペットのご先祖様となる絨毯を考えてみたい。絨毯の下にはフェルトがあり、歩行感は柔らかい。そんなことは知らずにかつて絨毯の施工を計画した私は、フェルトを敷くことを知らず現場で失敗したこともある。そして貧乏性の私が歩くと柔らかさのゆえにつまずくが、ブルジョアのように一歩一歩ゆっくり歩けばよいのだろう。昔から絨毯は高級だった。そして、一カ所を汚せばきれいにするのも大変だ。しかし、小さいタイルカーペットを絨毯のように敷き詰めれば部分的に交換するのも簡単なので、汚れた部分だけ交換すればよい。増えるとの柔らこそさえないが。

 日本でタイルカーペットの使用が始まったのはいつか。正確な資料はないが東リの社史を見ると1976年に米国モハスコ社とカーペットに関し技術提携と記載があるので、その頃なのだろう。海外の方が先行していたことになる。割と最近のことだ。絨毯と同じふわふわ感はないとしてもホコリが立ちにくく吸音性もある。下階への振動や騒音もさえられるなどなかなか重宝する。そして、一般の人には認識がないかもしれないが安いのである。

 タイルカーペットは既製品を使用するのが普通であるが、広大な面積の施工をする場合には特注という手がある。ある現場において契約に特注品を使うとあるのでいろいろと試作品を作ってもらったことがあるが、同じタイルカーペットといえども特注できる技術にはかなり差があって、国内では東リがNO.1であることを知った。特注しなければ関係ないが、敬服に値する。

 さて、そんなタイルカーペットであるが、最近流行という物を感じる。昔は同じ模様のものを同じ方向に貼るか交互に方向を変えるか程度しか貼り方が無かった。せいぜい部屋の端部だけ色を変えるボーダーを設ける程度の工夫だった。ところが最近は異なる色を混ぜるのが流行っているようだ。私の勤務先の部屋も芝生のような模様になっているばかりか、芝生に近い黄緑色、砂地に近いグレー・茶色、青と黄緑が混ざった模様、などがアトランダムに敷かれている。自然を模しているように見える。私のようなおじさんからすると違和感でしかしかないのだけれど、最近同じような色使いをあちらこちらで見るようになった。

 メーカーに聞いたわけではないから不確かかもしれないが、昔よりもお絨毯に近い織り方になっていて吸音性が高いようにも感じる。少しずつ進化しないと消費者の改修工事意欲がわかないということなのかもしれないが、性能は良いと感じる。単価もきっと上がっている。繰り返しになるが意匠的には私の好みではないのだが。奇をてらいたがる新しい物好きの設計者は好むのだろうなーとぼんやり思った。

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