この世界はゲームかラノベの世界かもしれない

@masata1970

いきなり怒涛の展開

「……よって継承権を剥奪し、カールを継承1位とする。」


 なんてこった!気楽な次男として適当に男爵か子爵をもらって代官をやるか城に使えて法衣貴族でもやればいいと思っていたのに!

 何してくれてんだよ兄貴の実家は!ウェラー公爵家のドアホ!


「カール、以降は嫡男として励むんだぞ」

「はい!」

「皆もカールを支えてやってくれ、いささか数は減ったが空いた席にはすぐ新しく、そして信頼できるものが着く」


 兄弟仲は良かったのにどうしてこんなことに……。

 大掃除の時落ちていた手紙を父上に届けただけなのにこんなことになるとは……。

 歓喜の声を上げる寄子に手を振りながら義母の人望の無さにため息をつくしかない。


「それと今回の粛清でだいぶ貴族が減ったため貴族学院の門戸を開くことが決まった。支援金も出るので優秀な人材を入学させる」

「当家に優秀な孤児院出の娘がいます!」

「落ち着けムーンドック伯、5年後だ」


 平民を貴族学院に入学させるなんて思い切ったなー。明言してないけど平民だよな?皇家・貴族・平民以外の階級無いし。

 でも、いくらなんでも今回の事件に対して行動が早すぎないかな?

 反発もないみたいだし……。この手の世界って汚らわしい平民ごときが貴族学院に入学だとぉ!みたいな感じで騒いだりするもんなじゃないの?父上もムーンドック伯も他の寄子も随分嬉しそうだし……。


「それとカールの婚約者だが……」

「当家の娘はいかがでしょうか!側室でも構いません!」

「まぁ待て、ジェントル男爵の娘は可愛いのは確かだがな……。しばらく決めないこととする、粛清の余波があるから精査に時間がかかるしな。幸いなことにアレが手を回し続けて婚約を成立させないように立ち回っていたからな。少なくともそれで諦めるような家とは結ばんでもいいだろうよ、どうせ今回のように役に立たん」


 へー次男だから婚約がないのかと思ってたけど義母が手を回して潰してたんだな。

 なんでまたそんな警戒してたんだろ?実母は死んでるしその実家も途絶えたって聞いたけど。


「今回のウェラー公爵家の当家乗っ取りと帝国への謀反計画で冤罪でジョストン伯爵家を取り潰したことも側室のミミを毒殺していたことも明らかになった。賠償金代わりに旧公爵領が当家のものになり、ジョストン伯爵家の血を引くカールは後日行われるの論功行賞で10年早く伯爵位が与えられ、先程ジョストン伯爵家旧領を継承した。我々の完全勝利だ!さぁ祝おうではないか!」


 えっ!母上とその実家謀殺されてたの!?前世なかったらグレるタイプの事件だよそれ!10年早くって俺は途絶えたはずの伯爵位を継承する予定だったの!?現時点で領土継承して伯爵位は次回大々的な式典でやるってこと!?大盤振る舞い過ぎないか……。うーん……取り潰された家の伯爵位もらえる予定があるってことは冤罪だってわかってるようなもんだし、領地渡す可能性もあるって思うよね……。伯爵位をともかく領地もセットでついてきたらそりゃ俺を警戒するわな。俺は実母殺したこと気付いたら義母に報復くらいするだろうし。


「ハリスン侯爵万歳!」

「次期ハリスン侯爵万歳!」

「次期ジョストン伯爵万歳!」

「亡きミミ様に!」


 家宰のアランも泣いてるよ、母上慕われてたからなぁ……。生まれた頃には臥せってて顔もそんな見たことないうちに召されたから使用人や訪問した貴族や使いからしか聞いたことないんだよね。それよりオリバー兄貴はどうなるんだ?そっちのほうが気になるぞ。義母の目を盗んでよく遊んでくれたし、お菓子分けてくれたり、優しかったから死刑は流石に嫌だな……。義母の子とは思えない人格者だった。


「父上、兄上はどうなりますか?」

「どうしたい?」

「兄上”には”優しくしていただきましたので極刑だけは…なんとかなりませんか…?」

「そうか、いい子に育ったな。……母の仇と実家がされたように族滅すると思ったくらいなのだが」


 しないよ!人をなんだと思ってるんだ!いや5才児じゃ怒りにかまけてそれくらい言うかもしれないか。流石に関係ないオリバー兄貴は巻き込まないぞ、関係あったら話は変わるが。冤罪だと思われたっぽいのにジョストン族滅されたんだな……。


「オリバーはこの数年お前の暗殺を阻止するために動いていたことと公爵家のきな臭さに気がついてアレの手紙をこっそりちょろまかしておいてな、お前があの手紙を持ってきた翌日に数年間で把握できたアレと会った貴族の記録と盗んでおいた複数の手紙を調査報告と一緒に提出して母を捕らえウェラー公爵家を謀反人として潰すように進言してきた」

「では私が父上に提出した手紙も兄上が持ち出したものだったのですか?」

「いや、違うらしい。あれほど決定的な内容なら即座に提出して潰しにかかると言っていたからな、まぁ計画に関わっていて手紙を落としたことで諦めた可能性もあると思ったがあの調査報告は1日でかけるものでもないしな」

「……僭越ながら私が父上に提出した手紙には何が書かれていたんですか?」

「おお、難しい言葉を使うな!賢く育つのはいいことだ!皆!カールがオリバーの助命を願い出た!」


 やっぱり聞いちゃだめだったみたいだな。優しい弟として有耶無耶にされてしまった。オリバー兄貴も慕われていたから寄子たちも流石です!ありがとうございます!と感謝の嵐だ。やっぱ兄貴の反面教師だったのかな?もはや名前をも呼ばれぬ元侯爵夫人は。


「今回のことにオリバーは関わっておらずむしろ告発する側だったので公爵家と連座して極刑が下ることはなかった!だが、アレと公爵家の行ったカールの実母のミミ毒殺は連座が適用される!もしカールが連座で兄を処刑するよう主張したらカール暗殺を阻止していた功績を持ってオリバーの助命を願い出る必要があった……復讐権があるからだ!」

「父上、復讐権とはなんでしょうか?」

「古い法律だ、二親等で誰か殺された場合に殺した相手を証拠付きで特定し立証できれば族滅させることができる権利だ」

「……そのような法は危険なのでは?」

「そもそも普通は使えない権利だ、個人の行動の結果では行使できない。考えてみろ、乱心して誰かに斬りかかり殺害したらその阿呆のせいで人が家ごと消え去るのだぞ?家ぐるみの犯罪で殺害した場合に使える権利だ。大抵立証できん、公爵家からアレの手紙を押収した際に送られた薬でじわじわ毒殺したと経過報告付で書いてあったからこそ立証できた。他者の立証は復讐権を行使する義務が生じる、立証したのは被害にあった我々ではなく皇家だからな。こちらが証拠を掴んで処断するのであれば当事者だけ裁いて終わることもできるんだがな……」

「では父上も行使できるのでは?それに対象が一族内だとどのような判断になるのでしょうか」

「復讐権の最優先は親か子だ、つまりお前だよカール。対象が一族内の場合ハリスン侯爵家の”元”侯爵夫人が単独判断でミミを毒殺したのではなく、ウェラー公爵家の協力の下で”元”侯爵夫人が毒殺したので族滅範囲はウェラー公爵家だ。そもそも単独判断なら復讐権は行使できんしな、まぁ帝国への謀反未遂でウェラー公爵家は族滅が決まった、いや……されている最中だな。族滅の対象は関係していた家全てだが……大抵は今回のような謀反だから復讐権以前に族滅が決まっているし他者が代わりに証明してくれて復讐権行使義務が生まれることなぞまずない。普通はそんな証拠処分するんだがな……。」

「行使するのでは兄上は族滅されるのでは?」

「あくまで権利だ、族滅させることができるのであって行使者に族滅させなければならないわけではない。行使する義務は生まれたがオリバーの助命を願い出でればアレが死ぬだけだ」

「わかりました、オリバー兄上の助命をお願いしたします」


 そんなガバガバ法律が正しく運用できるわけ無いじゃん!どんだけ昔治安悪かったんだよ!普通に考えて族滅が可能な法を皇家以外も使えるってやばすぎるだろ!

 だから条件つけたりいろいろ制約かけてたんだろうな……。廃止しないあたり利点があるんだろうけどジョストン伯爵家これで族滅されてないよね?俺が生きてるくらいだしな、まぁ父上の怒りを買いたくないから俺を族滅で殺さず義母に処分させるつもりだったのかもしれないが。それにしても名前も呼びたくないんだなぁ、ハリスン侯爵夫人としか使用人にも俺にも呼ばせてないから正式な名前知らないけど……キャシーだったかな?


「今ここにオリバーは助命された!母を殺されたと聞いても優しい兄は別だと!当家を乗っ取るために古参家臣を遠ざけ、金で動く無能代官の男爵子爵を侍らし、カールの暗殺を幾度も計画し、その母であるミミを毒殺した大逆人メアリーは明日処刑する!オリバーは廃嫡になったが助命となった!助命になった場合は貴族学院で働くことになると話していたのでまた会えるだろう!レッド法務官、復讐権はこのように行使されました」

「確かに確認いたしました、直ちに法務局に助命の旨を報告します。」

「ありがとうございます」


 ぜんぜん違う名前だったわ、まぁ今後の呼び名はアレになるんだろうしキャシーでもメアリーでもポピーでもいいんだけどさ。

 にしても兄貴は貴族学院で働くのかーなんか廃嫡された後貴族学院で働くって侮られたりしないのかな?一応謀反の密告の功績もあるしそこまで生徒もバカじゃないかな?いや毒殺の証拠保管してる公爵もいるし意外とアホばっかなのかもしれない。

 にしてもこんなガバガバな計画立ててる貴族とガバガバ法律ある国で大丈夫なのかな。

 うまく行き過ぎているというか……なんもしてないのに勝手にうまくいってね?レールに敷かれてるというかさ。

 異世界転生とはいえ普通はもうちょっと俺が努力してなんかするとかあるじゃん?

 もしかしてこれってゲームかラノベの世界に転生したんじゃね?

 そうだよな!結構貴族が消えたとはいえいきなり貴族学院に平民受け入れますはおかしいよ!それに反発もないみたいだし!


 でもこれどんな世界なんだ?魔法はないし魔王も……多分いないだろ、いないよね?なるべく恋愛系がいいな、命の危機を避けたいし恋愛系なら大丈夫だ。

 でも復讐権とかいうどう考えてもありえないようなクソガバ法があるしバトル系かも……。


 婚約者はいないし振られることも殺されることもないだろ。攻略対象かな?でも婚約者いないから主人公かも!でも波乱万丈過ぎて逆にモブ枠か?友人Aみたいな?

 兄貴も貴族学院で働くし兄貴のほうが攻略キャラっぽくね?悪役令息として退治されて兄貴が当主になるとかありそうだな……。


 前世の記憶なければ族滅しろって騒いで父上に説得されて不承不承で恨み続けるってありそうだしなぁ。で、さっきの法務官が無理やり俺を説得して行使を阻止したとかでなんか揉めるの!そしているかしないか知らんけど皇女とかどっかの令嬢があの優しかったオリバー様を殺そうとするなんてこの人でなし!って感じで処刑されたり降格したり追放さたりするんじゃないか……。


 あれ?兄貴主人公か?そう考えるとあの義母からあんな人格者が生まれるわけ無いもんな……。でも主人公だとしたら生徒に手を出すタイプの作品だし兄貴っぽくないな……?まぁ生徒に手を出さない真面目な男が生徒に手を出すまでの教師のゲームかもしれないしな。


 いや……むしろ前日譚か?この事件がきっかけで平民が学校に通うようになり……みたいな!子供の世代になって色々問題が起きて兄貴の子供に俺の子供が負けて追い落とされるとか?

 多分兄貴は何らかのキャラだろ、絶対兄として接しよう。

 普通になんの原作もない異世界転生かもしれないけど、まぁ兄として敬っておくに越したことはないだろう、いい人だし。

 で、それ以外で俺はどう立ち回るんだ?

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