恋の訪れ
私、青田蘭が恋の訪れを感じたのは、二年前の六月だった。今思えば、あれが最初で最後の恋だったな。
当時花屋でバイトをしていた私はお店の常連客である一人の男性の存在が気になりだした。常連客といっても、年齢や名前、職業など個人に関する情報は一切知らない。
そんなある日、転機が訪れた。
店長が留守にしているとき、あの人がお店にやって来た。白シャツに青色のネクタイを締めて。男性は店先に並んだ花たちをゆっくりと眺めていく。まるで花と会話しているかのように。そして、その人はある花の前で足を止めた。その花は、昨日入荷したばかりのアガパンサス。男性は指を差して、私にこう伝えてきた。
「お姉ちゃん、この子たちが水換えて欲しいって言ってるよ」
と。
花と会話できるあの人のことを、私は追いかけることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます