第17話 陶器の話

 最近図書館で借りて明治から昭和に活躍した人の伝記を読んでいる。今まさに読み終えた「製陶王国をきずいた父と子(砂川幸雄著)」について、なかなかの驚きだったので少し紹介したい。

 まず何故この本を読もうと思ったかであるが、父と子の名前が大倉孫兵衛と大倉和親であり「大倉氏」である。私の勤める会社の創業者が大倉喜八郎であり「大倉氏」なので何か関係があるのかという関心から読んでみようと思った。ところが結局、全く別人であった。少しがっかりしたものの、違った意味で大変興味深い本だった。

 この本の詳細はかなり分かりにくい。家系図を見ても結婚して死別して他の人と結婚して・・・とか、養子に行ってとか、一人の人があちらこちらの会社の経営をしたとか会社を移ったとか行き来したとか・・・年代も行ったり来たりして、全然頭に入らない。だから、なんとなく雰囲気で読んだ。

 ではどこに興味を引かれたか。日本を代表する食器の会社ノリタケ、衛生陶器のTOTO、スパークプラグのNGK、日本ガイシ等が皆一つのグループ「森村グループ」に属していることがまず驚きで、LIXILに入る前のINAXまで同グループであったのだという。そして創業が皆同じなのである。少し違うとすればINAXは途中からグループに入ると言うところか。知る人は当然のことと思うのだろうが、私は森村組という存在を知らなかった。何故大倉で無いかと言えば、森村氏が創業して大倉氏が活躍していくという物語だからである。驚きだった。 TOTOとINAXは同じ衛生陶器なのに同じグループだったというのも不思議だ。

 同じ大倉でも大倉喜八郎と異なるのは、大倉喜八郎は出自が裕福では無かったので奮起して出世していくのに対し、大倉孫兵衛たちは元々裕福だったことだ。若い内に当たり前のように海外に行っている。そして、当初はある種の食器がなかなかうまく出来なかった様だが何年も試作を繰り返す経済的な余裕もあった。それでもやはり暗い未来に立ち向かうべく碍子やスパークプラグに手を広げていくのだが、皆一流になっているところはすごい。

 そして、大変社員思いだったことが記されている。今で言うところのエンゲージメントが高い企業たちだったようで、少なくとも本の上ではほのぼのする。新しい技術に立ち向かい日本人の頑張りを思い知らされたような気がして、大変読後が心地よい本だった。

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