ダストボックスの消失
蒼田
ゴミ箱ボイコット
――世界からゴミ箱が消えた。
約三年前突如として世界からゴミ箱が消えた。
種類は問わない。
箱の中でもゴミ箱に分類されるものは全て消えてしまったのだ。
それにより社会は混乱した。
再度生産を試みるも作った
多くの学者や企業がこの問題に取り組んだが、解明できずわからず仕舞い。
原因もわからず対処もできず。
結局「神の悪戯」という現代らしからぬ結論に至ったのであった。
コンビニを見ると一人の男性が出て来る。
スーツを着た彼は手におにぎりを持っていた。しかし手に持つおにぎりはナイロン袋に覆われた、ひと昔に見慣れたものではない。彼のおにぎりは、江戸時代などで見られたような竹を繊維にして作られた包みにつつまれている。
この世からゴミ箱が消えた今、世界に異臭が漂っている。
けれど人は考えるもので、出来るだけゴミを出さないような工夫が考え出されている。
ゴミの中でも生ごみは厄介だ。放置すれば異臭を放ちハエがたかる。下手をするとそれが元で疫病が蔓延しかねない。
よって大規模工場で一斉に食料を作り、出た生ごみを生分解し、直接たい肥として再利用される形をとるようになった。
技術的側面だけではない。
法律も変わりゴミのポイ捨てが見つかれば、百万円以下もしくは懲役が科されるほどの犯罪となった。
が疫病を未然に防ぐためとはいえ法律により強く締め付けられたことにより、国民のフラストレーションを溜める結果となった。
法律だけではない。
新規技術開発の為の増税に加え度重なる汚職事件。
少し町を歩けばデモ行進が見え、時には武装した人がみられる。
二十一世紀の日本ではありえなかった光景である。
――世界からゴミ箱が消えた。
いつも当然のようにあった物がたった一つ無くなった。
その概念が、世界から否定された。
人々はゴミ箱が神に見放されたと考えるが、神が見放したのは人類の方かもしれない。
人々が混乱し争っている中――、
また一つ概念が消えていく。
ダストボックスの消失 蒼田 @souda0011
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます