青い翼
Whitestar
第1話 - また行きたい!
目が覚めたばかりのボナは、頭がずき痛むので起きられませんでした。
「 お母さん。」
キッチンの方からガタという音はしますが、お母さんからは何の返事もありませんでした。
「お母さん、私頭が痛い。」
喉までかれているのか、なかなか声が出ない声をやっと整え、もう一度お母さんを呼ぶボナ。
それからお母さんが来ました。
「ボナ、早く起きなきゃ。」
9歳のボナは会社に勤めている母親と二人きりで暮らしています。
お母さんは時々こんなことを言います。
「毎朝忙しすぎて気が狂いそうだ。」
そんな時、ボナは一人でつぶやきます。
「おかしいな。寝て起きて布団も枕もきちんとしておいて、パジャマもきれいに畳んでおいて、スニーカーもきちんと脱いでおいて。あ!そうだね。 ランドセルもちゃんと持って行って…。」
一つ二つ挙げてみると10本の指も足りないようなのに、どうして思い出せないのかボナはもどかしいばかりです。
「お母さん、私病気になったみたい。」
お母さんはまじまじとしたボナの目をのぞき込み、にっこりと笑いました。
「あなた、学校行きたくないからなんだねか? これが仮病を使うこともできるし。 ちょっと見てみようかな。」
ボナの額はとても熱かったです。
そういえば、ボナのかわいい声はどこに行って、なんでかすれた声まで。
お母さんの表情はすぐに別人のように変わりました。
「 大変だね。夏風邪をひいた。 そうだね、雨が降っているのに外に出て遊んではいけないって言ったじゃない。」
お母さんは急いで奥の間に走って行き、引き出しの片側をいつも占めている非常救急箱の中から薬を取り出してきました。
几帳面な性格のボナは目をつぶってベッドに横になって今日すべきことをじっくり考えてみることにしました。
「お母さんが今日は早く来るって言ったよね。 早く午後になってほしい。 薬を飲んだからもう少しでよくなるよね? お母さんが先生に電話をしたのかな? 友達は何を学んでいるのかしら? ええ、風邪というやつは世の中からすっかりなくなってしまったらいいな。 お腹が空いたんだけど、どうしよう? 食卓には私の好きなソーセージと卵焼きがあるはずだけど。 そして、また……。」
「え?ここは一体どこなんだろう?」
ボナは果てしなく広がる真っ白な雲畑に立っていました。
数え切れないほど多くの雲は見た目がまちまちでした。
羊のような雲、すらりとしたノロのような雲、頭をもたげたたくましい馬のような雲、かわいい子犬に似た雲、マツタケの形をした雲……。
「あれはまるで飛行機みたいだね。」
ボナは雲飛行機の上に少し登りました。
ボナが乗るやいなや雲飛行機はふわふわと浮かんで、前にぷかぷか飛んでいきました。
ボナは両足を伸ばして座り、雲の飛行機を刺してみました。
「わあ、不思議だね。 色が白くふわふわしていて、本当に気持ちいい。」
雲飛行機はブドウのつるを曲がって作った緑色の橋の前で止まりました。
そこには長い矢印一つが橋の向こう側に向かって立っていました。
「雲飛行機よ、ありがとう。」
ボナは一歩一歩慎重に橋を渡りました。
橋の向こう側の小さな森は、生き生きとした青い葉っぱを持った木々や名前の分からないきれいな花がいっぱい咲いているとても美しい場所でした。
突然草むらからガサガサという音がして、白いものが首をくるっと回してボナを見つめ、にやりと笑いました。
「お前は誰だ?」
「私はボナだよ。ところで、あなたはウサギだね!」
「うん。私は玉兎だよ。」
「え?玉兎? 月で臼をつく玉兎のこと?」
「あれ、どうして私を知っているの?」
「それは簡単だよ。 私の住んでいるところからは君が見えるんだ。」
「......?」
「あなたはここで何をしているの? 臼はつかないの?」
ボナは臼杵が差し込まれている小さな臼を指差しながら尋ねました。
「今は昼だからやることがなくて遊んでるんだ。」
「そうなんだ。こいつ、玉兎よ、ここは人が住んでいないところか? 私は人々に会いたい。」
玉兎は無口でした。
しかし、両耳はぴんと両目はきょろきょろと首はかしげていて、とても忙しそうでボナは戸惑わせました。
‘ ウサギが話したり、本当に変だよ。 そして、あの態度はまた何だ。’
「ボナ、私は決めたよ。 人々が住んでいる村まで連れて行ってあげるよ。」
「じゃあ今考え中だったの?」
ボナはとてもおかしかったですが、玉兎に感謝して笑いをこらえました。
町は森からそれほど遠くありませんでした。
「あそこが村だよ。 ボナ、私は森に戻らなければならない。」
玉兎が言いました。
「玉兎よ、ありがとう。」
玉兎はぴょんぴょん跳ねて来た道に戻りました。
村に入ったボナの目が丸くなりました。
塀も垣根もなく、集まっている家々の形がとても面白かったからです。
丸、三角、四角··· しかも星型の家まであったからです。
色とりどりの屋根も日差しをたっぷりと抱え、キラキラと輝いていました。
‘ こんなにきれいな村に人が一人も見えないね。’
澄んだ青空によく似合う美しい村はとても静かでした。
誰かが肩をポンとたたいたせいで、ボナはびっくりして叫びそうになりました。
ある男の子がボナをじっと見つめ、にっこりと笑いました。
「 お前は誰なの? 」
「私はボナだよ。ところで、あなたは誰?」
「私は虹の村に住んでいるアオだよ。」
「え?虹の村? じゃ、ここが……。」
ボナはその時になってようやく屋根の色がなんとなく見慣れないものではなかったことに気づきました。
「赤、橙色、黄色、緑、青、藍色、紫が七つの虹色じゃないか。 私も知っているよ。」
ボナは七色の虹色を知っている自分がとても誇らしかったです。
「あれ、どうして虹を知っているの?」
「それは簡単だよ。 私の住んでいるところでは虹を見ることができるんだ。」
「お前、うちの村に初めて来るの?」
「 うん。」
「じゃ、うちに遊びに行く?」
「本当に私が行ってもいいの?」
「もちろん。」
親切なアオはボナの手を握って村の中に入りました。
村の道には丸い形をした大小の石が並んでいて、道の両側には背が低く花びらも小さな花が色とりどりに並んでいました。
何がそんなに恥ずかしいのか、他の花の後ろにそっと隠れている黄色い花が目立ちました。
ボナはうつむいてその花をのぞき込みました。
「アオ、この花の名前は何?」
「空の国の希望の花だよ。 今は背が一番低いけど、後には背が一番高くなる花なんだ。」
「空の国?虹の村って言ったじゃん。」
ボナは雲飛行機から降りて橋を渡って森で玉兎に会ったこと、そして玉兎が村の入り口まで連れて行ってくれたことをアオに話しました。
「ここは空の国にある虹の村だよ。 ボナ、あなたはきっといい子だろう。」
「それを君がどうやって知るの? 私もよく分からないのに......。」
ボナは照れくさそうに思って口を突き出しました。
「玉兎がここまで連れて行ってくれたのを見れば分かる。」
「 ......。 」
「玉兎が両耳はぴんと、両目はきょろきょろする姿を見たよね? あることを決めなければならない時にする癖だよ。」
「ああ!それで『私は決めた』と言ったんだ。」
「玉兎は善良な人の心を正確に当てるんだ。」
「楽しい!じゃあ、私が空の国に来たんだね。 わあ!本当に楽しい!」
ぴょんぴょん跳ねながら手拍子もパチパチ打ちました。
「妖精だ!」
ボナが急に大声を出しました。
「妖精じゃなくて虹村の子供たちが雲に乗って遊んでるんだ。」
アオは大したことでもないのにという顔で平然と言いました。
「私もたまに雲に乗って遊んでるよ。 ある時は昼寝もして横になって本も読んで。」
綿菓子のような雲の上で子供たちがボナに手を振ると、ボナは両腕をさっと上げて力いっぱい手を振ってくれました。
アオは青い屋根の家に入りました。
丸い壁にはきれいな絵が貼ってあり、きれいな色の家具や可愛らしい装飾品が見事に整えられていました。
「アオ、なんで電灯がないの? 電気をつけるなどね。」
「あ、それはいらない。 昼はお日様が夜はお月様とお星様が虹村を明るく照らしてくれるの。 みんな私たちの友達だよ。」
「まるで童話の中に出てくる話のようだ。 ところで、虹の村には大人がいないの?」
「仕事に行かれた。 今日は野菜と果物を摘む日なんだよ。」
「いつ帰ってくるの?」
「お日様が西に傾き始めたら。」
思わずポケットに手を入れたボナは折り紙が一束入っているのを見つけました。
「ボナ,それは虹色の紙じゃないか。」
「うん、私の住んでいるところでは折り紙と呼ぶよ。」
折り紙がとても上手なボナは、その場で船も畳んで飛行機も畳んでボールも畳んで服も畳んで帽子も折りました。
そして、すらりとした鶴をかっこよく折ってアオをびっくりさせました。
ボナは折り紙したものを全部アオにあげました。
アオは好きで頭が天井に届くほど飛び跳ねていました。
虹村の子供たちは家の外に出て両親を待っていました。
村の大人たちを乗せた広々として長いわた雲が徐々に近づいてきました。
「あれはまるで汽車みたいだね。」
ボナはすべてのことが新しく不思議で心が限りなく楽しかったです。
女性の大人たちは野菜がいっぱい入った小さなかごを手に、男性の大人たちは果物がたくさん入った大きなかごを背中に担いで雲汽車から降りました。
ボナを見た大人たちは一様に微笑みました。
「子供のお客さんがうちの村に来たんだ。」
アオのお母さんは食卓の上に食べ物をいっぱい用意しておきました。
いろんな果物、いろんな野菜料理、果物で作ったジュースとパン。
「わあー!ここも全部虹色だね。」
おいしい食べ物と優しいアオのお母さん。
忘れていたお母さんの顔が浮かんで、ボナは家に帰りたいと思いました。
「お母さんのところに帰りたいのですが、どうやって行けばいいかわかりません。」
アオはボナと別れるのが寂しいのか不機嫌そうな顔で言いました。
「ボナ、もう少し遊んで行け。 虹の村には面白いことがたくさんある。 私たちの村は一年中野菜や果物が開かれるが、たまに子供たちが行って摘むこともでき、また夕立が過ぎた後に私たちの村の屋根が日光に反射して空中に大きな虹の橋を描く光景も見られる。 雲に乗って速く走ったり虹の橋で滑ったり、そして…。」
「虹は私たちが住んでいるところでも見られる。」
「私に折り紙も教えてくれて···。」
アオのお母さんがアオを諭しました。
「アオ、ボナは家に帰らなければならないんだ。 いつまでもここにいるわけにはいかないじゃん。また来ればいいんだよ。」
ボナはびっくりしました。
「え?どうやってまた来るんですか?」
アオのお母さんはボナの両手を優しく撫でて、一つ一つ言いました。
「ボナがいい子だから虹の村に来られたんだって。 ボナがこの後大人になっても今のように澄んできれいな心を持っていれば必ず来ることができる。 純粋な心を失わないと約束できるだろうか? 」
「はい、約束します。」
ボナはたくましく答えました。
アオのお母さんはざるから赤いきれいな果物を二つ取り出してきました。
「この果物は空の国の桃だよ。 家に帰ったらお母さんと一つずつ食べなさい。 アオに折り紙をプレゼントしたから、私もプレゼントしないと。」
「ありがとうございます。」
ボナは両手に空の国の桃を一つずつ受け取り、ぺこりと挨拶をしました。
「アオ、村の東側の雲階段までボナを連れて行きなさい。 ボナ、その階段を下りて行くと家に帰れるよ。」
雲の階段を探して東の道を歩いている間、アオは全く黙っていました。
‘ アオにはすまないが、私は必ず家に帰る。’
ボナも口をつぐんだまま、とぼとぼと歩いていきました。
雲の階段に着いたとき、丸いお月様は虹の村を銀色に包み込んでいて、大きなお星様、小さなお星様、赤ちゃんお星様もきらきら輝いていました。
玉兎はもう月で臼をついていました。
「アオ、元気でね。 この次に君を必ず訪ねてくるよ。」
「ボナ、さようなら。 必ず来ないと。」
アオと別れたボナは曲がりくねって伸びている雲の階段をそっと下りてきました。
‘ うん?ここはなんでこんなに明るいの? ’
天井にぶら下がっているチューリップの花形の電灯には明かりがついていませんでした。
ボナはベッドに横になってじっくり考えました。
‘ 雲飛行機、玉兎、アオ、虹村、希望の花、雲汽車。 確かに雲の階段から降りてきたのに。 ああ、私が夢を見たみたい。 夢でもいいよ。 チウが私にチビだとからかった。私も空の国の希望の花のように背が高くなるよ。 ’
ボナはベッドから飛び起きて伸びました。
ベッドサイドのクマのテーブルの上に、数日前に折って置いた鶴がそびえ立っていました。
折り紙の鶴を見ると、親切なアオがふと思い浮かびました。
かちゃり 。
鍵の回る音、そっとドアが開く音、静かな足音が聞こえました。
「 まま! 」
ボナは急いで母親のところに駆けつけ、抱きしめました。
「あら!ボナ、熱が下がったね。 声もいいし。」
「お母さん、心配しないで。 きれいに治った。 ところで、これは何?」
ボナは食卓の上に置かれたビニール袋の外に出ている赤い色のきれいな果物を一つ出しました。
「どこかで見たような気がするけど。」
「それはネクタリンだよ。空の国の桃という意味だよ。」
「え?お母さん、私これ食べる。 夢の中でアオのお母さんが私にくれたのと同じだよ。」
ボナはネクタリンの桃を一口ぱくりとかじって食べました。
「あら!ボナ、洗ってもいないのに。 急いでいるとは。」
ボナはお母さんに夢の中で見た空の国の虹村の話をささやかに聞かせてくれました。
「お母さん!私また行きたい!」
開いた窓の間から家をのぞいていたお日様が柔らかい黄金色の手でボナの頭を優しく撫でてくれました。
-おしまい-
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