そうなんですか……
不本意な騎士団員就任の翌日、ドント臨時秘書が丁重に、そりゃもう恋文かのごとく手紙を持ってくる。こりゃカルマンさんだろうな……。
えーと……弟が勝手に戦場の最前線に連れ出して申し訳ない。本当だよ!当時は最前線でもなかったけど。
敵の打つ手を読んだことはまことに素晴らしく、あれだけの騎士団と帝国軍を連れて兵不足で出陣した際は驚きましたがお体が無事だと知り安堵しています。
その後交戦状態に陥ったとのことも驚きました、安全圏であると適当なことを言った弟にはある程度ケジメをつけさせました。
ケジメ?指かな?騎士団として致命的だからそれはないか。
再編したばかりの領兵1万人相手に騎士団と帝国軍を苦しめた残存の7000人という名の6000人を撃退したことはお見事です。1000人盛った弟はちょっとした罰を与えました。報告書の方は正式な数を書いていたので躾です。
結局盛ったのか、ダメだろあの人……。報告書は真面目に書いたのか……。まぁするか……真面目な仕事はしなきゃそんな地位にはいないか。あの醜態でか?
カール様のお手紙で戦場は危うかったと聞きましたが機転を利かせて敵を通したあたりは騎士団からの報告でも称賛されていました。
そうか?被害が多かったが……特に何か言われた記憶がない。
戦死者2812人の弔慰金は私、カルマンが出します。弟は自主的にカール様に同額を出したいと言ったので出させます。出兵費用も私、カルマンが出します。弟も同額をどうしてもカール様に出したいそうです。
合わせて白金貨800枚を受け取ってください。口座に振り込ませていただきました。もし不足がある場合はトーチャから2倍の金額を引き出してください、それくらいは役に立たせます。食料などは引き続きこちらが補給するので銅貨1枚たりとも使わせません。この度は誠に申し訳ありませんでした。
じゃあ本来は400枚か、えーと弔慰金の相場はどうだろ。
「弔慰金はいかほど?」
「相場は金貨3枚です」
「……本当に?3枚?」
30万くらいだぞ?あれ?戦前の物価だったか?たしかに貴族の買い物しかしないもんな……。田舎だと大企業の月給より少し上だぞ?
「これ以上下げたらまずいですし……上げると戦死させるためにそこら中から人を送り込んで来られます。やる気があったら帝国軍に行きますし」
「ああ、そういうことね……」
世知辛いな……金貨8436枚、白金貨84枚と大金貨3枚金貨6枚?なかなかだな……。
「今回の出兵費用は本来なら?」
「弔慰金抜きで白金貨50枚ですかね。給金は出兵費用ではありませんし……」
「内訳は?後月給」
「白金貨18枚が食糧費で、残りが機材や武器鎧などの買付です。月給は銀貨5枚です」
「あぁ……そもそもないもんな……食糧費と月給安くはないか?」
「軍用の食料が安く供給されるように定められてるんです、差額は帝国が払うので。月給は上で上げたのと同じです。衣食住税金なし領兵減税ありなんで」
「そうか……食料の差額負担は前の敗戦からだったりするか?」
「よくおわかりで」
そうすると大分差額があるが……月給入れて白金貨100枚足して234枚か、迷惑料込みかな?維持費もあるからそれか?でもそれも負担してくれるみたいだしな……。
ま、続きでも読むか……。
えー……この度の出来事で領都制圧などの功績はありますがおそらく席次の変動まではいかない、もしくは書類で1つ2つみたいなことをすごくオブラートに包んでる。まぁ普通なら上がるだろと思うようなやつだしな。でもそれで上がったら金鉱のことが即座に明らかになるから伏せたいだろうな、前の席次上がったやつでも公爵家の財産放棄とか迂遠だったし。俺は上がらないほうがいいからOKです!
つきましては騎士団簡易叙任を行い、他の序列の人間より評価をつけるよう働きかけました。このメンバーの署名であれば簡易叙任で儀式を挙げなくても許されます。これで喧嘩を売る人間はいないでしょうし、売ってきたら弟に言ってください。明日には新聞の死亡人リストに載るでしょう。貴族として歩く時はリボンは必ずつけてください。偽物と疑った相手は誰であっても切り捨てても罪になりません。平民の庇護者たる皇帝陛下の騎士団を疑うことは平民であっても死刑になる案件です。
うわ、ここに来て急に権力者の地位を使うタイプのやつが来た!切り捨て御免みたいなやつだ!
もっとも平民であっても疑いませんし、平民や貴族が言ったとしたらその場にいる平民か貴族が殺すので問題ないと思います。もしもです、もしも。
年齢で舐められても殺して問題ありません。平民の守護者たる皇帝陛下の守護をする騎士団のリボンは絶対です。陛下の親身を守る親衛隊以外は平民を守ることが最優先なのでカール様は平民の庇護者にして守護者となりました。カール様に対する侮辱はすなわち平民に対する侮辱とも取れます。引き下がらずに戦ってください。
平民優先主義ってこういう感じでも来るんだ、うわぁ……やべぇよこれ……玉座をもって胸壁となすみたいな……?
弟をこれが騎士団か?と思ったことも多いでしょう、私もよく思います。ですが本来は騎士団を疑うことはできないのです。あれで実際帝都民の信頼は厚いのです。それ以外からはあまりありませんが。少なくとも武力に関しては信頼されてます。信用はされてないだけです。リボンを見せた、見える上で疑うことは侮辱行為になるので気をつけてください。
弟はつけ忘れるので別にいいです。騎士団からもこれが騎士団か疑われてます。騎士団の格好をしても疑われるので仕方ありません。
騎士団章とリボンを付けてる相手は疑わないことを徹底していただきたい。本来はまだ学ぶ必要はないのですが……団員になって知らないということはないのでお願いいたします。
なるほど、リボンがない状態で疑うことは別にいいのね、まぁ付けとけ、付けたら疑うなってことだ。わざわざ俺から喧嘩売ることもないしこれでいいだろう。
追伸 副団長付き参謀に任命されたのである程度融通は効くようになりました。弟に命令する権利も付けたので小うるさいことがあったら命令して止めていただいて結構です。弟はすこしアレなので、戦場以外ではある程度命令できる権利を団長と陛下から与えられています。
前任は辞任して帝国軍へ移籍したので権力は強化されました。といっても領内のこともあるので騎士団と何かをすることはないと思います。させません。
帰領を心からお待ちしております。書類の送付処理が早く大変助かっております。
弟思いでいいのかな?うん、ところどころ心配してるところも見えるんだよなぁ……こういうのに俺は弱いんだ。俺も兄貴に助けられたわけだしな。
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