出生
人の心なんてのは自分自身がそうなように、一筋縄ではいかないものだよ。
好き嫌い、得意不得意、何が良くて悪いのか。色んなものの集大成がボクたちなんだ。嫌いな食べ物でも、焼いたら食べれたり煮たらダメだったり。ボクはトマトが苦手だけど、ケチャップは大好きさ。
一部だけを見て知った気になり、完結したいと思うのはただの高慢と怠惰なだけで良いことなんてのはお互いに無いはずだ。
桃ちゃんは、多感な時期に自身の能力のことも気が付かないまま、友達や親、先生とかの一部分の思想を感じ、人間不信になっていたそう・・・・・・
友達は当然、親も教師もただの同じ人間で、考えていることや欲望、要望、計算や感想も様々あるし、聖人のような人なんてのは居ないかもしれない。
ボクも「お前!丸っきりキレイな人間か!?」って聞かれて「はい!勿論ボクは清廉潔白な人だよぉ!!」と、断言して言い切ることはできない。恋愛で計算することもあれば、エッチなことも考えちゃう。人より美味しい物を多く食べたいし、試合やゲームには負けたくない。ただ、理性で相手の気持ちを考えて、何が嫌なことなのか悪いことなのかをちゃんと考えてから行動をしている。嫌われることに抵抗が無い人以外なら、常識的範囲内であればみんな同じだと思う。
けど、そんなことが分からない状態で、桃ちゃんのような能力があったら、当然のように勘違いしちゃうよね・・・・・・
「親とはずっとケンカばっかりでな、学校も普通に行かんくなった。どいつもこいつもろくな奴はおらんー思ってて、先生でも男はみんな色目でしか見てこんし。中学の時点で家出して、オンラインゲームで知り合った奴のとこへ行ったら、数日ほど監禁されて殺されかけたわ。必死に抵抗して、死ぬ気で暴れ回って窓とか割りまくって、近所に助けてぇ!って猛アピールしてな。焦ってるあのアホに蹴り食らわせて窓から飛び降りて逃げた」
今ではすごく元気に、笑い話のように話してくれて本当に良かったと思った。ボクの場合は身内というか身近な世界での出来事だったけど、桃ちゃんは見知らぬ土地で見知らぬ人からの強制的な圧に、そしてそれに立ち向かったんだから他人事ではないし、ボクなんかに比べて凄く偉いなって思って関心した。
「それでも、家に帰る気になんかなれへんくて。てか車で拉致られてどこか分からんかったし。怖くてとりあえず遠くに遠くにって必死に走って逃げたよな。どうしていいか分からんし、窓割るときや二階から飛び着いた木の枝とかで傷だらけ。腰骨の一部にひびが入っとって、ろっ骨も何本か折れてたらしいわ。あっちこっちで野宿しながら、変なやつには声かけられては逃げて、あちこちの痛みと空腹でもう、ええわぁって気持ちになって海に入っていって気ぃ失って、気が付いたらここや」
シルバちゃんのように誘拐されてなくて本当によかったと思う。桃ちゃんの”体質”だと、かなり重宝されるのだろうなとも考えられてしまうのがまた恐ろしくも思う・・・・・・
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