情熱的な恋

 長かった梅雨が明け、グラジオラスは今年も色とりどりの花を店先で誇らしげに咲かす。


 花たちは今日もお客さんが来るのを待ち続ける。私はあの人が来るのを待ち続ける。何となく花の気持ちがわかったような気がした。


 あの人はいつもと同じ時間に、ラフな姿で現れた。しかも丸眼鏡をかけていて、普段見られない一面に萌えてしまう。


「今日はグラジオラスを迎えようと思っていてね」


そう言って紫のグラジオラスだけを指差す。


「分かりました。準備しますね」

「ありがとう、青田さん」


あの人に苗字を呼ばれ、私の胸は音を立てた。あの瞬間に、私はあの人へ情熱的な恋をしてしまった。きっと許されない恋だろうに、あの人への思いは募っていくばかりで悔しくなる。


でもあの人と結婚すれば父の後継者になれる…。 


我ながら名案だと思った。

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