詰める
水瀬 由良
詰める
私は「詰める」という作業がとても好きだ。
まず、整然と並べられている様子が好きだ。
洋菓子の缶を開けて見るお菓子に感動する。
クッキーもチョコもきっちりと並んでいる。
あるべき所からはみ出たものは一つもない。
あれこそ、美しさというものだと私は思う。
その美しさを自分で作りだせる素晴らしさ。
それが私にとっての「詰める」という作業。
レジ袋でも本棚でも食器棚でも冷凍庫でも。
ありとあらゆる収納において綺麗に詰める。
だから、コンビニでレジ袋を購入できない。
自分の鞄なら、袋詰めを断ることもできる。
しかし、レジ袋を購入すると店員が詰める。
乱雑に物がレジ袋の中に詰めこまれていく。
神をも恐れぬ悪行、許されない所業である。
袋に詰めていくことは私も苦手なところだ。
どうしても袋は持つと形が変わってしまう。
移動するうちに物の位置が変わってしまう。
某ファーストフードのケースは素晴らしい。
あれがどこでもあれば袋でも楽になるのに。
逆に箱に詰めていくのがなによりも好きだ。
箱はいい。直方体の箱。それだけで美しい。
機能美というものがそれに込められている。
蓋を開けると何もない空間が広がっている。
箱から「無駄のないように」との声がする。
もちろん、私はその声にまっすぐに応える。
けっして箱からの声を裏切ることはしない。
箱に対する誠意。そして、入る物への誠意。
この2つの誠意をもちつつ、私は「詰める」
四隅を余らせない。間仕切りもしっかりと。
箱に隙間なく並べられた物を私はながめる。
それは自分の手で作り出した完璧な芸術品。
思わず、「はぁ~♡」と声を出してしまう。
私は満足感でいっぱいになって恍惚となる。
こんな多幸感を覚えることはほかにはない。
私は「詰める」こと、特に箱詰めが好きだ。
原稿用紙を埋まっていく様子も近い感じだ。
箱に詰めていくように文を書き連ねていく。
これもちょうど20×40の800文字だ。
私は「詰める」ことがとてもとても好きだ。
詰める 水瀬 由良 @styraco
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