第1話 使用人を追放ですわ

ある日目が覚めると女の子になっていた。それも金髪で幼いながらも既に美人が確約されているような顔立ちであり、将来的には金髪ツインドリルが似合いそうなお嬢様に。


そしてそんな未来の容姿端麗な姿を予想し、頭に思い浮かべた自分は、直後にその姿を1000通り以上の犯し方で犯し尽くす。まだ5歳の容姿だけど、なんか既に巨乳になる未来しか見えなかったし、美人に育つだろう。その頭の中の美人をゴブリン、オーク、触手、芋虫、巨大蟻、植物、機械、エイリアン、エッフェル塔、潜水艦……ありとあらゆる生物や物で、ありとあらゆる犯され方で犯される姿を幻視する。洗脳や催眠も本人の意識が奥にあるならOK。


四肢欠損や眼孔姦、脳姦も似合いそうだ。男性だった前世は被虐願望をあまり満たせなかったけど、今世は女性。しかも倫理観は中世。気軽に強姦に出会えそうで胸が踊る。顔とか片手で押さえつけられて、乱暴にされたい。暴れられたら面倒だからと、拘束具を付けられた上で犯されたい。


さて、現状を確認するとどうやらこの身体の本来の持ち主が持っている記憶は覗けるらしい。早速記憶を辿ると、この子は公爵家の一人娘だが、両親は既に他界していることを把握する。現在統治を行っているのは隠居していた祖父のようで、父に家督を譲った後、のんびりしていたけどその父が死んだから自分が成長するまでの間、領地を経営する流れなのかな?


つまりは将来的に広大な領土を受け継ぐ人生の勝ち組というわけで、その勝ち組からの転落人生を歩める絶好のチャンスでもある。良いよね、お嬢様がひたすら転落していく姿というのは。


前世では、追放系のなろう小説が好きだった。追放した側の人物が、情け容赦なく追い詰められ、ダンジョンの最下層でモンスターにバリバリ食べられたり犯罪者になって拷問をされたり、その描写にたまらなく興奮もした。


次に好きだったのは悪役令嬢系かな。最終的には酷い目に遭う、ということをつらつらと書き連ねている小説が多く、中にはわりと残酷な運命も多いので個人的にはとても羨ましいと思う。これにループ系を組み合わせたような小説が個人的にはベストだと思うんだけど、残念なことにそんな奇特な小説は少ない。


……ここで自分は、その両方を満たせる可能性に気付く。ということは、積極的に陰キャを虐めたり弱い人を追放すればいずれ復讐されてざまぁ展開を受けられるのでは?可愛がっていたペットの奴隷に蔑んだ目で見られ、人外の生物に犯され、財産や地位を全て喪失する。何ならファンタジー的なあれこれでゴブリンにされて親しき者に討伐されたり、氷漬けにされて永遠に苦しみを味わうとかそういう展開はめっちゃ美味しい。


あ、やばい。こんなことを考えるだけでお股が濡れちゃうとかこの身体が敏感過ぎるし完璧過ぎる。というわけで意識が浮上し、現状把握が終わった数日後には、気に入らない使用人を全員領外追放。ちゃんと一人称も「わたくし」にして、ですわ口調を守ろう。追放ですわ!追放ですわ!お前ら全員追放ですわ!






齢5歳にして、急にちゃんとした言葉を使い始めたリディアは、使用人の3割を館の中央に集める。ここに集まった者の大半はリディアが適当に選んだ人達……ではなく、手頃に追放出来る人達であり、コミュニケーション能力が不足している者達だ。


3割と言っても、使用人の数は100人に近いため、人数としては30人と多い。そしてその者達をリディアは追放すると宣言する。


「何故我々が追い出されなければならないのですか!我儘もいい加減にして下さい!」


当然、声を荒らげる存在がいた。その言葉に賛同するような声がちらほらと上がるが、リディアはニコニコ笑いながら答えた。


「貴方達が怪しいからですわ。それ以外に理由なんて必要ありませんわ」


その言葉に、若干身体をビクつかせる者が数名いたのをリディアの後方にいる執事長は見逃さなかった。リディアの指示により、全身真っ黒の服装にし、真っ黒な帽子を深く被って顔を見せないようにしている若き紳士は、この場に集められた大半が他領からのスパイだと勘付く。


……追放される側の人達の周囲を取り囲むようにして出てきたのは、全員が黒服を身に纏い、大きな黒い帽子を深々と被っている使用人達だ。これがリディアの使用人達にとって、今日からの正装となるという情報を受け取れた人物。そしてその情報を、受け入れた人物だ。


逆に取り囲まれている、普通の給仕服を着ている使用人達は情報を受け取れなかったか、リディアの言葉を戯言だと受け取り指示に従わなかった人物。彼らはこの後、荷物を纏める暇も与えられず、領地の外へ放り出された。


一度指示され、追放した側の人間は、次にこうなるのは自分達かもしれないという不安に駆られる。そしてそれが、そのまま忠誠心にもなる。


これ以降、リディアが追放することは多々あったが、いずれも必ず条件があった。弱い者、情報収集能力が欠ける者、清潔感のない者……。リディアは自身が可哀想な目に遭うことが目的で追放を始めたが、だからと言って何も理由がないのに追放されるのは追放される人が可哀想だと思う程度の人の心があった。


それゆえにリディアの追放は一定の正当性があり、リディアの周囲の人間もまた、追放を好むようになっていく。やがてそれは、強固な組織を作り出した。

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