第62話 自衛隊の作戦

未来達がバーベキューを楽しんでいる頃、東京ではある作戦が行われようとしていた。


作戦に参加するのは自衛隊が51名。


三住以外は特にスキルを持っている人間ではない。


半数が盾を装備し、半数が銃を装備している。


今回行われる作戦は、三住が提案した作戦であった。


三住は、河田総理大臣と麻田防衛大臣に意見を求められ、中長期的作戦を提案した。


それは、ダンジョンの攻略を先延ばしにして、自衛隊の戦力を伸ばす事から始める事であった。


とはいえ、なんの計画もなく戦力増強と言う言葉だけで河田や麻田を納得させる事はできない。

これまでと同じようにただダンジョンへ突っ込むだけでは成果は期待できず、無駄に訓練された人員を減らすだけだと説得したのである。


その為に、今与えられているステータスウィンドウにある情報を何回も読み込んだ上で計画を立案してきた。


その作戦は、予測によるスキルの取得を一旦諦め、レベルによる戦力強化。

およびビギナーズカップのランキング独占によるスキルの取得であった。


ビギナーズカップのランキングを開くと、ランキングは同率一位がずらりと並んでいる。


そこから予想できるのは、興味本位で参加表明をした人間は山ほどいるが、ダンジョンへ入っていない為ランキングの変動が起こっていないという事である。

そして、自分も参加表明をして確認をしてみたが、三住が参加表明をしても、ランキングの入れ替わりは起こらなかった。


この事から、発表されたランキングとビギナーズカップのランキングは別で、参加表明をしてからの功績に基づいてランキングが算出されているのだと予測できる。


その為、ダンジョンに入って一体でもモンスターを倒せばランキング上昇させられるのではないかという仮定の元作戦を立てた。


これまでのダンジョン探索で、分かっているのは、モンスターの色によって色々と能力があるのではないかと言う事。


しかし、モンスターが扱う銃は、人が扱う物と同じでスキルなどで防御が可能だと予想できた。

それは三住の新しいスキル《魔力(物防)》が証明している。


なので、モンスターが上がって来ない事を利用して、遠距離から銃でモンスターを倒してすぐに地上へと戻る事でランキングを上げるという作成であった。


予定時刻になり、50名の内、10名を連れて三住はダンジョンへ入る。


今回の作戦は、これまでのダンジョンだからとは考えず、慣れた自衛隊としての戦い方をするつもりである。


ダンジョンの階段を降りた所で、三住の指示にしたがって盾を持った半数が展開して壁を作り、モンスターが現れるのを待つ。


しばらく時間が経過すると、モンスターのグループが現れた。


相手が攻撃に移る前に、三住の指示で、盾の間から銃を持った隊員が一斉に銃を撃つ。


銃を撃ちきった後、銃撃によって死んだモンスターと、ダメージを受けていないモンスターが居たが、殲滅を目指さずにダンジョンから地上へ撤退する。



地上へ戻って確認すると、狙い通りビギナーズカップのランキングに変動が起きていた。

参加した隊員は均等にレベルが上がっているので、これまでの経験で予測していた通り、戦闘に差をわかしているチームであれば、経験値は均等に割られているようである。

 一つ予測と違ったのはスキルを取得した隊員がいた事。だがこれは嬉しい誤算であった。


一先ず、作戦は成功である。


これを繰り返せばビギナーズカップでのスキル取得は日本が独占する事ができるであろう。


それと共に、モンスターのデータも採取している。

といっても分かるのは簡単な事で、銃撃で倒せるモンスターと倒せないモンスターの色であるが、どんな小さなデータでも必要だといえる。


先程の戦闘で確認できたのは、銃で倒せたモンスターが緑、赤、黄色の3種類。倒せなかったのは青と紫の2種類であった。


この成功例を元に、入り口でのヒットアンドアウェイをメンバーを変えて繰り返して行く。


2組目、3組目と繰り返し、ビギナーズカップのランキングを自衛隊員で埋めていく。


本日の予定は50人だが、この成功を元にまだまだ人数を増やす予定であるし、他の地域のダンジョンもこの方法でレベルアップに使う予定である。


しかし、40組目の作戦で、これまでと違う変化が起こった。

これまでの、未来がゴブリンと呼ぶ小人型のモンスター以外に、ドーベルマンのような犬のモンスターが現れたのである。

それだけではない。

今までのゴブリンの中に、新しい色のモンスターが紛れ込んでいた。


新しいモンスターの色は白であった。


しかし、新しいモンスターが現れようと、ヒットアンドアウェイの作戦を取れば階段より先にモンスターは登ってこない。


落ち着いて、これまでと同じように三住は指示を出して、銃撃を行った後、撤退の指示を出す。


「白も生き残っているのか」


その時に、新しく現れたモンスターの確認も忘れない。

犬型のモンスターも青色が生き残っているだけで赤は死んでいるので、今回は赤と青だけしか出て来ていないが、色による違いはこれまでと同じであろう。


もう少しで撤退完了というところで、不測の事態が起こった。


これまで、青のモンスターが銃を撃ってくる事はあったが自衛隊の盾で防ぐ事ができていた。

しかし、今回、生き残った白が撃った銃弾が盾を貫通して隊員の肩を撃ち抜いたのだ。


「あがっ」


肩を撃たれた隊員が盾を落としてしまう。


「構うな! 動けないようなら手を貸せるものが引きずってでも階段を上れ!」


三住は1人前に出て人以上のスピードで迫ってくる青の犬のモンスターの攻撃を腕でガードする。


「やはり、青いモンスターは攻撃力が弱いのか!」


噛みつこうとして飛びかかってきた青の犬型モンスターに腕を差し出し噛み付かせた事で、モンスターの歯が負けて砕けた。


「よし、後は俺だけだ」


犬型のモンスターを殴り飛ばすと三住は撤退に移る。


殴り飛ばされた青い犬型モンスターは、銃の弾が切れたのか銃を棍棒の様に構えてこちらに走ってきていた白のゴブリンの方に飛んでいき、白のゴブリンに銃で殴るようにして払いのけられていた。


白のゴブリンの足を止めることに成功したが、青い犬型モンスターは鈍い音がして絶命したようである。


「白は防御だけでなく攻撃も高いか。要注意だな」


この作戦で、負傷者は出したものの、死者はなく、白のモンスターが現れた場合は即撤退というルールを作り、この後も自衛隊は入り口のヒットアンドアウェイ作戦で、レベルアップとランキングアップに励む事になる。


その結果、井尻や妃子は週間ランキングからあっという間に姿を消す事になるのであった。

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