第31話 暴動ですわ

数個のバッタの群れを潰していたら、お目当ての赤バッタが交ざった群れがとうとうやってきましたわ。既にメイはあまりの恐怖に撤退済みなため、この場には1人しかいません。ということは思う存分戯れることが出来ますわね。


「ああ、気持ち悪い蟲が全身をおおっていまふがっ」


しかし残念なことにバッタの歯が私の皮膚を通らなかったため、赤バッタに無視されるという羞恥プレイをさせられましたわ。もっとバリバリ頭から人間を食べるのかと思ったら、お口はそこまで大きくなかったので期待外れでしたわよ。口を開けたら中に突っ込んで来る赤バッタもいて、中々に珍妙な体験でしたが。


赤バッタを食べると、若干血のような味がして美味しくなかったですわ。食感もエビに近い食感を期待していましたが、妙に硬くて不味いですわよ。脚が暴れる感触がダイレクトに口内を刺激しますので、そこは少し楽しめましたけど、結局美味しくなかったですわ(2回目)


あまりにも期待外れでしたので、焼き払いましたが私は悪くありませんわ。気に入らないものは燃やす。まさしく暴君の有り様ですわ。広範囲に広がるバッタを、炎の渦で包み込んで行くので、バッタ達は狂ったように飛び跳ねますわ。その結果、より広範囲に火が広がるので楽ですわね。


結果的には、バッタ群はある程度私の領地を迂回したようですわね。後続の仲間に「ここヤバイ」みたいな連絡をバッタ達は出来るようで、若干の知性も感じられますわ。ただある程度は殲滅しましたので、最終的な被害は軽減出来たはずですわ。


まあ帝国の広範囲を襲ったので、飢饉は免れませんが。飲み水が枯れるようなことにはなってないため、即餓死にはならないでしょう。飢えた民衆による暴動は時間の問題ですわね。


「王国領の周囲に沢山のお城を作りますわよ。今なら食糧を渡すだけで奴隷のように働いてくれますわ。外見に拘った大きなお城を、10個ぐらい建てて欲しいですわね」


ナロローザ公爵領の周囲には頑丈な砦やお城を沢山作りましたが、領土が広がったのでその外側にもお城を建てていきますわよ。財産を失った人が多いですので、食糧を賃金代わりに渡すと全員馬車馬のように働きますわ。


日に日に大きくなっていくお城の枠組みというのは、時間がかかると理解していてもワクワクしますわね。ああ、巨大建造物がこのままの大きさで擬人化して私の純潔を散らしてくれると嬉しいのですが……。


あと無駄に領地にお城を作っていたので、自然と領内のお城を建てる技術も上がっていますわ。本当、何でこんなにお城を建てたのかと私自身が思うぐらいには領内にお城が溢れてますし。この世界の最大の無駄遣いがお城を建てる、だったのでお城を建て続けましたが、端から見たら糞迷惑な領主ですわね。これは謀反を起こされるべき領主ですわ。


「クレシア、先の戦争と蝗害で活躍して表彰していた騎士団の人にナロローザ公爵領にあるお城を配りなさいな」

「かしこまりました」


お城の管理が面倒なので、新しく増える分、古いお城の管理は騎士団の人間に丸投げしますわ。高給取りですし、使用人も雇えるでしょうからお城を与えても問題はありませんわね。ついでに男爵領も幾つか見繕って渡しておきますわ。渡したら渡した分だけ管理が楽になりますし。


そうこうしているうちに隣のヘルソン王国の幾つかの村々で暴動が起き、都市部でも貴族に不満を持った人間達が活動を始めましたわ。ヘルソン王国の更にとなりがマリアの活動するハイン王国ですので、民主主義的な考えと共産主義的な考えが波及していますわね。


帝国が崩れる前に、諸王国が内部から壊れそうですわね。やはり新聞の力は侮れませんわ。簡単に隣国すら政治的思想を刺激できるのですから、今のハイン王国の内情は相当面白いことになっているはずですわ。


そして案の定ヘルソン王が援軍を要請して来たので却下しておきますわ。アーセルス王国への侵攻作戦で、仲良く撤退戦で肩を並べた間柄ではありますが助ける義理まで持ち合わせていませんの。そもそも私は暴君を目指しているので、見返りもないのに助けるわけないですわ。


ついでに言うと、ヘルソン王が万が一にも打倒されるようなことがあればその後暴動を起こした民達はこちら側に流れ込んで来る可能性が高いですわ。その暴動を起こした民達を鎮圧することで「難民を許容しない」と著しく私の評価を下げることが可能ですわ。最近、私への評価が高すぎると思っていたので、下げる機会は積極的に活かしますわよ。

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