神たちの箱庭

@sawaraneko

第1話 私は...

私はなぜここにいるんだろう。

私はなぜ女で生まれてきたんだろう。

私はなぜ人なんだろう。

私はなぜ咲菜という名前なんだろう。

私はなぜ生きてるんだろう。


そんなの考えるだけ無駄。


私はこの地球という星の日本という国で生まれて、中身のない人生を送るちっぽけな一人の人間でしかない。

仮に神という存在がいて次はお前が生まれる番だから人間のあの家族の子供に生まれろと命じたのかもしれない。


本当に神という存在がいるならきっと残酷な性格をしているのだろう。だってこんな親の下に生まれろだなんて

。子供は親を選べない。 


親は私をいないものとして扱っている。

特に暴力を加えられるわけではない。ただ私に興味がないだけだ。


神が恨めしい。なんでこんな世界作ったんだ。


私はただ愛が欲しかっただけなのに。


親は私をなぜ産んだんだろう。

親が子を愛せないなら私を流してくれればよかったのに。


私に興味が無いくせに私には兄と妹がいる。

妹も私と同じく興味を持たれていないが、兄は違った。

昔からそうであったわけではない。


前の父親がいなくなってからだ。その日以降母は兄を抱きしめる時がある。

おそらく父親似の兄を前夫に重ねているのだろう。


羨ましさと気持ち悪さが混ざった気持ちになった。


そんな家にはいたくなかった。

普段使わない道を歩いていた。いつも見る景色を見ていると普段のことを思い出してしまうからだ。

できるだけ記憶からなくしたかった。

闇夜にまぎれていなくなりたかった。 


何も考えずに歩いていたら見知らぬ山奥にいた。


咲菜「ここどこ..?」


周りは木々で生い茂り、かろうじて隙間から月の光が漏れる程度の明るさだった。


目を澄まして辺りを見渡すと木造の建築物のようなものが建っていた。


咲菜「鳥居..?」


くちて倒れた鳥居が目の前にあった。

腐っているのかカビの匂いがする。



月の光に照らされる境内

神秘的な趣に惹かれるように奥へ進んで行ってしまう。


拝殿の中に誰かいるのではないかと不気味さも同時に感じた。

中を覗き込んで見ると床は抜け落ち地面からは木が生えており屋根を突き破っていた。そこには静けさと自然の力強さがあった。


自分にはない意思の強さがあった。誰にも知られずとも地面に根を張り立っている。

誰からも愛されずとも。


私には...人間には出来ないことだ。

私もそんなふうになれたらな....



「なってみる?」


背後から誰かが話しかけてきた。

声に出していないのに心の中が読まれたような言動だった。



咲菜「..誰?」


背後を振り返れない。

こんな夜中の山奥にいる人間なんて普通の人じゃない。


逃げなきゃ...


咲菜「足が..動かない..!!」


足に草が巻き付いていた。

足を引き抜こうとしても根がしっかり張っていて抜けない。


「貴方のなりたい自分にさせてあげる。」


足音が近づいてくる。

背後からの気配が一層強くなって背中がゾワゾワしてきた。


「言ってご覧。君の口から。」



咲菜「私は...」



口が動いてしまった。何故喋ってしまったのか。

でも、叶ってしまいそうな...そんな気が声の主からはあった。


咲菜「私は...皆から愛されたい...!


見知らぬ人に本心を伝えてしまった不安とどうしても叶えたい願いがこもったその声はひり出すようで、しかし力強いものであった。



「わかった。」


そう言うと私の背中に異物が入り込んで来る感覚に襲われた。

それは気持ち悪くもあり、同時に温かく身体が作り変えられていく感じがした。


「君は成功したね。よかった。」


背中から何かが抜け出した。

なんだか眠い。

力が抜けていく

頭がボッーとする。まぶたを閉じていないのに視界が暗くなっていく。意識が糸が切れるようにプツンと落ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る