ゲーム部屋の扉を開けて

アリスさんです

単話です

都会の喧騒に疲れたゲーマーのタケシは、新しい住まいを探していた。ある日、「ゲーマーにはたまらない特別な部屋」という広告が目に留まった。リビングがまるでゲームの世界のようにデザインされ、家具やインテリアにもゲームのモチーフが散りばめられているという。好奇心を抑えきれなくなったタケシは、早速内見の予約を入れた。


部屋に一歩足を踏み入れた瞬間、タケシは目を見張った。ドット絵のような壁紙、アクションゲームで見かけるブロックに顔がついたようなソファ、迷宮にあるような松明みたいな照明。まるでゲームの中に迷い込んだような錯覚を覚える。この部屋の魅力に引き込まれたタケシだったが、即断即決はせずに一旦内見を終えた。


内見から数日後、タケシはふとあの部屋のことが頭をよぎった。あのギミックの数々を思い出すだけで、ワクワクが止まらない。再度部屋を訪れたタケシは、今度は存分に部屋のギミックを体験した。


リビングの床は、特定のパターンで歩くと移動するようになっていた。「まるでダンジョンの仕掛けだ!」とタケシは歓声を上げる。キッチンには、同時に踏まないと冷蔵庫が開かない2つのスイッチがあった。この部屋の魅力に完全に取り憑かれたタケシは、友人のユウキに熱心にその魅力を語った。


「ユウキ、信じられない部屋なんだ!絶対に見に来るべきだよ!」


あれほどの魅力を感じたタケシは、その部屋を借りることを即断即決した。引っ越しを終えた彼は、「#ゲームの部屋」というハッシュタグを付けて、SNSで部屋の面白さを発信し始める。写真や動画を次々とアップロードするタケシに、興味を持った人々から続々とコメントが寄せられた。


「これは本当に部屋なの?ゲームセンターみたい!」

「一度行ってみたい!イベントとかやらないの?」


反響の大きさに驚いたタケシは、ユウキと相談し、部屋を開放するイベントを企画する。「ゲームの部屋 オープンデー」と銘打ち、SNSで参加者を募った。


当日、部屋には多くのゲーム好きが集まった。みんなでギミックに挑戦し、知恵を出し合う。ゲームの話で盛り上がり、交流を深めていく。タケシは、自分の部屋がこんなにも人を引き付ける空間になるとは思ってもみなかった。


イベントの最中、突然部屋の隅からどこかで聞いたような不思議な音が聞こえてきた。参加者たちが音の方に目をやると、そこには90度に開いた扉があった。扉の前には、人が中腰でお尻を擦りつけるようなポーズの絵が描かれている。

「これってまさか…」タケシは思わず声に出す。

ゲーマーたちは、その絵が示す通りのポーズを取り、お尻を扉に擦りつける。すると、扉の下から階段が現れた。まるでゲームの隠し要素を見つけたかのような興奮が、参加者たちを包み込む。


階段を下りると、そこには何もない白い部屋があった。参加者たちは少し拍子抜けしたが、タケシは違った。彼はこの空間が、次なる冒険への準備の場だと直感したのだ。

「みんな、ここはゲームの世界への入り口なんだ。今までのは、ほんの序章に過ぎない。本当の冒険は、これから始まるんだ」

タケシの言葉に、参加者たちの目が輝く。彼らはここで出会った仲間と、新たな冒険に旅立つ準備を始めた。


それ以来、タケシの部屋は「虹色に輝かないゲーミングハウス」と呼ばれるようになった。ゲーム好きだけでなく、冒険を求める者が全国から集まってくる。タケシは、訪れる人々を導き、一緒に謎解きに挑む。時に助け合い、時に競争しながら、参加者たちは絆を深めていった。

「虹色に輝かないゲーミングハウス」は、現実とゲームの狭間に存在する、七光の空間となった。そしてタケシは、この不思議な巡り合わせに感謝しながら、今日も新たな冒険の扉を開く。ゲームはまだまだ続くのだ。

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