え、魔法は銃よりも弱いって?じゃあ私だけが使える最強魔法で無双します。~もしもMBTIが魔法を使える世界になったら~

メルコ

魔導書を勝手に捨てられたんですけど…

「おいおい、魔導書なんてもん読んでんのか、ルーク(INTJ)!魔法なんて何の役に立たねーだろ!」


とある教室の昼休みにて。ピアスを開けた紫の髪色の男子が話しかけてきた。

いかにもチャラ男、といった感じの見た目だ。まぁ、私も髪だけは紫色だけど。


「…ジャック(ENTP)。あなたには魔法科学が人生にとってどれほど重要なのかが分からないようね。」

「わかんね~(笑)正直、銃ブッ放した方が効率的じゃね?」


カラカラと笑いながら、ジャックは言いはなった。ここだけ切り抜くと、だいぶ頭の悪い発言に聞こえるだろう。しかし、今の世界にいるほとんどの人たちもそう思っているのが現実だった。


「そろそろお前にも銃を使ってほしいんだよなぁ。俺たち、この学校に通ってからもう半年だろ?お前、戦闘技術は身についたのか?」 


私たちが通う学校では、主に戦闘技術を身につける為の授業を行う。理由としては、スライムやゴブリン等の『魔物』という敵対生物を倒すため。

みんな、銃や剣を使っているのだが…


「……荒っぽい事は苦手なの。」


情けないことに、私には運動神経が皆無だった。

自転車に乗るだけで息切れする、体育の時間ではよく貧血を起こす、など挙げだしたらキリが無い。

そんな理由もあって、私は魔法を極めることを選んだのだけれども。

この世界の誰も、魔法なんて使ってやいなかった。


魔法というのは、呪文を詠唱したりとか、それだけで使えるものではない。

魔法の使役には、『魔法理論』と呼ばれる魔法の組み立て方法を知っていなければならない。

これが非常に難しいのだ。例えるのなら、全くしらないコンピューターのプログラミングを一から学ぶようなもの。

凄まじい才能と、血も滲むような努力。

この二つがなければ、小さな火を出す魔法すら使えない。戦いに使える魔法なんて、夢のまた夢。

だから、誰でも簡単に使える銃や剣などが標準装備になっているのだ。


それでも。

それでも、私は魔法の可能性を信じてる。

この魔導書こそが、無限の可能性を示してるから───


「こんな本があるから魔法にこだわってんだろ?じゃ、俺がもらっといてやるよ!」


バッ!


「あっ………!」


胸に抱えていた魔導書が、ジャックに奪われてしまった。

あまりに急すぎて、私は目を白黒とさせた。


「ちょっと…!何てことするの!早く返しなさい!」

「うげっ、重い……こんな重い本、読むよりもトレーニングに使った方がよっぽど有意義だろ。…あっ!良いこと思いついた!」


ジャックはニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべると………あろうことか、突然本を空高く放り投げたではないか。


「な、何して───」

「バン。」


彼が、発砲音らしき声を言った直後。

宙を舞っていた本に───大きな、風穴が空いた。

本はそのまま、開いた部分を下にしてべしゃりと落ちる。

気がつくと、ジャックの手にはハンドガンが握られていた。


………この男は、一体、何をしたの?


「見たか?サプレッサー消音器付きでこの威力!これで銃がどれくらい優れてるか分かったろ?多分だけど…お前の魔法とやらよりも、よっぽど強いと思うぜ。」


あまりにショックすぎて、しばらく開いた口が塞がらなかった。

いや、あの本、8500円したんだけど……


「………弁償しなさい………」

「え?あぁ、いいよ。ほら、お詫びとしてこれやる。俺のお気に入りの一品だ!」


ジャックは今しがた本を撃ち抜いたハンドガンを、私に押しつけてきた。いや、使い方分かんない…


…こいつ、殺してもいいかしら…うん、いいわよね。魔法でボッコボコにしましょう。


ふつふつと殺意が沸き上がってきたところで…教室の扉をガラガラと開けて、一人の女子生徒がやってきた。


「ふたりともーっ!大変だよーっ!」


最初に目に入ったのは、オレンジ色のふわっとしたストレートヘア。お調子者のファンシー(ESFP)だ。いつもうるさいけど、一体どうしたんだろう。


「風紀委員ちゃんが魔物に捕まってて、なんていうかぁ……とにかくヤバイの!二人とも、良かったら手を貸して!」

「ほら来た、さっそく銃の出番だ───見てろよ、俺が魔物を撃ち抜く瞬間を!!」

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