第37話・お久しぶりです
翌週。ジネベラは自分の屋敷にアンジェリーヌとバーノを誘った。この間、オロール公爵邸に招かれたお礼のつもりだ。
アンジェリーヌの実家であるオロール公爵邸の庭園には遠く及ばないが、きっとバーノはモモを連れてくるに違いないので、ボーナ達に庭へテーブルや、椅子を用意してもらっていた。
狭い室内よりは、野外の方がモモにとっても居心地が良いのではないかと思った為だ。しばらくすると公爵家の馬車でアンジェリーヌがやって来た。バーノのエスコートで馬車から降りた彼女は、幼い頃のお転婆など嘘のように落ち着きある姿勢を見せていた。
その変化に出迎えた母や屋敷の者達は驚いたようだ。両親始め皆には、幼馴染みだった「アン」や、「チョロ」との再会したことを話し、その正体も伝えてあった。
屋敷の者達は皆が、人見知りのジネベラが親しくなった「アン」と、「チョロ」姉弟を覚えており、その二人と学園で再会して再び仲良くなったと知って、自分のことのように喜んでくれた。
その二人が屋敷を訪れると聞き、皆があの姉弟はどう成長したのかと訪問を楽しみにしていた。
「お久しぶりです。小母さま。ベラ、お招きありがとう」
「僕もお招きありがとうございます」
「アンちゃんなの? 綺麗になったわね。チョロくんもあら、すっかり大きくなって……」
涙もろい母は、アンとチョロの成長に目頭を熱くしていた。後ろに控える使用人達もウンウン、頷いていた。
「小母さま。小父さまは?」
「あの人は、今日は出仕で留守にしているわ。ふたりともゆっくりしていってね」
母はそれだけ言うと自室に下がっていった。三人に気を遣ってくれたらしい。
「小母さま。全然変わっていないわね。あの日のままだわ」
「そう?」
アンジェリーヌが嬉しそうに言う。アンジェリーヌはジネベラの母が以前のように、接してくれたのが嬉しかったようだ。彼女は公爵令嬢という身分から、他の令嬢達がちやほやしてくるが、皆自分の後ろ盾をあてにしていると愚痴ることがあった。
殿下との婚約がなくなってからは、その取り巻きも減って煩いのがいなくなって清々した等と言ってはいるが、本心では気を許せる人がそれだけ少ないのだと思われた。
学園で二人と再会し素性を知った時は、自分は低位貴族令嬢でしかないので、身の程を弁えてアンジェリーヌ達にはそれなりの態度を示すべきかと思ったけれど、アンジェリーヌ達に乞われて、身分関係なく親しくさせてもらっている。もしかしたらいつの日か、二人とは一線を引かなくてはならない日が来るかも知れないけれど、出来ればその様な日は遠く、出来るだけ遅くなることをジネベラは願った。もう少しだけ二人と身分の垣根を越えた幼馴染みでいられる時間が欲しかった。
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