第3話 奴隷はすぐに追放ですわ

毎週のように弱い人を追放して追い出し続けていたらいつの間にか精強な騎士団が出来ましたわ!


……って喜んでいる場合じゃありませんわ。せっかく敵軍に捕らえられて拷問や火炙りや凌辱されるチャンスでしたのに。思わず撤退する敵軍を睨みつけてしまいましたけど、それぐらいは許して下さいな。


最近はもう率直に「犯して」と言っているのにも関わらず、お菓子を手に乗せて来る始末。「お菓子、手」ではありませんわ「犯して」ですわどう聞けばそうなるんですの。あの黒服共はわたくしのことを何も分かっていませんわ。これ以上具体的にプレイの内容を喋って犯して貰っても、それは強姦ではなく和姦ですわね。


これはもう、学園に行って弱い者虐めをするしかありませんわね。学園で虐められた生徒が学園から追放されて、虐めの主犯格に復讐する物語は最早鉄板ものと言っても良いですわ。死の淵に追いやられてから覚醒するタイプの主人公もたくさんいらっしゃるので、その中で鬼畜系主人公がいれば万歳ですわね。


「クレシア。今年の王都魔法学園に入学する生徒全員のデータを集めて下さいな」

「はい、リディアお嬢様」


とりあえず田舎から来た無名の人や、記憶喪失している人がいないかチェックですわ。黒服達を纏めているクレシアは、こういう情報収集が得意ですから助かりますわ。その情報収集能力がご主人様に対してだけ節穴になることを除けば非常に優秀ですわ。






リディアがアーセルス王国軍を追い払って数日。ナロローザ公爵領の内外でリディアの戦争での活躍が噂され、リディアの知名度が一時的に帝国内トップクラスとなった頃。


リディアに付き従う執事長クレシアは主人から命令を受ける。その内容は今年からリディアが通う学園の新入生、全460人のデータを調べること。あまりに膨大な量の仕事をポンと渡されたにも関わらず、クレシアはすぐに部下に命令を下し、クレシア自身も些細なことすら見逃さないよう調査を開始する。


時には学園に潜入したり、直接金で情報を買い取る様はもはやただの諜報員であり、リディアがより望みそうな有力な貴族の息子、娘の情報は細部まで漁った。なおその数日の間にリディアは以前に購入した奴隷を虐めていた。


「む、むりです……私にそんなこと出来ません……」

「あなたの意思などどうでも良いから命令通りに動きなさいですわ。ほら、早く!」


ちょっとした山の崖上にいるお嬢様と奴隷の少女。2人は言い争った挙句、奴隷の少女がお嬢様を付き飛ばした。崖を転がり落ちるようにして落下し、途中にある木の枝や岩肌に何度も激突したリディアは、最終的には50メートルほどの滑落をする。


後頭部から若干血を流しながらも、笑顔で立ち上がるリディアは、崖上にいる奴隷の少女……メイに声をかける。


「ほらこの程度では死にませんわ。死にかけたら回復薬を使いますので気にせず落下しなさい。

これは命令ですわよ?」

「ぴぃ」


そしてメイも勇気を出して崖上から飛び降り……途中の木や岩肌と激突する度に骨は砕け、肌は削れ、あっという間に激痛で意識を失う。崖下まで落ちた時には四肢の骨が砕け、身体の至る所から血が出ていた。


「……死んでないからヨシ!

さっさと回復薬を飲ませますわ」


今まで奴隷を買ってちょっと鞭で打っては追放(解放)という慈善事業を繰り返していたリディアは、何故か復讐に来ない元奴隷達のことを考え、虐めの量が足りないのと、奴隷が弱かったことを理由に据えた。


そのため、死なない程度に痛めつけて、ついでに強くすれば早期に復讐してくれるのではないかと考え、メイを崖から飛び降りさせた。すぐに回復薬を飲まされてなければ、メイの心臓は数十秒で鼓動を止め、死んでいただろう。


リディアと同い年のメイは、回復薬を強引に飲まされた後、黒服達の適切な処置を受けて一命を取り留めた。そしてしばらくして目を覚ましたメイに対して、リディアは笑顔のまま告げる。


「あと100回ぐらいは飛び降りて貰いますわ。そのうち軽傷になりますわ」


その言葉に、メイの目からは生気が失われた。それと同時に、メイは自身の罪の重さを自覚した。


この世界の奴隷は、犯罪奴隷と債務奴隷の2種類がいる。リディアが好んで買っているのは犯罪奴隷であり、メイもまた大きな犯罪に手を染めていた過去があった。


リディアが奴隷を買い漁っては、解放している話はナロローザ公爵領内で有名な話だ。罪の大きさによって鞭打ちの回数を変え、鞭打ちが終われば解放される。そのような噂話が流れる程度には、有名だ。鞭打ちも皮膚が剥がれ肉が抉られるような鞭打ちではなく、リディアがプレイ用に開発したバラ鞭である。


痛いのは痛いが、耐えられないほどのものではない。運良く解放された犯罪奴隷の中には再度犯罪に手を染める者もいるが、治安悪化を目論むリディアにとっては好都合だった。むしろ、リディアの予想以上に再犯率が低いのは頭を悩ませる要員になっていた。


……そんなリディアからの命令である崖からの飛び降りを、メイは繰り返す。次第に落下になれ、自然と受け身も取れるようになったメイは、5回目の飛び降りで気絶しなくなった。

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