小さな勇者の贈り物。

@waterwaterwat

小さな勇者たち

都内のとある公園、空の真上で太陽が燦々と降り注ぎ、まるで攻撃されているんじゃないかというくらいのエネルギーを感じる日中。

子供達が元気に駆け回り遊んでいた。

「がじゅー‼︎今からこの水風船投げるから割らずにキックしてね!」

「う、うん。任せて!ねぇちゃん!」

そんな中、1人の男性がベンチで項垂れていた。

公園には似つかわしくないビシッと決めたスーツに身を包み、髪型もバッチリ決めた良い男。

そして両手の上にある四角い箱を手のひらの上でうんうん唸りながら転がしている。

「やっぱりまだやめておこうかなぁ…」

「いや、でもチャンスを逃すと…」

「あ〜でも怖いなぁ…」

こんな調子でかれこれ1時間日中の公園にいたお陰でせっかくのスーツは朝でびしょびしょだ。

すると

「おにいちゃんどうしたの?気分わるいの?」

「おねぇちゃんなにしてんのー?」

声をかけられた男は伏せていた顔をあげ、声の持ち主を見た。

男の前に立っていたのは少し気が強そうな女の子となぜか服がびしょびしょになっている男の子だった。

ベンチに座った自分とほとんど同じ目線の女の子に対して男は少し青ざめた顔で答えた

「大丈夫だよ、ごめんなちょっと考えごとしてて…」

少し気の弱そうなそれでいて優しい声を聞いて初めては少し警戒していた男の子も少し心配そうに男に声をかけた

「おじちゃん顔色もわるい!」

「おじ…そうなんだよなぁもうそんな歳だよなぁ、だから早く決めないとなぁ…」

「なんか悩んでるの?おねえちゃんに話してみなさい‼︎」

「いや、でも…」

「大丈夫!いつもがじゅの悩みも吹き飛ばしてあげてるし!」

そう言ってピースして満面の笑みでこちらに突きつけてくる女の子

「そうだよ!ねぇちゃんはすげーぜ!おれが歯がぐらぐらしてめそめそしてる時ボールと歯を糸で結んで歯をとってくれんだ!」

そう言って前歯の抜けた満面の笑みで腰に手をやり語りかけてくる男の子

普段なら友人にもあまりこういう事を相談しない男だったが切羽詰まっていたのもあって年端もいかない女の子に悩みをつらつらと語り出した。

そして男は語った長年付き合っていた女性がいる事、そしてその女性が仕事で遠い国へ行ってしまう事、そして男がその女性にプロポーズをしようと考えている事。

それはもう長々と語った…

「おにいさん、ながい!でもわかった!ようはやりたい事あるけどやってないっことね!」

「まあそうだな…」

「なのもそういう事ある!でもやってみたら楽しかった思い出いっぱいあるよ!だから大丈夫なんとかなるって!」

「そうだよ!ねぇちゃんなんかこの間3つも上の小6の男の子達とドッジボールして倒してたぜ!」

なんともまあ励ましになっているのかいないのかわからないような会話だったが悩んでるのが馬鹿らしくなった男は先ほどの気弱な表情はどこ吹く風と言った様子でベンチを立ち、公園を去るのであった

「ありがとう!小さな勇者たち!」

そう言って。







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