第15話 優斗と陽狐のゲーム対決
二日ある休みのうち、一日はアニメをひたすら鑑賞して過ごした優斗と陽狐。
優斗は翌日、本来なら仕事に行っている時間で、平日という事もあり、朝からソファに座ってテレビを見ていたのだが、ニュースやよく知らないバラエティ番組くらいしかやってないのでテレビを消してしまった。
陽狐は現在洗濯中で側にいないため、優斗はスマホでSNSを閲覧する。
しかし、それもすぐに飽きてボケっとしていたところで、優斗はアパートから持ってきた据え置き型ゲーム機の事を思い出してそれを探しにリビングから自室へと向かった。
「どの段ボールだっけか。これか? 違うな。これか? お。あったあった」
段ボールからゲーム機の本体と充電スタンド、ケーブルやコントローラーを取り出してガチャガチャいわせながらリビングに戻ると、持ってきたゲーム機をテレビに繋いでいく。
「あ。ソフト持ってきてねえや」
ゲーム機本体はセットしたものの、ゲームソフトを忘れていた事に気が付き、優斗は再度自室に向かうと、ゲーム機本体が入っていた段ボールを再度覗く。
「これはストーリーが長いからなあ。こっちのアクションにするか? あ、これにするか。格闘ゲームなら別にやり込みすぎる事もないだろ。久しぶりに大乱闘だなあ。あとは〜。暇つぶしならコレもありかな」
と、優斗は段ボールから二つ、ゲームソフトのパッケージを取り出すとリビングに戻ってテレビの側に置いたゲーム機本体にゲームソフトをセットして電源を入れた。
そして無線のコントローラーを手にソファへ向かい。腰を下ろすとボタンを押す。
「げ、電池やばいな。しばらくは充電しとくか」
仕事から帰ってきて、買うなり作るなりして夕食を食べ、作業着を洗って干して風呂に入れば、ベッドに横たわりスマホをイジって時間をつぶしていた今までの生活。
それ故になかなかゲームをすることはなく、たまにやってもすぐ飽きて寝ていた。
「こうやってゲーム出来るのも、陽狐さんと一緒に暮らしてるからだよなあ」
などとぼんやりしていると、洗濯物を干し終わったのか、陽狐が外から戻ってきた。
「優斗さんどうしたんですか?」
「いやあ。今幸せだなあって思ってた」
「ど、どうしたんですか急に」
何も入っていない洗濯かごを床に置き、陽狐が心配しているのか恥ずかしがっているのか、眉をひそめ、頬は赤く染めて優斗の横に座った。
「いやあ。贅沢だなあって思ったんだよ。美人な彼女と二人暮らし出来て、一緒に生活してさ。こうして話せて、アニメ見たりして。幸せだなあって」
「そ、それは私もです。優斗さんと一緒にいれて、私は幸せです」
そう言うと陽狐は尻尾を優斗の手に絡め、更に腕を絡めた。
その陽狐の行動に恥ずかしくなり優斗は顔を赤くするが、陽狐は優斗が持っていたゲームのリモコンが気になったのか、リモコンを見つめて首を傾げた。
「気になる? ニャンテンドースイッチ」
「初めて見ました!」
「マジ?」
「家には将棋や囲碁、花札やトランプしかなくて。あ、麻雀もありましたねえ」
「アナログやつ? 逆に見た事無いや。ちょっとやってみる?」
「良いんですか?」
「もちろん。じゃあそうだなあ、将棋や囲碁、花札やトランプ、麻雀とくれば、大乱闘の方じゃなくて、こっちのゲームするか」
そう言って優斗は「ちょっとごめんね」と陽狐の尻尾と腕から自分の手を抜くと、テレビを乗せてる台の前に適当に置いたゲーム機本体からソフトを抜くと、持ってきていたもう一つのソフト差し込んだ。
「いま入れたソフトは世界中の色んな遊びを収録したゲームなんだ。本当に色々あるから一緒に遊ぼう」
「初めてなので、優しくしてくださいね?」
「なんか別の意味に聞こえるな。まあいいや」
話をしているうちに少しばかり片方はリモコンの充電も回復したか、自分が持っていたリモコンを充電器にさすと、充電がやや回復した方のリモコンを操作してゲームを起動した。
「はい陽狐さんリモコン、こう横向きに持って」
「こうですか?」
「そうそう。これが十字キーで、選択や移動はこれ。決定はこっちのボタンで、キャンセルはこのボタンね」
「おー。ちゃんと動きますねえ」
「じゃあまずは陽狐さんの得意なやつからいこう。将棋とかどう?」
「やってみます」
人生初めてテレビゲームをプレイするらしい陽狐に、優斗は操作方法を教えながらゲームを始めた。
しかし、元より飲み込みが早いのか、陽狐はあっという間に操作方法を覚え、各種ゲームをクリアしていった。
「CPUじゃ相手にならないとわねえ。凄いね陽狐さん」
「優斗さんの教え方がお上手なんですよ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺は操作方法教えただけだよ。さて、そろそろリモコンの充電も出来てきたし。今度は俺と勝負しようよ」
「優斗さんとゲーム。緊張しますね」
「いやいや真剣勝負じゃないんだから。でもそうだな。せっかく遊ぶんだし、何か賭けて勝負する? お菓子とか」
「優斗さんとの結婚を賭けます」
「重い重い。大事な事をゲームで賭けるのはよくない。軽いものにしよう軽いものに」
「じゃあ私が勝ったら優斗さんのキスでお願いします」
「だから! それも軽くはないって!」
などと反論してみたものの、陽狐が中々引き下がらないので「まあ俺が勝てば良いか」と、まずは将棋を始めた優斗たち。
結果だけみれば、優斗の惨敗であった。
「勝ちました!」
「馬鹿な。将棋は爺ちゃん相手に勝ったことあるのに」
「キスしてください!」
「まあまあ、待とうか。せっかくいろんなゲームあるんだし。色々やって決めよう」
負けたままでは男が廃る、というよりまだちょっとキスは恥ずかしいという理由で同じソフトに収録されている別のゲームで優斗は勝負をすることにした。
したのだが、優斗は陽狐に惨敗。
将棋はもちろん、五目並べ、花札、トランプによるポーカーや大富豪、7並べ、あとは麻雀でも勝負をしたが、優斗はその全てで初心者であるはずの陽狐に負けたのだ。
恋する女性は最強である。
ここまで負けておいて、やっぱり勝負は無しなどと言えるはずもない。
優斗は早鐘を鳴らす心臓を落ち着けるために深呼吸すると、目を瞑って待っている陽狐に軽く口付けをして、二人して真っ赤な顔で照れるのだった。
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