第43話 会談ですわ

魔族達に連行されて魔王城に着いたら、明らかに歓迎している様子ではない魔王の側近達に囲まれて、ずっと私を見定めて来る魔王が玉座にいましたが、これ絶好のピンチではありませんの?この魔王城は頑丈な作りになっていて、魔力による保護もされているようなので、天井をぶち破っての脱出は不可能ですわね。


まず魔王から、何で図書館にいたのか聞かれたので普通に話をする気ですわね。この世界の歴史について学んでいる最中だと答えたら、我が何でも答えようみたいなことを魔王が言い始めましたわ。この魔王は、勉学も出来る魔王ですわね。とりあえず疑問を投げかけてみると、簡潔な答えが返って来るので便利な存在ですわよ。


分かったこととして、魔族は元々人間のようで、人間が身体を薬品に漬けたり身体改造手術を受けさせることで一定割合の人が魔族になるようですわ。魔族と魔族の間に産まれるのは魔族のようですが、まあ黒人と黒人の間に黒人が産まれるようなものですわね。お手軽に強くなれるようで、寿命まで延びるのですからやらない人の方が稀っぽいですわ。


何で翼や角が生えているのかを聞いてみたら、格好良いからだそうなので、種族全体が絶賛中二病真っ最中ですわね。かなり価値観が歪んでいるような気もしますが、身体への改造が多いほど強いという価値観なので自然とそうなったのでしょう。


ダンジョンの入り口からは女神産の化け物がうじゃうじゃ外に出て来ているようなので、私と戦ったこともある例の魔族もその前線で戦っているらしいですわ。あの帝都を襲ったほぼ全裸の悪魔が、王子で次期魔王候補とか流石に予想出来ませんわよ。


一応王子達の中では一番強いらしく、固有能力が強いようなので次代も安泰だったのにトラウマを植え付けられたとか言っているのでたぶん恨まれていますわね。まあ恨まれない要素がないですし、手配書まで作られているので、捕まってなお自由な身にされていることの方がおかしいですわよ。


どんどん質問を繰り返していると、女神関連で露骨に不機嫌になったので魔王は何か知ってそうですわね。そして余興は終わりだと言って近づいて来る魔王は、なんか歩く度に大きくなっているので巨大化の固有能力でも持っているのでしょう。


……巨大化って、シンプルに強いですわねえと思っていたらメイが吹き飛ばされましたわ。ですがあの程度で死ぬほど軟弱ではありませんので、放っておきましょう。そう意識した瞬間に巨大な拳が上から降って来て、地面に埋まりましたが素晴らしい痛みですわ。久しぶりに強烈な痛みが実感出来て嬉しいですわよ。


魔王がグッ、グッと地面に拳を押し付ける度、全身の骨が砕かれるこの感覚はたまらないですわね。私が、一番望んでいたと言っても過言ではないですわねこのシチュエーション。圧倒的な力量差に為す術もなく負け、死ぬ。素敵なことですわ。


ここで死ぬもよし、このサイズ差なら負けた後にオ〇ホ妖精みたいに犯されるもよし。ああ、この全力で押し返してもビクともしない力量差。たまりませんわね。急な痛みに胸もキュンキュンして来ましたわよ。


しかしあと一歩で絶頂出来るタイミングで、拳の威力が弱まり押し返せるようになってしまいましたわ。恐らくこれ以上続けたら死んでしまうかもしれないと思って魔王が手加減しましたわね。ふざけるなですわ。せめて一度ぐらいは痛みでイかせて下さいまし。


最終的には片手で押し退けられるぐらいに手加減されて、ちょっとムッとしたので思わず魔王の巨大な拳を殴りつけますが、それだけで魔王が片膝を突いたので案外防御力は無さそうですわね。


「ぐう……貴様はあの女神の寵愛を受けているのか!?わざわざ魔族領まで来て何をするつもりだ!?」

「女神の寵愛を受ける者が女神の殺害など企てませんわよ。私がここに来た目的は、女神を殺害するための情報収集ですわ。そしてそれが、今の私の目標ですわ」


私が女神の殺害を口に出すと、魔王は目を伏せて長く沈黙した後に「……そうか」とだけ呟きましたが魔王の側近達が全員剣や槍を向けているということは取り押さえられる流れですわよね?見た感じ男しかいませんし、中にはペ〇スの改造もしてそうな凄い悪魔もいるので輪姦チャンスですわよね?


「皆の者、武器を下げよ。これよりクラウス王国は、リディア王の女神殺害の支援を行う。」


……ここで無礼なことを言えば周囲からの反感を買って犯される流れになりそうですが、女神を追放した時に得られる天罰とかの方が凄そうですから我慢しておきますわ。とりあえず滞在費と仮の住まいまで貰えるようなのでありがたく受け取っておきましょう。


「ぅう……リディア様ぁ」

「ほら、メイはさっさと起きなさいですわ。あの程度なら、崖から落ちた時より軽傷ですわよ」


メイを叩き起こしますが、思っていたより傷は浅そうですわね。まあただの打撲なら崖落下の時に何万回と経験しているはずなので、すぐに治りますわ。この世界が、システマティックな世界で助かりましたわね。もしそうでなかったら、きっとメイも私も簡単に死んでいましたわ。

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