第59話 乗り換え
新幹線がもうそろそろ名古屋に着く頃のようで、未来のセットしていたタイマーが振動で時間を知らせてくれる。
それに合わせて、未来がイヤホンを外して降りる準備をし始めた所で新幹線内にはアナウンスが流れた。
大体到着より5分位前に流れるので慌てる必要は特にないが、未来は他の3人と離れた場所に座っていたので準備ができ次第合流の為に席を立った。
未来が妃子達の席の方へ歩いて行くと、3人組の大学生位の男性が妃子達の席の側で車掌と揉めている様子であった。
「もうすぐ到着ですね。どうかしたんですか?」
未来は妃子達に声をかけ、何があったのかを質問した。
妃子達はうんざりした様子で未来の方を見るとこれまでの経緯を説明してくれる。
どうやらこの男性達は妃子達の特大荷物スペースに荷物を置いて行った犯人のようで、次の名古屋で降りる為に荷物を取りに来たようである。
そして、自分達の荷物がなく、妃子達の荷物が置いてあったので、勝手に移動されたと妃子達に文句を言ってきたようである。
ちょうどタイミングよく通りかかった車掌、もしかしたらこういったトラブルの為に駅に着く度に見回りに来てくれていたのかもしれないが、間に入ってくれたようで、男性達に新幹線のルールを説明してくれたようである。
しかし、男性達は車掌の説明を受けても納得はせず、置いて行った荷物で余分に場所を使った為にルールに乗っ取って1000円の追加料金を請求された為に、更に文句を言い出しているようである。
そうこうしているうちに新幹線は名古屋へ到着してしまう。
この問題は、妃子達が被害者であるし、後は男性達とJRの問題なので、未来達は車掌さんに言われて先に降りる事にした。
後ろから男性達が何か言ってくるが、無視してさっさと移動してしまおう。
次の乗り換えの近鉄特急の時間もあるのだから。
男性達は駅に居る車掌に引き継がれ、更に文句を言い続けるのだろうか?
気にしても仕方のない事だろう。もう関わる事も無いのだから。
「だけど、ムカつくわね! 自分達のミスなんだから謝りなさいよ!」
「まあ、ああいう人には関わらないのが一番ですから、忘れましょう。それよりも、旅行の楽しい事を考えましょうよ」
「そうね、三重の観光って色々あるみたいだけど、私あんまり行った事ないのよね。いつも家族で別荘で過ごしてたから」
「それは任せてください! 下調べはばっちりです! 部活の友達が行った事あったから色々聞いたし、ネットでも色々見てきたしね、悠里!」
「うん。旅行の期間が伸びて良かったかもってくらい」
嫌な事は忘れて楽しい話になり、みんなに笑顔が戻ってきた。
「あとは食べ物だよね〜色々美味しい物がありそうだよ〜」
虹花がそう言いながらわざとらしく口元を拭うようなジェスチャーをする。
「でも高級そうですよね、松坂牛とか伊勢海老とか」
「未来ん、三重はローカルでも美味しいものが沢山あるみたいだよ? でも、とりあえず急がないと電車の時間に遅れちゃう!」
予約をとった電車の時間までそこまで余裕があるわけではないので、未来達は少し急いだ。
乗り換えは、改札が直通になっているので意外とスムーズで、余裕を持ってオレンジ色の特急になる事ができた。
「このペダルを踏んで、こう!」
電車に乗り込んだ未来達は指定の席に着くと、虹花が椅子のペダルを踏んで席をグルンと回してボックス席に変えた。
どうよ? と言った様子で妃子と悠里の方を見て鼻を鳴らす姿に未来は首を傾げた。
「それじゃ、私奥で、そっちが悠里で私の隣が妃ちゃん。悠里の隣が未来んね!」
虹花に言われるがまま未来達は席に座り、先程の話の続きを話しながら、目的地まで電車に揺られるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます