ＫＡCに参加する話その3

第1話 カードゲームの箱買い

　カードゲームが大流行したときに流行った動画がある。パックで売っているカードを一箱丸ごと箱買いして一気に開封し、出たレアカードを見せるだけの動画だ。

　底辺ウーチューバーである漆虎万太郎も、いつかはやりたい企画だったが、先だつものに余裕がなかったので手を出さなかったのだが、先日思わぬ臨時収入があり、今回の企画と相成った。

「はい。万太郎です」

　ドローンカメラを起動して万太郎は挨拶する。今回は不正を疑われないようにライブだ。

『万太郎さんチース』

『マンタロウさん今日は人間バージョンですね』

『で、今日は何すんの？』

「今日は、先日発売された殿様の野望のブースターパックですね」

　ででんとカード10枚を1パックとして10パック入りの箱を4箱取り出す。所謂１カートン。

『箱の箱買いとか宝くじでも当たったの？』

「宝くじ当たってたら動画で公開してますよ」

『それは止めた方がいい。集られるぞ』

「マジっすか？」

『どこから漏れるのか、高額当選者のところには寄付しろって凸されるって噂だ』

『お前さん一応ヒーローだろ？金持ってるって知られると酷い目に遭うぞ』

　その書き込みを見て万太郎は身を震わせる。

　一応、巨大ヒーローによく似た何かというのは隠していないし、貧乏ウーチューバーというのも公言しているのでその手の話は来ないのだが、これは気をつけた方がいいと心のメモ帳に記しておく。

「開けますね」

　早速、箱を開ける。殿様の野望というのは、リアルでカードパックを買って出たカードのシリアル番号をメーカーのサイトに登録。武将は最大５人まで登録出来て、最大5枚同じカードを重ねる事で強化した武将を対戦相手と戦わせるというゲームだ。

　カードの種類は武将・武器・防具・装備そして兵士。レアリティはSR・Ｒ・UC・С。

　基本はＲ1枚。UC3枚・С7枚。一箱に1枚、Ｒの代わりにSRが入っている。つまりSR１枚は確定だ。

「何が出るかな？何が出るかな？」

　１パック目はＲ明智光秀。UC斎藤龍興。UC今川氏真。UC長船。С刀ⅹ2。С槍ⅹ2。騎馬隊。歩兵。

　なかなか良さげな滑り出しである。

「お？これは・・・」

　8パック目、ついにその瞬間はきた。

「キタキタ虹色のカードキタ！」

　パックを開封した瞬間目に飛び込んできた虹色のカード。

「朝倉義景！って思いっ切りハズレSRやろ！」

　思いっ切り突っ込む。確かに歴史上では有名な人だよ？でも対戦向きじゃないでしょ！うわ・・・無駄に防御が高けぇ

　なおい！引き分け要員か！？まあ攻撃に特化した武将１人置いて後は引き分け要員で勝ちを狙うのは悪くない。コストが低いのも悪くない。あれ？なかなの良SRなのか？

「う～ん武装強化では光るのか？」

『そうだね。SR防具と装備で防御を強化すると武力特化と引き分けれるだろうね』

　リスナーも指摘する。ゲームは勝ち抜き戦だから、次峰か中堅辺りに置いておくと相手の先鋒を引き分けで止められる。武力特化はコストが高いから引き分けは勝ちに等しい。

「さあ続けます」

　それから黙々と開封していく・・・

「SRは朝倉義景、千子村正、赤糸威大鎧、赤備えの精鋭・・・せめて武将が二人は欲しかったなあ」

『箱の箱買いでほぼフルセットとか狙い過ぎやろ』

『まあカートンのデータはありがたいよ』

　400枚の内訳はSR4。Ｒ36。UC120枚・С240枚。武将、武器、防具、装備、兵士の割合はほぼ均等だった。

「せっかくだからサイトに登録しますか」

　スマホでメーカーのサイトにアクセスし登録する。

　まずは総大将としてプレイヤーネームを登録。

　次に本国を・・・越前に決める。

　次にカードをスマホのカメラで読み込む。ものすごい時間が掛かったが、なんとか終わらせる。

　次に部隊編成。先鋒Ｒ明智光秀。次峰UC斎藤龍興。中堅UC真柄直隆。副将SR朝倉義景。大将Ｒ朝倉宗滴

　これで朝倉家臣団というコンボが発動する。

　それから、それぞれの武将に武具・防具・装備・兵士を配置して登録する。

「よし。合戦じゃ！」

　出撃ボタンをポチッとなな。

　ボォ～ボォ～ボォ～

　スマホから鳴り響く法螺貝の音。

「やあやあ我こそは明智十兵衛光秀！」

　ＳＤキャラがブンブンと装備させた槍を振り回す。

「我れこそは松永弾正久秀」

　ＳＤキャラがブンブンと装備した刀を振り回す。

「「いざ尋常に勝負！」」

　明智光秀の背後に朝倉家臣団の文字が浮かび士気のバーが伸びる。

　松永久秀の背後には三好の忠臣の文字が浮かび上がり武力のバーが伸びる。

　士気か兵力が0になれば負けだ。

　キン、キン、ガキン

　ＳＤキャラが槍と刀を交え士気と兵力が削れていく。

　そして8回目切り結びの結果、明智光秀が松永久秀を斬る。

　勝負あり！明智光秀に勝ちの文字が。

　次に相手の次峰である三好長慶が出てくる。

　これが三好の忠臣の片割れか。

『万太郎軍の勝利です。若狭は万太郎軍の支配地になりました』

　金500を手に入れました。兵士の上限が1500になりました。

　と、戦闘報酬がクレジットされる。

「しばらくは無料ガチャで遊んでみまーす」

『ういーす』

　万太郎はそう宣言してドローンカメラの電源を落とす。なお、このあとこのゲームに嵌まって貧乏で底辺ウーチューバーの万太郎はなけなしの金をカードに溶かすことになるのだが、それはまた別の話である。