モニカとビックリ箱、なにが入っているのかな? ~幼女、伝説の大魔獣ケルベロスと出会う~

第1話

 モニカはとある王国の末の姫さまである。

 5歳の誕生日を迎える手前。

 蝶よ花よと、大事に大事にされている箱入り娘である。


「つまんないでち!」


 当のモニカはでも、お城のなかに閉じ込められているのに我慢できないご様子。

 メイドや家庭教師の隙を見ては逃げ出して、広いお城のなかを所狭しと駆け回るのである。

 それをでも、お城の人たちは微笑ましく見守っていた。


 モニカ姫が笑えば、みんなが笑顔。


 モニカはみんなのアイドルであった。


 そんなモニカでも、安全なお城のなかとはいえ、いくつかの場所へは行ってはいけない、入ってはいけないと、きつく止められている場所がある。


「あぶないから」


 との理由はもっともなのだが、好奇心旺盛、ダメといわれればなおさらやりたくなる、そんなおてんば幼女である。


「とつげきでつ!」


 いつも皆、そこは危なっかしくハラハラし通しである。


 臥せりがちな母后ははきさきの代わりにモニカの面倒をよく見ている姉のリジェルは困っていた。


「いい加減、あの子のお守りにも手を焼くしぃ。誰か代わりに見てくれる人いないもんかなあ。そうすれば私も楽出来るのに」


 姉姫リジェル。伝説級の魔力を秘めて大神官の地位にありながら、心はやはりモニカの姉、奔放なところもある。リジェルもまだ18歳。堅苦しい仕事からも、かわいいとはいえ手のかかる幼い妹の面倒からも、たまには解放されて、空飛ぶほうきをかっ飛ばし各地の秘湯へと胸ワクワクの旅にでも出たいと乙女の心は騒ぐのである。


「今日もおうちのなかをたんけんでつ。おとそ出してもらえないなら、おうちのなかくらい自由にさせてほしいのでつ」


 勉強嫌いのモニカである。

 みんなに守られているからこその自由も分かっているのかいないのか。周りの心配などどこ吹く風。今日も元気に、勉強部屋から脱走である。

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