箱の呪い

ろくろわ

箱に呪われる

 世界中には様々な呪術や呪物がある。

 真偽はさておき、日本にもやはり同様に『持ち主を不幸にする』や『良からぬ事が起きる』等、所謂曰く付きの物も存在する。


 この話はそう言った類いの話ではない。


 私達がかけられている『箱の呪い』の話だ。


 そもそも私達は箱に呪われている事に気が付ける人は殆どいません。所が今回、とあるサイトで『箱』に関するお題を元に話を創作する企画が出た事により箱の呪いに気が付くことが出来たのだ。


『箱の呪い』


 それは何か。

 お題が出たとき、きっと私達の多くは無意識に箱のイメージを『四角い形の蓋がついているもの。若しくは蓋と一体型のものでがある。を入れられる物』として居なかったでしょうか。

 冷静に考えると箱には帽子を入れるような円柱の物やお洒落なお菓子をいれる星形やハートの物。もっとある筈だ。

 なのに無意識に『箱とはこう言うものだ』という意識の元に考えだし、そこから創作者たちの個性により箱の概念を変えた様々な話へと昇華されていく。


 ここでもう一度『箱』について考えてみる。

 四角い形の物が箱なのか?

 いやそうだとは言いきれない。何故なら四角い缶で出来た入れ物を私達は『箱』と呼ばずに『缶』と呼ぶことが多いはずだ。

 ではプラスチックなら?

 確かに『箱』と呼ばれる事もあるが『ケース』と言われる事が多いのではないのだろうか?

 なら『箱』は紙や木で出来ていることが多いのではないだろうか?

 次に『箱』にはがある。或いはを入れるものとして考えているのではないだろうか。

 投票箱。抽選箱。賽銭箱。ゴミ箱。道具箱。びっくり箱。貯金箱。等々。

 確かに『箱』とつくものには中身があったり、中には入れる容器としての意味がありそうだ。

 では中身がなくなったら、それは箱ではなくなるのか?答えは否である。


箱』


 中身がなくても箱として存在しているのだ。


 私達は誰に教えられたわけでもないのに『箱』としての概念を無自覚に自覚し、そして共通の認識として捉える事が出来ているのだ。だからこそ『箱』のお題に対して読んでいてイメージができるのだ。『箱』がたくさんあるにも関わらずだ。


 有名な箱に『パンドラの箱』がある。

 開けてはいけない箱で、開くことにより厄災が飛び出し、箱の底には一つの希望が残っているというあの箱だ。

 誰も見たことの無いはずの『箱』なのに恐らく私達のイメージは同じだろう。


『パンドラの箱はである』と。


 もしかするとパンドラの箱の奥には希望ではなく、呪いが込められていたのかもしれない。


『箱』とはこう言うものの事を箱と言う。だから厄災が飛び出す『パンドラの箱』を見つけても開かないように、と。


 そう考えると私達はのだ。


 いつから私達はそれを『箱』と呼んでいたのだろうか?そして何をもって『箱』と呼んでいるのだろうか?

 それは呪いをかけた『箱』のみぞ、知ることなのだろう。



「ちょっとそこの箱、取って」


 今日も私達は何も考えずに使ってしまうのだ。

 そこに缶と紙で出来た同じような四角い蓋付きの物があったとしても。




 了

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