金鉱攻略戦(終戦)

「再編がそろそろ終わるそうです、どうやら新中央軍に伝令したようで……」

「ああ、そう……向こうも慌ててるね。長かったような気がするよ……」

「なんとかなりましたね、あともう少し耐えれば……」


 意外となんとかなったな、新中央軍の防戦にはあっぱれだ。新左右翼が脇付いても微妙なのを見るとやっぱこの領軍は攻戦はあんま良くないな。防戦を磨こう、コンクリブロックや逆茂木ってこうしてみると意外と有効なんだな。ゲームだとあんま有効かわからんしな、あと現代戦だと塹壕とかいろいろあるけど鉄砲とかないもんな。なんでないんだろ?


「敵軍、後退!追撃します!」

「後退?いや、追撃はしなくていいぞ!これで勝ちきれないのに追撃でどうにかなるとは思えない!誰か主要な人物を討ち取ったのか!?」

「いいえ、騎士団が来るから撤退する可能性が高いかと!」

「俺達が騎士団の進路を蓋してるのに騎士団の移動が見えるのか!?」

「村に残った人間が伝令くらいしてるでしょう!逃がすわけには行きません!」


 逃がしていいんだよバカ!三方向から攻撃して敵は新中央軍にだけ攻撃を集中してるのに両翼の攻撃はまったく効いてないんだぞ!向こうはこちらみたいに軍を分けずにひとかたまりでぶつかってきてるんだぞ!弱いから無理だって言わせるな!士気が下がるだろうが!


 そういやこいつ領都攻略にやる気出してたな……断ろうとしてたのにできるとかいい始めやがって……そのせいでもここまで面倒なことになったんだぞ?わかってんのか?


「無用だ!ただの後退だぞ!敗走ではない!時間が稼げるからいいではないか!」

「しかし!功績が……」


 だからいらねぇよ!功績功績うるせぇな!


「いらん!」

「しかし戦死者に出す弔慰金が!」

「それも国土局長が保証する!弔慰金をわざわざ増やすようなことをするな!」

「え、国土局長が我々の出兵費用を!?」

「そうだ!だから追撃をやめて再編しろ!騎士団が来たら右に退くようにしろ、そのまま騎士団を通せ!」


 弔慰金のために活躍して弔慰金の金額を増やすとかアホみたいなことをするな!本当だったら俺が出すんだぞ!金を減らしたいとはいえ無駄な領軍といい無駄に使いたいわけではない!国土局長の名前出せば引くあたりやっぱ相当なもんだよ。


「では、追撃を辞めて再編します」

「うん、頼む」


 さて、これでどれだけ時間を潰せるか……。10分は潰したい。敵も数が減ってるし……どうする?


「敵兵は後どれくらいだ?」

「まだ3000人以上はいますね……3500?」

「1時間ちょっとで3000人近くまでは削れたか……ん?1時間で2500人も?」

「実際2000人近くは殺してますよ。残りは負傷で倒れてるか隙間から逃げ出すことに成功したのでしょう。実際脱出に成功したやつはちらほら見ましたしね」

「まぁそんなもんか、こちらは?」

「7000人、まぁ8000人はいないでしょうね……7500から7800?それくらいですかね」


 1:1と言いたいが5:3で戦って減った兵数はほぼ1:1?このざまでよく追撃しようとか言ったな……正気か?罠だったら負けて終わりだろ。


「敵兵、再編終了した模様」

「何分たった?」

「10分です、下がるのも再編も早いですね……事前に決めてたみたいですね」

「10分で再編が終わるとか悪夢だな……」

「このぬかるみだとまだかかると……敵兵こちらに向かってきます!」

「本陣のあるこっちか?」

「そうです!」

「右にどけ!」

「無理です!」

「じゃあど真ん中から左右に別れろ!」

「カール伯爵!中心にある本陣の我々はどっちに避けるのですか!」

「右でいい!ここより左は左にここを起点に別れろ!」


 破れかぶれで本陣攻撃か?なんで今さら?最初っからやれば……中央軍が本陣だと思ったのか、三方面攻撃でこれなら陣地からでてる左翼か右翼をぶち抜けると思うわな。運のないことだよ。


「指揮官の首を優先すると思うか?」

「……わかりません」

「その場合俺は死ぬな、敵の真ん前に5歳の子供。どう見ても貴族だしな」

「……」


 黙るなよ……不安になるじゃないか。


 新右翼軍が2つに別れはじめて敵を通すような動きをし始めた時、敵の足が早くなったような気がした。

 どっちだ?指揮官の首か?脱出か?視認した範囲ではがむしゃらにこちらをこじ開けようともしてる。流石にモーゼのごとく、さっと割れないから命令が届かないとこは奮戦したり逆に移動したりでグダグダだ。


 避けたとはいえ熱したナイフでバターを切るかのような状況は心臓に悪い、正面から構えてたらどっちにしろ抜かれてたんじゃないかなこれ。じわじわと突破される感じ、早く避けろと命令している

 あーあ、後方が蹴散らされてるな。軍の細分化をしたほうがいいのか?領軍って帝国軍と体系が違うんだっけ?向こうが選んだのが脱出でよかったよ。

 はいご苦労さん!


 我軍を突破した敵軍は騎士団の眼の前に飛び込んだ。いやぁ、このぬかるみは早いのかな?それとも思った以上に時間が経ってたか。まだ騎士団とは200mくらい距離があるけど左右どっちに逃げる?あーあ騎士団が突撃した……よし!押してる


「分かれた軍を統合しろ、ケツをたたけ!せめて蓋をすればいい!」

「やっております、少し混乱しています」

「では任せる」


 本来なら何もしなくてよかったのに、あー……困ったもんだ。


 10分もしないうちに敵軍は降伏をした。はい、俺の仕事は終わり。お疲れ様でした。

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