じゃすてぃすたーず☆彡

かーいー

プロローグ「宝の詰まった部屋」

「ようこそ、宝の詰まった部屋へ」


 見渡す限り装飾が派手な衣装がマネキンに着て飾られ、部屋に合わないくらい大きな収納タンスの中にもまだ収まりきらない衣装の数々が眠っている。


 マネキンに着せられている衣装はまるでプロが作ったかのような出来で、タンスの中に入っているのは素人が作ったような雑な出来。


 それらの衣装は素人が一から趣味として作り続けた努力の結晶で、十年間の成長過程が分かり、プロ顔負けの衣装を作れるのも頷ける。


「へぇ…」


 従姉妹の二人に案内されたこの"叔父さんの部屋"、私の祖父母の家の二階、お父さんの隣の部屋。


 この部屋には常に鍵がかかっていて、その鍵の所有者は祖父母、父、そして何故か従姉妹で計三つの鍵を五人が共有している。


 今まで簡単に入られなかった部屋だ、でも今日この日従姉妹に呼び出されてようやく叔父さんの部屋に入ることができた。


 私が微妙な反応を見せると、従姉妹の姉の方が残念そうな顔をこちらに向ける。


「なんでそんなに興味なさげなの!!」


 大学デビューならぬ高校デビューしたのか一週間前までは黒髪だったのに突然派手な金髪になったのが衝撃的すぎて、この部屋にはあまり驚けない。


「興味ないわけじゃないよ、でもそら姉が金髪になったのがインパクト強くて」


「それも今日のためなんだよね、姉さん」


 中性寄りのショートカットの彼女"海美"は長い髪を下の方で縛った髪型のウィッグをいつのまにか被り話に参加してきた。


 よくみると服も叔父作のド派手な装飾…他と比べてまだ落ち着いているがやはりまだ派手さのある衣装に着替えていた。


「まさか…」


 海美のコスプレ、どこかで見たような感じがする衣装。まさか私もこのコスプレさせられるわけないよね?


「まさかって、そんな嫌な顔しないでよ!昔好きだったじゃん、ジャスティスターズ!」


 今日初めて金髪姿を見たのにこうしてギャルクサイウィンクを見ていると本当にギャルに見える、というか金髪めっちゃ似合ってる。


「いやもう見てないし!」


 どこかで見たような気がするのは当たり前だ、昔叔父さんが生きている時代はよく見ていたし私も好きだった。


 でも中学生にもなるとそんな女児向けのヒーローアニメなんて見ないのが当たり前だと私は思う、小学六年生の海美ならまだしもそら姉は高校一年生で見た目はギャルなんだから『ジャスティスターズ』は卒業しようよとか思わないのだろうか。


 ちなみに海美がコスプレしているキャラクターはJSジャスティスターズシリーズの第二作目、JS2から登場する旅の戦士だ。


 ジャスティスターズはシリーズもので年一でキャラクターが変わり名称もJSと略され数字が足されていき今やJS20が放送されている。


「でも初代なら知ってるでしょ!付き合ってよ!!」


 海美がコスプレしているキャラクターは旅の戦士ジャーニー、初代JSの二人の力によって戦う力を得た戦士である。


 そら姉は金髪にしたことからおそらく初代JSの太陽の戦士サンライズのコスプレするつもりなのだろう。まったく今日のために髪を染めたとしたら呆れて何も言えない。


 サンライズの衣装は露出度が高く、ヘソ出し、肩出し、腿出しの女児向けアニメにしては際どい、そんなものを普通に着られるなんて流石ギャルどころかもはやギャルが板についてる感じがする。


 つまり私がコスプレさせられるのはサンライズの相方風の戦士ウェイドとなる、残念ながらウェイドも露出度が高くサンライズと同じところが露出しているのに加えて背中が円状に相手おり、そこには数字の四が反転したような記号、方位記号が描かれている。


「いや!いや!あんな露出度高いコスプレしたくないよ!」


 するなら露出が全くないジャーニーの方がまだ良い、海美がずるい。やけに着替えが早いと思ったのだけれどそういうことか。


「ごめね、愛梨ちゃん。僕は小学生だからあんな露出度が高いのは着られないんだよ」


 いや私もつい最近まで小学生だったんだけど…


 小学生にしては身長一六〇センチを超え私より身長が高いし大人っぽい体付きしてる海美、ジャーニーは身長低い方だし私の方が似合うはずだ。


 まあ仕方ない、そら姉は諦めが悪いし一回くらい付き合ってあげようか。じゃないと家に帰してもらえなさそうだし。それに実はコスプレに興味があっりもするし、でもウェイドかぁ…


「分かったよ…今回だけね」


「やった!愛ちゃんありがとう!」


「ちょ…抱き付かないでよ」


 落ち着きのないそら姉、逆に落ち着きのある海美、いったいどちらが姉か怪しいところである。


「はぁ…コスプレもやっしーに見せたかったなぁ」


 もやっしーとはそら姉が考えた叔父さんのあだ名で、叔父さんがひょろガリで頼りない顔をしているからこういうあだ名となった。非常に失礼なあだ名だと私は思うが叔父さんは気にしていなかったため良いのだろう。


「いや逆に叔父さんがいなくて良かったよ」


 ひょろガリで身長もあまり高くなく、容姿もお父さんと比べて優れていない。でも頼り甲斐があり、優しい叔父さんにそら姉がよく懐いていた記憶も残っている。

 

 私はどうだっただろうか?まったく記憶にない。


 まあ、懐いてはいたんだろうな。

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