飛べ、飛べ
スプライシング、ラーマナ共に基礎的なスペックには変わりない。故に、搭乗した感覚は普段慣れた物と同じものだった。
しかし、スプライシングは一対の増設スラスターのおかげで速度は少し上がっており、ラーマナに関しても内部パーツの見直しやアーマードブラストパージ時状態の性能を改めて改良したことで、多少全体的な性能が上がっている。
体感でしか感じられない程度の数値かもしれないが、それでも二人にとってはその性能の向上がかなり大きく感じられる。
「流石ティファだな。いい仕事してくれる」
『いい仕事しすぎな気がするけどね……』
サラはコクピットでそう呟きながらラーマナの盾とスプライシングの増設スラスターに目を向けた。
サラ的にこの装備は既存のネメシスを超えるどころか、サラの頭では到底理解できないような代物だった。
理論は勿論、それがどうしてそういう事ができるのかが理解できないほどには。
ある意味ではV.O.O.S.Tよりも遥かにヤバい代物だろう。
多分サラもこんなものを相手に使われたら数秒は困惑して足を止める自信がある。
そしてトウマの方も、それには同感だった。
「いや、まぁ……うん……俺もまさかコレをリアルで見る事になるとは思わなかったな……」
『見たことあるの?』
「アニメで」
『アニメで……』
端的に現実に存在している事があり得ないとトウマは口にした。
まぁ、それぐらいにはこの武装は割とあり得ない尽くしの武装なのだ。
一見すればただの増設スラスターと盾に取り付けた増加装甲なのに。
2人は嬉しいものの、技術的には十分にブレイクスルーなそれに何となく素直に喜べない。
ティファに逆らえないのはそもそもだが、もしも敵対しようものならティファさんはこういう武装を一月かからず作ってくると思うと。
もう本当にティファさんには逆らえない。
「いつかティファなら人工物を砂にするナノマシンとか対消滅エンジンとか作りそうな気がする……」
『やめてよ……本当に作りそうじゃない……というか前者は結構具体的ね』
「アニメの設定」
『アニメ……』
お髭の白い人形様を再現できたらこの世界終わりである。
そんなつまらない事を話しながら、2人は真っすぐ敵の巣の場所へ。
事前に無人探査機で見つけた巣への入り口を確認すると、その周辺には既に100を超えていそうな数の原生生物が屯っていた。
どうやら無人探査機で警戒をさせてしまっていたらしい。
「うーわ奴さん達屯ってギッチギチ音鳴らしてるよ」
『きーもーいー』
「我慢しなさいお嬢様。ほら、お仕事の時間だ」
『あのさぁ、こちとら女の子よ? 害虫退治は男の仕事でしょうが』
「俺は男女平等を心掛けておりますので」
そう言いながらトウマはS.I.V.A.Rを原生生物に向ける。そしてサラもそれに倣い、S.I.V.A.Rを原生生物に向ける。
その瞬間、原生生物は敵意を感じ取ったのか、空へと舞い上がり始めた。
S.I.V.A.Rの弾数は機体のジェネレーターから直接送られてくるエネルギーによりビームセイバー同様弾数は無限に近い。
あまりにも撃ち過ぎるとエネルギーの再生産が完了するまで弾を撃つことはできないが、そこまで連射することはないので、基本的に弾は無限となる。
「さぁて、害虫駆除だ」
そしてたった2機のネメシスによる100体以上の原生生物の駆除が始まった。
原生生物は最初に針を飛ばして遠距離からの攻撃を狙うものの、2人はそれを回避。
即座にS.I.V.A.Rでの反撃を行い、直前上に並んでいた原生生物を数体纏めて葬り去る。
更に続けてS.I.V.A.Rを連射し、空中で密集している原生生物を次々と貫いていく。
しかし、原生生物もやられるだけではなく、即座に2人を囲うものの、2人はセイバーを片手に即座に包囲を離脱。
トウマは片手にS.I.V.A.R、片手にセイバーで次々と敵を撃ち抜き切り裂き、サラはアーマードブラストの右手の甲から展開したビームセイバーに加え、左手にもセイバーを持ち、二刀流の状態で次々と敵を切り裂いていく。
「しっかし、こうも雑に斬ったり撃ったりしてるともう虫退治は嫌になってくるな!」
『同感! もうさっさと帰ってお風呂入りたい!!』
「俺は寝たい!! 寝て忘れたい!!」
2人は次々と襲ってくる原生生物を落とし、数を減らしていく。
しかし、ある程度数が減ったところで原生生物は撤退を始めた。
巣の中へと戻っていくのだ。
「どうして逃げる……? 巣の中なら俺達を倒せるとでも?」
『誘ってるってわけ? 虫が? ンなまさか』
2人はその光景を見てS.I.V.A.Rで背中を撃つが、全ての敵を撃ち落とすことができず、何十匹かの原生生物には逃げられてしまう。
それを見送った2人はどうするか、と視線を交わすが、今回の依頼は巣の調査だ。
入らなければ始まらないという事で、2人は巣の中へと入っていくのであった。
巣の中は崖を削り取って作ったからか、最初は岩や土ばかり。
しかし、何かで固めてあるのか、崩落するような危険性は無いと言える状態だった。
その間にも原生生物はちらほらと居たが、その全ては見つけ次第S.I.V.A.Rによって撃ち抜かれたため、脅威にはなりえなかった。
だが、この先には確実に原生生物が所狭しと存在しているはずだ。
そんな場所を2人は前へ前へと進んでいくのだった。
****
あとがきになります。
コメントの方でこんな疑問が来てたので軽くお答えします。
Q:無理矢理テラフォーミングして大気組成変えれば蜂全滅するのになんでしないの?
A:まずテラフォーミングで大気組成を変えるのに数か月以上は時間がかかります。というかテラフォーミングにかかる時間の大半はこれです。
この大気組成を変えている間に相手が自発的に攻めてこないという確証も確約も何もないので、おいそれとそんな事はできません。
Q:じゃあ核を巣にぶち込んで派手にやろうや
A:最もな意見ですが、核はそう簡単に使えないようになっています。惑星に落とせるならキングズヴェーリ戦で用意→搬送まで3日もかかってないです。
Q:この時代の核なら放射能出ないくらいには技術レベルも上がってるしょ? だから規則なんかいらんやろ。派手にいこうや
A:バリバリ放射能出ます。核なんてぶちかます予定無かったのでそんな便利な核の設定作ってないと言えばそれまでですが、ウチの宇宙では出るんです。
ほら、ガンダムだってそんな感じじゃないですか。
Q:オーバースプライシングの元ネタis何
A:オーバーフラッグです。
Q:星丸ごと敵の巣かもしれないって、事前調査はどうしたんだよ事前調査は! お前(船団)ら事前調査をしっかりしてたんじゃねぇのかよクソッタレ!
A:裏設定だったんですけど、質問来たので答えますが、事前調査は結構手抜きでした。
表面をドローンで確認して生物居ないな、ヨシ!(現場猫)した挙句、なんかあったら軍に任せればいいからヨシ!(現場猫)でテラフォーミング開始しました。
その結果がこれだよ!
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