第2話 春の夢
『お疲れなんじゃねぇか?』
頭の中に嗄れた声が響いた。
3月初めの暖かな日、友人の絵画展を2時間ほど覗き、駅に向かう途中であった。
のんびり歩く。住宅街の小さな公園、奥に見える木製ベンチに誘われて中に入る。
木製のベンチに腰を下ろすと、暖かな日射しが眠気を誘うようだ。
『のんびり日向ぼっこかい?』
しゃがれ声が響く。誰も居ないのに、年老いた野良犬以外は·······
『どこ見てんだよ、オレだよ』
嘘だろ、犬が喋っている。
『驚くなよ、犬だって喋るぜ。元々人間だからな。』
元人間だって?じゃあなんで今犬なんだよ?
『人間に疲れたから犬になったんだよ。お前も人間やめたくなったら、神さまに頼めばいいんだ。本気で頼めば聞いてくれるからよ』
嘘だ、神さまなんかいるはずない。それに人間から犬に変わるなんて。
『気が向いたら、また遊びに来いよ。人間のやめ方教えてやるからよ』
老犬はやさしく笑い、前足を上げて挨拶して去って行った。
春のうたた寝の夢なのだろうか?
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