ティアリング・ティアー
風若シオン
第1話 どうして君は泣いてるの。
「ちょーっと待ってェ~!!おちついて!話をしよう!!!」
あは、あはは…尻すぼみで頼りない、取って付けたような笑い声。が、狭い路地裏を走る僕に追い縋る。―人なんて軽く殺せそうな、真空の刃として。
ボバッ、という破裂音と共にワイシャツの左袖が弾け飛ぶ。一発もらったらしい。足がすくんで立ち止まってしまう。再び、ボバッ!と"圧"が眼前に拡がった直後、その発生点へ勢いが収束してゆく。巻き込まれた僕の前髪と側にあった廃ビルの室外機が吹き飛ぶ。と、丸い眼鏡に無改造の制服、ショートボブの黒髪が可愛らしいオドオドした少女が向こうからぜぇぜぇ息を切らして歩いてくる。
「な、泣き虫さんですよね…す、すみません!あ、あは…」ボバッ!!
またしても前髪が数本散る。状況を飲み込んだ僕が
「ヘイヘイ、当たってないよ!似合わないから無理しないで、愛想笑いガール。」
紳士に声をかけると、泣き笑いの顔で突進してきた。僕は目尻を拭い、軽く手を振る。と、まるで何かの衝撃で気絶させられたように彼女が倒れる。辛いときは、とりあえず寝ちまうのが良いときもある。
日本で2番目くらいに大きい都市、大阪。そこには学研都市、正式名称「青少年の健全な精神を養い立派な社会の一員として育つよう心理学等学術的アプローチを試みる研究都市」ネーミングセンスが終わってるこの街がある。一体どんな街かって?僕らがヤングでナイーヴな感情をぶつけ合い、時には夢を忘れた大人達を目覚めさせる街さ―。
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