積み上がる箱
霜月かつろう
積み上がる箱
空っぽになったティッシュ箱の山を見て自分の症状のひどさに頭を抱えたくなる。
昨日は暖かったしなぁ。
花粉症を発症がしたのはいつかなんて覚えていない。気がついあたら鼻はむずむずするし、ティッシュを鼻に押して受けていた。あまりに子どものころなので当然みんなもおなじ時期があるのだと思っていた。
それが花粉症だとしったのは大人になってからだ。
それも年々ひどくなっている気がするので、空っぽになったティッシュ箱を積み上げてみたら自分でも目を疑うほどに積み上がっている。
当然のことだが、市販の薬は飲み続けている。病院で詳しい検査をしたことはないが、いったところですぐに治すことができるわけでもないので足を運ぶのをためらっているのだ。
で、結局。こうやってティッシュを消費し続けることしかできない。ゴミ箱の中もかんだあとのゴミで溢れそうになっている。
これが鼻だけならいいのに、目からも涙が出るし、頭も痛くなり、歯茎もじんじんしてくる。もう熱がでてても驚きやしない。まったくもって風邪の症状と何も変わらない。
ほんと勘弁してほしいよ。今日中に終わらせなきゃいけない作業もあるというのに。ちっとも症状は収まる気配を見せない。
しかたなくパソコンの前に座ってキーボードに手を置くがすぐさまティッシュ箱に手が伸びる。そして積み上がる箱。
この箱が自分の中からは触れだす水分を吸い込んでくれたのだ。その犠牲には感謝しなくてはならない。だが、だからといってどうにか成るわけでもない現状に頭を抱える。
いくら犠牲を払ったところで何かが軽くなるわけではないのだ。とってもとっても水分は顔面から抜けていき続ける。するとコップの水を飲み干す。するとまだで始める。この無限ループ。でもティッシュは無限ではない。
ふと、水分も無限ではないのかもしれない。自分の身体からすべての水分が抜け出ていってしまう可能性だってあるのか。そう思い始めると段々と怖くなってきた。
もしかしたらこのまま動けなくなってどうにもならなくなる未来が待っているのかもしれない。そう思わせるだけの力が積み上げられたティッシュ箱にはあった。
明日、少しでも元気になったら病院を調べてみよう。
そう決めた瞬間だった。
積み上がる箱 霜月かつろう @shimotuki_katuro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます