私?知りませんよ?あなたがやったのでは?

 カール・ジョストン様


 突然のお手紙申し訳ありません。私は帝都騎士団長の職にあるカストラーゼと申します

 この度の現地騎士団の失策、失態でジョストン伯爵にご迷惑をおかけしていて誠に申し訳ありません。

 今後、副団長が戦闘以外で問題を起こした際は統括をお願いしたく、心から、心からお頼み申し上げます。

 追加の文官を派遣したいのですが諸事情があってそれが出来ない状況にあります。帝国軍の協力を得て後方勤務体制を立て直したいのですが先の敗戦で要因がことごとく戦死してしまい、残った貴重な人材でなんとかやりくりしている状況です。

 帝国軍から派遣されると騎士団と帝国軍のバランス的に対外的な問題が生じるためどうか、どうか、ジョストン伯爵に文官の派遣をお願いしたく。

 給与はこちらから出しますので何卒お助けいただきたい。


 遠征部本部の人材を各中隊に派遣しなければ回らず、そうすれば本部が回らないほどの混乱があるのは予想より状況が悪く、帝国軍側も先の敗戦で将官、佐官達が大量に死亡して現地で後方補給を差配できる人間が消え去ったため、戦地でそれができる人材が不足しており騎士団を助けられる状況にありません。


 なにとぞ、一団員としてではなく帝国席次を持つ個人として、騎士団を助けてはいただけないでしょうか?

                           親愛なるカストラーゼ


「いやぁ、これはまずいですねぇ……任命書と一緒にちゃんと手紙が入ってますよ、まぁそれもそうか、任命書だけ届ければいいですもんね」

「これ……現地はどうなってるんでしょう」


 さぁ?カール様だしうまくやってるんじゃないですか?といったら無責任だって怒るから止めておきましょうか。

 カルマンくんもなんでこんな手紙に気が付かないんでしょうね、私が怒られてしまうんですが。なんで報告書の間に挟まってたんでしょう?


 まぁ、金鉱も鉄鉱脈見つけたし多分許されるでしょ。騎士団平常業務よりは優先ですよ、前の敗戦からずっと迷惑かけられっぱなしですからね。意趣返ししたとか思ってればいいでしょう。


 にしても困りましたねぇ……親書の開封は全権委任されてる以上は私に権利があるし返事も出せるといえば出せますが……。

 任命書を含むと無理ですね、とっととカール様に届けましょう。

 遅れた理由は……爆破工事でいいか……?あとは南部が盗賊崩れを山に放ったからでいいでしょう。安全を期すために山ごと爆破してたことにしましょう。


 この際に南部にヘイトを集中させますか、イール子爵、セング男爵、スジョア男爵の三家にお灸をすえましょう。

 まぁ事前に噂は流したしそろそろどれかは動くでしょう、金山は予想外でしたね……鉱山見つけた噂でイール子爵かスジョア男爵が食いつくと思いましたけど金鉱発見でセング男爵も食いつきそうです。あらためて噂を流し、最初の噂で吊る予定だった2家をまず処理して……ユーント伯爵は出張りますかね?頭が回るから面倒な3家を処分させて高みの見物と言ったところですかね。


 それにしてもカルマンくん疲れてますね、弟のせいかな?私に八つ当たりしないのは大したものですよ。うん、さすがは未来の内務大臣。


「さて、手紙を届けますか」

「1日で……?」


 できるわけないじゃないですか、何言ってるんですかね?冗談が下手なのは良くないですよ。ユーモアが大事なんですから。


「普通に届ければいいんですよ、カール様のサインが書類と一緒に。今更急いでも同じことです。悪いのは配達担当ですよ。親書じゃなければ直接届けたでしょうね。今頃、帝都でドルバーニュ領都に届けてないことを知って怒られてるんじゃないですかね、多分騎士団の方には届いているでしょうし」

「確かにそうですね、ですがここで17日も置いておいたことはどうするので?」

「ただの親書だったから後回しにしてもおかしくはないでしょうに、金鉱を見つけたのですよ、それは遅れますよ」

「…………そうですね」


 そうそう、金鉱と鉄鉱の発見時期をずらしてしまえばいいんですよ、まだ報告書書いてないんだし。これくらいやらないと仕事が回りませんよ。口に出さずともわかるのはさすが国土局長ですね、金鉱などは職分だしいくらでもごまかしが効くでしょう?


「では、帝都に人材要求を出して、その後視察に行ってきます」

「ええ、視察に行った後に提出した書類が帝都に届くでしょうね」

「ええ、先程まで視察に行ってました、出した後にまた視察に行っただけです」

「じゃあ、客人は私が応対しますか……まぁその間に来るとは思えませんが」

「時間を守らないのですか?」

「空いたら来てくれって呼びましたからね、多分来るでしょうけどいつ来るかまではわかりませんね、だから任せたかったんですけど」

「……」


 じっと見つめてどうしたんでしょうね?誰か知りたいんでしょうか?教えてあげませんよ?そのほうが面白いんですから。


「では、いってきますね。必要なものはそのまま置いておいてください、すぐ視察して戻ります」

「ええもちろん」


 もう行きましたか、早いですねぇ……。

 さて、とっとと仕事をしますか……併合前と併合後、カール様就任後で齟齬が大きい街や村は何処かな~。

 そういえばこれをやってる最中に報告書が来て……カルマン国土局長用で振りわけて……報告書を読んでる最中にしおり代わりに……。


 ま、いいでしょ!大事にはなりませんよ。

 カルマンくんがなんとかしてくれるでしょう。一応挟まってないか確認して……よし!カルマン宛だから混ぜ込んでおきましょう。

 この失敗もカルマンくんがしたことにしておきましょう。

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