第11話
7月になって一緒に和馬の試合を見にいった。
グラウンドでの和馬はいつも見せる優しく逞しい表情とは違い力強く、その中に優しさもある例えるなら戦士の様なそんな姿だった。
僕の高校は順調に勝ち進んでいき、27年ぶりの準決勝進出を果たした。
もちろん僕と優香は準決勝も一緒に応援に行く。
結果は3-4の惜負。
その日の和馬は大活躍だった。それでも誰よりも涙を流す和馬の姿がグラウンドにはあった。
そして横にいた優香も涙を流していた。
確かに感動した。何かに打ち込む事の美しさがそこにはあったと思う。
僕にはない魅力だし、心からカッコいいなと思うことができた。
きっと優香も同じなんだと思った。打ち込む事のできる強さや勇気、何かに打ち込むことへの憧れなのかなと感じた。
「カッコよかったね。」
「うん。」
試合が終わると次の試合がある事もあり余韻に浸る間もなく球場を後にする事になった。
「お店、寄ってく?」
「いいね、そうしよう」
優香に誘われていつものカフェに行き少しだけ時間を潰す。
「和馬見てたらカウンセラーやっぱり目指したいなって思えたんだよね」
「良いと思うよ、優香は頭悪くないんだし奨学金も借りればいけると思う」
「うん、でも働けってうるさいんだよね。私の人生なのに。早く家出て行きたいな。」
「バイトもしてるんだしきっと大丈夫だよ!」
「うん、、そうだよね!ありがとう!」
優香は他にも何か言いかけて辞めた気がしたけど気にせずに会話を切り上げた。
「しずくはやりたい事ないの?」
「僕は今の所はないかな。だから和馬の頑張ってる姿とか、やりたい事のある優香とかがすごいなって思うし羨ましく思うよ」
「私なんて羨ましくなんかないよ。」
「そんなことないよ。」
「あるの!思うことできてもその通りにならない事もあるの!」
急に大きな声を出した優香に思わず「ごめん」と返していた。
「あ、ごめんつい。気にしないで。」
「大丈夫だよ」
少し気まずい空気が流れたがすぐに今日の和馬の活躍の話になりいつも通りの2人に気付けば戻っていた。
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