Go Fight
テラフォーミング船団は全長1km近い母艦を基盤として大小様々な船が集まって構成されている。
その構成された船一つだけでも積まれた物資や機材の数は桁違いであり、宙賊にとってはどれか一つでも拿捕できればしばらくは遊んで暮らせる金鉱脈に見える。
故に、護衛の数も鑑みずに突っ込んでくる馬鹿というのは減らないのである。
「入れ食いってのはこういう事か! サラ、お前が遊撃に出ろ! 俺が船を守る!」
『大丈夫なの!?』
「任せておけ! ゲームでの話になるが、少しは心得がある!」
『なら任せたわよ!』
テラフォーミング船団への合流から1日も経たないうちに宙賊はそれなりの規模で襲ってきた。
その数は船が5隻にネメシスが20機。なんとも気合が入った編成だ。
それをトウマ達は2人で迎撃する事になった。
何も戦力が無いわけではないが、単純に近くにいた傭兵がトウマ達だけであり、他の戦力は今も全力でスクランブルしているという話だ。
もう少しすればトウマも前に行ける、というのが今の状況だ。
『ほらほら、足止めたら死ぬわよ!!』
『クソッ、なんだあの白いネメシス! あんなに装甲を盛ってるのに速すぎる!!』
『ファウストシュラークを揃えてきたんだぞ!? なんでたった一機の見たこともないネメシスに押し負ける!?』
『だったらアレを迂回して……』
「そういう狡いのはお見通しなんだよ!!」
『こ、コイツも速っ……うわぁぁぁぁぁ!!?』
アーマードブラストを装備したラーマナの制圧力は凄まじく、ガトリングとレールガンとライフル、そこに加えて放たれるマイクロミサイルにより賊のネメシスは対抗できない。
偶々ラーマナを迂回できた機体が居たとしても、トウマという変態が瞬時に駆けつけ、セイバーやライフルによる一撃で船に取り付く前に爆散する。
2対20という、普通の傭兵ならば3度死んでも足りない程の圧倒的戦力差は、圧倒的な個による暴力により覆されている。
『そこの傭兵、援護に……来たんだが……』
『あー、要らないわよンなもん。ご苦労様』
「なんかすんませんね」
相手は船の中身が欲しいため、船を手荒に扱うような真似はできない。
何せ船の中は燃えやすい食料や、少しでも傷付けば価値がガタ落ちしてしまう貴重な機械だ。それに攻撃を当てれば、仲間から殺されてもおかしくないのが宙賊という生き物だ。
故に、相手が自棄にならない程度に調子に乗らせて、その隙を落とす。これがトウマとサラの戦い方だ。
『う、嘘だ! こっちは20機もネメシスを用意したんだぞ!? なんでたった2機のネメシスに押し負ける!?」
「そんなん、お前らの年貢の納め時が来ただけの話だ! あの世で今までの人生後悔しておきな!」
『畜生!! 畜生!!』
賊達が汚い花火となって宇宙に散っていく。
その光景は味方のネメシスからしても末恐ろしい物だ。
確かに、テラフォーミング船団に追従している何十もの傭兵のネメシスや軍のネメシスが戦えば最終的にはこうなるだろう。
だが、たった2機のネメシスが、たった一人の犠牲も無しに十数分程度で作り上げていい光景ではない。
「これで20機分のジャンク完成っと……おっと、逃げるなよそこの船。少しでも動けば宙の藻屑だ」
『あっ、やば。トウマ、あたし一回補給してくるから後ヨロシク。ミサイルとガトリング撃ち尽くしちゃった』
「はいはい。ったく、ポコジャカ撃ちやがってからに」
『アーマードブラストの弱点はそこね……弾代だけで凄いかかっちゃう』
『けど、大体は整備費差っ引いても儲けられるじゃない。そもそも、あたしだってこういう時じゃなきゃ撃たないし』
『それもそうね。ほら、戻ってきなさい。弾積んである予備のアーマードブラストで換装しなおすから』
ハイパードライブの作動にはどうしても時間がかかるし、外から見ればその兆候は分かりやすい。故に、宙賊達は詰みであった。
暫くしてからサラが戻ってきて、一隻程ハイパードライブで逃げようとした馬鹿が居たが、それはしっかりとラーマナABのレールガンで撃ち抜いて宣言通り宙の藻屑にしておいた。
そんなこんなで暫く待っていれば、テラフォーミング船団お付きの軍の船がやってきた。
『たった2機でこの数の賊を対処したのか……すまない、感謝する』
「あー、別に大丈夫ですんで、早くこいつらしょっ引いてください」
『それはもちろんだ。しかし、これほどまでの腕を持つ傭兵が居たとはな……どうだ、我が軍に来ないか? 好待遇が約束されるぞ?』
「傭兵っていう自由業が好きなんで遠慮しときます」
『あたしも家庭の事情でNG』
『まぁ、だろうな。それでは、奴らはこっちで処理しておく。引き続き、船団の護衛を頼む』
「うっす。お金貰えるなら文句言わずにやりますよ」
また軍からのスカウト的な物があったが、2人は適当にやり過ごした。軍も有能なネメシスパイロットはなるべく抱え込んでおきたいらしい。
まだ無事な4隻の船は軍に引き渡し、残ったネメシスの残骸と破壊した船の使えそうな部分はティファの船に運び込み、こちらのお小遣いに変えておくことにした。
残骸は格納庫の適当な所に。そして、愛機をハンガーに移したパイロットの2人は特に疲れた様子もなく、軽い調子でネメシスから降りてきた。
やはり賊程度では準備運動にもならないらしい。
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