血筋
つき
1 ツイていない
私には、歳の離れた
お姉さんと言っても、私がもうアラフィフなので、そろそろ還暦を過ぎた頃だろうか。
子供の頃に会ったきりで、もう数十年も顔を見ていない、そのサヨコお姉さんに、息子のコウタがどうしても会いたい、と訴えてきた。
今年に入ってから、どうも私の一人息子はツイていない。
お気に入りのマグカップが、突然ぱっかりと真っ二つに割れたり。
長く使っていたキーホルダーが、いくつも取れて無くなってしまったり。
携帯の機種変を二度もしたのに、不良品で着信音が鳴らなかったり。
部室で(コウタは囲碁将棋部だ)足を捻挫してしまったり。
まだまだある。通学時に、散歩中のよその犬に、あわや咬まれそうになったり。
それだけではない。中学生の時から三年もお付き合いをしていた彼女と、先日別れてしまったのだ。
滅多に泣かないコウタが、こっそりと涙を流していた。
私は母として、見守る事しか出来ずに不甲斐なかった。
息子は、
「あまりにツイていない。絶対、何かある。親戚に占い師がいるなら、俺を観て欲しい」
と言うのである。
サヨコお姉さんは、私の父方の従姉妹なのだが、私の代からもう父方の親戚とは、あまり付き合いがないのだ。
私も子供の頃以来で、今更、占いは頼みずらい。
そもそも、こう言っては何だが
確かに、父の姉妹は二人共、揃って霊感が強い様だ。(サヨコお姉さんは、父の妹の子である。)
しかし、ちょっとばかり霊感が強いのと、それを商売に出来るかは、大きな隔たりがあると私は思っている。
占い師などと、詐欺ではないか?
転々と引越しをするのも、それが理由ではないのだろうか。
私の母が、夫の霊感一族を気味悪がっているので、父は表向きの親戚付き合いはやめたのだが、裏でこっそり姉妹たちと交流していた。
特に、サヨコお姉さんは、父からしたら可愛い姪である。仕事の帰りなど、偶にその占いの館に寄ることもあったようだ。
私とコウタは、春休みに実家のY市へ帰省した折に、思い切って父にお願いしてみた。
「ねえ、サヨコお姉さんは元気?
占い、あるでしょう。それ、コウタを観てもらえないかな。」
父はびっくりして、
「あー、やめとけ。あんなのハッタリだ。」
と答えたが、コウタも引かなかった。
「じぃじ、お願いだ。俺、じぃじ側の親戚に会った事が無いじゃないか。これを機会に、会ってみたいよ。」
父は暫く考えてから、
「あー、しょうがねえなぁ。妹に連絡してみるか。」
と渋々ながら承諾してくれた。
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