裏道シェアハウス
細谷 幸叶
第1章 おいしい話はない
新しい出会い
桜の花びらがひらひらと舞い散る季節。
もうすぐ大学1年生になる篠田 真琴(しのだ
まこと)は新たな生活の始まりに胸を躍らせていた。
大きめのキャリーバックを片手に坂道を登る。
思ったより傾斜があり、荷物が鉛のように重く感じハァ、ハァと息が切れる。
そして少し細く入り組んだ裏道の角を何度か曲がっていくと中華風を意識しているのか、赤い提灯が吊り下げられた、古民家っぽい佇まいの家が見えてきた。
(えーっと"喫茶 幸福(シンフー)…ここかな…?よし!)
真琴は気を引き締めると、さっきの疲れが嘘のように軽い足どりで向かう。
店に近づくと扉の前に背が高く、涼し気な顔をした黒髪で、髪を一つに結んだお兄さんが立っていた。
(い、イケメンだ…。男の俺でも見惚れてしまいそうな人だ…。)
ぼーっとしている真琴に気がつくとお兄さんは笑顔で出迎えてくれた。
「こんにちは。あなたが今日から入居される方ですね。私はこの店、"喫茶 幸福" のオーナー兼大家の李 雨林 (リ・ユリン)と申します。どうぞよろしくお願いします」
爽やかに挨拶をしてくれた彼に真琴も簡単に自己紹介をする。
「篠田 真琴です。今日からお世話になります。これ、つまらないものですが地元のお菓子です。」
「これは…?カエルまんじゅう…初めて見ました。」
「えっ!カエルまんじゅう知らないんですか!あの有名な♪山かいて 山かいて 池ひとつ〜
てんてんおめめ にっこり笑って カエルまんじゅう出来上がり〜♪の歌知らないんですか!?」
「…ごめんなさい、知らないです。でも美味しそうですね。後でいただきます。」
「はい!ぜひ食べてみてください!」
何故か食い気味に話す真琴の姿に雨林は少し引いてしまったが、おそらくこの少年の好物なのだろう。
気を取り直して雨林は話し始めた。
「ではさっそくお部屋の方に案内しますね」
そう言われて真琴は雨林の後をついて行った
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