第45話・あなたはどうしてそんなにジネベラを悪者にしたがるの?

「へ? 病気? だって先生、前に聞いたら人間はそんなに簡単に、髪の色や瞳の色が変化する事はないって言っていたのに?」


「彼女の場合は、魅了とか関係ないね。私の経験上、恐らくこれは何らかの体調不良を起こし、免疫が落ちている最中に、自分の体の中の抗体を害するウイルスにでも感染したようだね。一時、このような見た目になっているだけで、しばらくすれば元に戻るだろうよ」




 エトワルに、薬師長は警告した。




「エトワルくん。以前から思っていたが、きみは話しを大袈裟にする傾向があるようだ。確証もなしに色々と周囲に吹き込むのは止めなさい」


「先生」




 彼女は、あ然としていた。薬師長にジネベラのことを告発して、味方に引き入れようとしたのに当てが外れたからだろう。




「今回は見逃すが、これ以上、続けると不敬罪になる」


「私は先生に対して不敬な態度など取っていません」


「彼女には取っているだろう?」




 エトワルは反論した。しかし、薬師長に指摘されると、それのどこが悪いのかと開き直った態度を取った。




「だって、彼女は怪しいから。私は平民ですけど、相手がお貴族さまだからって、見逃して良いんですか?」


「学園では身分差なく平等を謳ってはいるが、だからといって何の根拠もないのに、相手を疑い中傷するのは如何なものか」




 エトワルは平民だったらしい。この学園では平民の子も分け隔てなく、希望する科で学ぶことを認められていた。彼女は薬師長から注意をされている時点で、諦めれば良いのにまだ、納得がいかない様子だ。




「あなたはどうしてそんなにジネベラを悪者にしたがるの?」




 不服そうなエトワルに、今度はアンジェリーヌが聞いた。それはジネベラ本人も知りたいことだった。なぜか初対面から彼女には敵意を向けられていた。その理由が知りたかった。




「だって、バーノくんは薬草学科の秀才で、私達の期待の星なのよ。それなのに他の学科の女生徒に振り回されて欲しくない」


「前にも言ったと思うけど、僕が誰と付き合おうときみの許可など必要ないよ。僕が決めることだ」




 バーノは、彼女の勝手な言い分に腹が立って仕方ない様子だった。ジネベラも不快に感じられた。




「きみはベラの何を知っている? 外見だけで他人を判断するのは止めた方がいい。相手に失礼だよ」


「彼女は淑女科の生徒でしょう? なぜ、薬草学科の生徒であるバーノくんに、ちょっかいを出すの? 自分のクラスメート達と仲良くすればいいじゃない。見ていて不愉快だわ」


「エトワルくん。それは閉鎖的な考えだね。危険だ」


「先生」


「薬草学科の生徒の中に、まさかきみのような身勝手な生徒がいるとは思わなかったよ」


「あの。違うんです。これは……」


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