終焉のサクリファイス3 鮮血屍者編 前編

冬城ひすい

第3巻 鮮血屍者編

✞Memoirs

♰Chapter Mem:幻影回顧録『半人半鬼』

最初の人は言った。

――人間という種こそが世界の創造者であると。


次の人は言った。

――人間という種こそが世界の破壊者であると。


最後の人は言った。

――人間という種は世界をゼロにしているに過ぎないと。

――人間は正と負を生み出すから、符合するのだと。


生は死でとんとん。

死は生でとんとん。


希望は絶望でとんとん。

絶望は希望でとんとん。


快楽は苦痛でとんとん。

苦痛は快楽でとんとん。


表現が異なってもその本質は全て同一。


穢れを知らない少女はそれならば、と一人の神父様に尋ねた。

――人間以外の生き物はどうなるの……?


無垢の瞳に反射する、極彩色のステンドグラス。

漆黒の喪服に包まれた、人々の十字架。

祭壇に安置された、百合ばかりの棺。


神父様は言った。

――動物は認めていいんだよ。

――植物は認めていいんだよ。

――たとえ目に視えないものだったとしても認めていいんだよ。

――ただ、中途半端なモノだけは認めちゃいけないよ。


純心はどこまでも潔白で。

物知らぬ少女はただ無自覚に真理に辿り着いた。


――なら歪みを抱えたモノわたしはきっと認めちゃいけないモノ異端者なのだろう。



*幻影回顧録『半人半鬼』より

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